Report66:敗走後、行動指針の再設定を行いました。
ところ変わって森から少し離れた荒野。
満身創痍のウィーネ、ブレイド、モノリス、クノムの4名の間にはお通夜のような空気が流れていた。
「…救出に行かなくては。」
「愚策です。所在が不明な上戦力も不明だというのに。」
「相手はエルフだ…!木都に決まっているだろう!」
「その木都がどこにあるという話をしているんです。」
「それに場所がわかっても…キュウが抜けた状態で、あのエルフの本拠地に突撃できる…?」
答えは、否。そんな事全員分かりきっていた。
過求が特別強いというわけではない。が、戦闘IQという側面に秀でているのは事実。
さらにいえば、最低でも自身らが負けた相手が敵地に戦力として居る。下手をすればそれが複数いる敵の本拠地に、戦力が低下した状態で白昼堂々と突撃する程馬鹿では無い。
モノリスがため息をひとつわざとらしく着くと理路整然と切り出す。
「…共通認識として、最優先事項は…マスターの救出ですね。」
「ああ。普段であれば外交云々と言った手続きを踏むところだが……もしも黒ローブの男がエルフ族であった場合、その暇は無いかもしれない。」
「…殺されている可能性もあるのではないか?」
「無いでしょう。殺す気ならば、態々連れ去るまでも無くあの場で殺害可能でした。無論我々も含めて。
ですが今回、マスターの誘拐に重きを置いていた。我々という危険因子を残してまでも。……まあ、これは我々が取るに足らないと判断された可能性も大いにありますが。」
冷静なモノリスの判断と機械的口調。それはヒートアップしていた他メンバー…主にウィーネとフレイドを冷静にさせ、議論ムードを作り出した。
「…ってなるとー…やっぱり行くべきは夜?」
「その前に木都の所在を突き止めねばなりません。結局の所…それすら分からずにどの様な作戦を組もうと机上論に過ぎませんから。」
当然の帰結。皆が思っていた事の言語化をただ行っただけではあるが今はそれだけで十分な行動指針となった。
「では、木都特定の作戦会議を行います。」
普段であれば音頭を取る過求がいない都合上、モノリスが音頭をとることを最も近くにいて立場も近いからだろうか、皆自然と受け入れていた。
「しかし…手がかりもないことには……」
「有りますよ。」
手を上げたのはクノム。
「…恐らく同一の結論に至っていそうですね。」
「多分ね。…世界樹のあるところに木都があると、思う。」
「世界樹…と言われればやはり、あそこに見えるどデカい気であるか…」
森が深くなっていく方向の先の先。雲に届かんとするレベルの巨木。正しく世界樹の名を冠するに相応しいそれは肉塊に飲まれた世界でも依然変わらず、悠然とそびえ立っていた。
「自然のエレメントが最も豊富になる地点であると考えれば、世界樹が木都の所在であっても合点が行きます。」
「…なら、先ずは……世界樹周辺の様子見かな?」
「はい。エルフの生息圏。警戒範囲。勢力等情報収集を行う必要があるかと。」
「でも…おちおちもしてられない…よね?」
「はい。期間は…明日の日の出まで。目覚しい進捗があれば逐次延長とします。…ですが最長でも3日としましょう。」
最長で3日。その言葉は、各々に文面以上の重みを与えた。
「…救出までにかけられる時間は……」
「…5日…希望的観測をしても7日が限度です。」
「たった7日…」
「…最悪を想定すればどうなる。より短い可能性もあるのだろう?」
「最悪を想定すればキリがありません。…ですが、5日というのも目的が不明の状況下で一般論に照らし合わせた時の結論です。…時間がないことは共通に認識してください。」
言われずとも。と、頷き行動を開始する。
不明なタイムリミットに、定められたタイムリミット。焦燥感を募らせる4名には、森の木々の気配がやけに重たく感じた。




