レポート63:チームワーク。それと想定外。
戦闘は難航を極めた。
「…っ」
魔術師と距離を詰め、『火属性:放射』射出箇所は肘。勢いを乗せての…振り下ろし。相手は魔術を発動し、植物を操りて、防壁を作る。めり込み貫き…枝の防壁は炎上する。
「マスター!」
「っ」
別の魔術師からの流れ弾。いや…横槍か。水の槍を蹴りあげるようにして、方向を流す間に戦っていた相手の魔術師も仲間の援護。相互に相互を援護。
単純に1:1ではない。他に0.1でも援護を回せば、
+0.1×4で1.4。0.2も回せば1.8。単純に数的不利となる。
そんなことは、分かっている。その対策としてはこちらも1:1×5の形ではなく、5:5になるようチームワークを組むこと…なのだが。系統が違いすぎる。
野生じみたワイルドなタイプの攻撃を仕掛けるフレイド。一方規則正しい、正統派な剣術のウィーネ。
僕も遠距離が出来るようにはなったが…近距離で解析して手詰まりにさせるコントロール型。モノリスは遠距離特化。…全員の、特性を活かしてフォーメーションを再構築。モノリスを中央に据えて…それぞれが4人を相手する。そして、モノリスがサポート…否。相手は1人痛手を負わせたとはいえ5人。届かない。実力的に1:1が限界。モノリスが全部サポート?無理だ。防戦一方、削られてすり潰される。僕が…2人見れば行けるか。というかそれしか手がない。
「全員。モノリスを中央になるように陣形を。
僕が手負いともうひとり見るからそれぞれ1人ずつ。モノリスはカバーに動いて。以上。」
そう言い捨てると一瞬で、肘からの炎を噴射し、手負いではない方に接近。反撃の魔術は…氷。
氷?水属性の変質属性。上位魔術。
「まずい…かもなぁ。」
氷の放射を土の壁で防ぎ、蹴り砕いてつぶてで目潰し。義手をダイヤル変化させて、炎の槍を射出。
氷の変化は炎で水に戻る。水の放射なんて、小雨と変わらない。勢いそのままに、魔法陣を蹴り潰すようにして、顔面に蹴りを入れる。これで、手負い2人。
飛んできた鉄の矢を弾き、爆発をいなす。
土の上位、金属。火の上位、爆発。ああ、面倒な。
誤算は2つ。再び放れた氷の魔法を炎でカウンター。
そこに放たれたのは、風の上位魔法。雷撃。
霧雨の中にいた僕に対しては効果バツグン。
「っ…上位魔術師揃い踏みってとこかー?」
1つ目は相手の実力を見誤ったこと。それぞれの属性には上位があり基本的にはその性質を変化させたものになる。水なら氷。風から雷。土なら金属。木なら生命。火なら…まあこいつは熱だったり爆発だったり延長線なので置いといて…つまるところ刻印のように事前セットアップができるからともかく、魔術においてはその分、難しいということだ。
そして、相手は手負いの二人ですらそれぞれ上位魔術を使用した。援護もそうだろう。…楽観視はしない。全員上位魔術師と考えていいだろう。そしてもうひとつの誤算は。
「カキュウ!背後!」
咄嗟に土壁を展開するも貫通してきたのは鉄の槍…と言うには細い、枝分かれした…串と呼ぶべきか。
貫通力に特化したような形状のそれは壁を容易く貫き、身に刺さる。そこに再び雷撃。金属は電気を通す。身が意思に関わらず、大きく跳ねる。
誤算の2つ目。気のせいではない…こと。
敵の全員が、僕にヘイトを向けている。
0.3を目の前の敵に。0.7を僕の攻撃に…捌き切れるわけがない。感電により体も鈍い…実力差が大きすぎる。追撃の雷撃を倉庫から金属の棒を取り出して誘導して防ぎつつ全体把握。
ウィーネは、金属相手にジリ貧。フレイドは、植物で環境を乱され思うように動けず。クノムは、爆発で思うように近づけない。相手を入れ替えるか?相性有利になるように…否。そんな暇はない上にそれをやっても焼け石に水。答えは…ひとつか。
「…モノリス。撤退だ。」
「不可能です。捌くので精一杯です。撤退まで考えると…」
「まず、モノリスとほか3名をさがらせる。」
「…マスター?」
「対応力なら俺の方が高い。お前らが下がる時間は稼げる。その後にお前らが僕が下がる援護をしてくれ。」
「…かしこまりました。」
指示を元に、モノリスがまず下がりながら全体へ伝令。
4人が下がるのを…追わない。全員がこちらに魔法陣を向ける。想定通り。
「義手動作…問題なし。相手の強さは大問題…っと」
水と風の使い手は、手負いにさせた際に解析済。攻撃の発生と経路は見える。あとの3名は未解析。見てから避けるしかない。
「限界まで足掻いてやる。」
強く地面を蹴り、間合いを詰める。
氷の槍。下手に溶かせばまた電撃を貰うことになる。
スライディングで回避。そこへの電撃。金属の棒を地面へ突き刺し対処。突き刺した棒が、変形し四方八方へと鋭利なトゲを出す。バックステップで回避。
その先へ、置き爆発。義手から火を噴射させ、爆発の勢いを利用して高速で空中を飛び、さらに間合いを詰める。単純な金属の物体は相手に利用されるため使用不可。しかしこれで間合いを詰められる。まずは、雷撃使い。振りかぶった拳は吸い込まれるように相手の額へと向かう。
事実、吸い込まれていたのだろう。額への攻撃は、氷の壁により防がれ…雷撃使いに抱き留められる。
「は?」
一瞬の暖かさ。柔らかさ。あ、いい匂
次の瞬間、敵に抱き留めるようにして捉えられたカキュウくんの体が一瞬、光った。そして力が抜け、崩れ落ちるところを肩に担がれ、敵の足元に魔法陣が浮かぶ。あれは、以前見た光。たしか…転移魔術。
「っ…モノちゃん!水!」
「はいっ!」
作り出された水により、水流のレーンを作り、それに乗って高速移動。しかしそれは途中で凍らされて、止まってしまう。
「この…っ!」
勢いそのままの振り下ろし。しかしそれは金属の壁に容易く阻まれ、爆発により弾き返される。
「っ…もっかい…!」
再び生み出された水を今度はより速く。敵の防御や対応よりも遥かに…!
生み出されたレーンは先程よりも遥かに速い。上に乗ればもはや正面以外の景色は線と化す。
しかし相手も手練か…ギリギリ間に合った金属の壁。急には止まれず正面からぶつかり、レーンを落ちる。
一際強い輝きと共に、敵は消え残されたのは我々4人と、先刻防御に使われた金属の壁のみであった。




