レポート62:自然のチカラ。そこに生きるもの達。
しばらく飛行を続けると、明らかな変化が現れ始めた。
「…植物だ。」
紅に染まっていはいる物の3~10cm程度の短めの草や、低木。普通の木もあるが…どれもこれも真っ赤になっている。
「本当に酷い有様だね。」
「…なんというか、不気味…ですね。」
「この有様では、もうエルフの都も肉災に…」
「…まだわからん。だが…ギアの影響範囲内に入ったことだけは確かだな。」
そのまま進めば段々と背の低い草も地面を覆い、低木は成長して木々が増えてくる。
「…流石に小回りが聞かないこいつを使うのはここまでか。」
ここまで乗ってきた飛行盤を【倉庫】にしまうと、徒歩での移動を開始する。
どこもかしこも紅の木。風を切る音に咄嗟にモノリスが水の壁を展開するとその中にハチのような生き物が飛び込んで勢いを失い、溺死する。
「…これはー…どっちだ。」
「どっち…ってどういうことだい?」
「肉災の異形なのか、それとも適応しただけの生き物なのか。」
「何が違うの?」
「前者なら攻撃を食らった箇所から侵食される。後者なら少なくとも侵食は、されないだろう。」
「うーん…見分け方は?」
「いっぺん刺されてみる」
「それ=死だよね!?」
「まあ、モノリスがやったみたいに水の壁を貼りながら動こう。大抵のやつはそれで沈むだろうしな。」
「そんな適当でいいの?」
「いいのさ。案外適当で。」
そのまま進んでいくほど、自然は豊かとなり虫も増え、森と呼んでいいレベルまでとなった。
木々の様子も赤がへり、暗い茶色から深緑へと変化。
肉災以降、見かけることの減った自然がそこにあった。
「これは…凄いな。」
「空気が新鮮ってこういう時に使う言葉なのかな?」
「かもな。」
周りを見回しながらすすむと、木の根やツタに躓く。足元を注意しすぎれば虫が襲ってくる…
自然の脅威とは正しく、この事か。
気を使いながら進むこと少し。変化は唐突に訪れた。
森の中の、開けた場所。草の背も低く、木々もそこだけには生えず、白い陽光が差し込んでいる。
半径にして10~15m程の範囲。広いとは言えないが休憩にはちょうどいいか。
「…やっぱこの森は肉塊の影響をうけてないみたいだな。」
「恐らく、木都は近いかと。」
「でも、確かエルフたちは自らの住処を魔術で隠蔽している…という話だよ?どうするんだい。」
「……どうするかな。」
軽く寝転がって空を仰ぐ。危険な世界とは思えないほどのどかな景色。…悪くない。
「隠蔽しているところを見つけて声をかけるしかないな!!」
「いやー…隠蔽してるってことは、会いたくないってことですよね?声をかけても無視されるか、酷ければ攻撃されそうですけど。」
「俺もクノムと同意見だ。」
まあその方が例の黒ローブも見つけられなくてたすかるが、もしもあれがエルフだった場合が面倒くさい。
…いや、もしもエルフの一派ならば迎え撃つ為に罠を仕掛けている可能性も。
そこまで考えて咄嗟に【倉庫】から適当な石の板を周りにだす。
直後、着弾音。板越しに解析。詳しいことは分からないが…火水風の魔術。
ただの石壁に耐えられる訳もなく、崩れた先には…
尖った耳に金の神。緑の目に軒並み美形。
5人のエルフを補足した。
「…お前らの領地に入ったのは悪かった。こっちも旅のものでな。すぐ出ていくから攻撃しないで貰えると嬉しいんだが…」
両手をあげて降参の意思を示した結果は、地面を変形させた土の槍と周りの木の葉を飛ばした遠距離攻撃。
対するこちらは土の槍を【倉庫】から出した金属板で防ぎ、飛んでくる木の葉の刃はモノリスが焼き尽くす。
「…交渉決裂かな?」
水火土木風揃い踏みの相手。ああ、やりずらいことこの上無い。だからこそ…やりがいがある。
「ついでに実践テストと行こう。」
接近戦においては【解析】により、有利を取りやすい…が、遠距離においては滅法弱い。その弱点の克服のための手段。義手の手首に位置する、2つのリング状の機構。回すことで、内部の金属板の配置が代わり…いや細かいことはいいだろう。詰まるところだ。
「風属性:防壁」
属性と、形状。それをダイヤルにより指定し組み合わせて発動させる。
貼られた風の防壁により放たれた火炎放射が掻き消え、そのままこちらは放射の根元に接近戦を仕掛ける。手首をつかみ、捻りあげて腹部に「土属性:放射」を放つ。発動された現象は単純。放射状に放たれる石のつぶて。至近距離で放つほど、集弾率が上がる。
「…まず1人。」
「油断はしない!」
背後に展開された水の防壁が、木の葉の刃を防ぐ。
「多対一は不利!それぞれが1人ずつを担当!」
ただ、それだけの指示。ただそれだけで、クノムはハンマーで飛び、フレイドは地を駆け、ウィーネは相手の攻撃を防ぎながら接近し、モノリスは水と火で加速して刹那にて過求の背を守るようにして、立つ。
相手は魔術師。接近戦は苦手と予想。
「吐いてもらうぞ。目的と主をな。」




