レポート60:旅立ちの日に。
「む…貴様男なのか?」
「はい。一応」
「その割に華奢で小さく見えるが…」
「見た目で侮るなー。そいつ多分ここに居る誰よりもパワー強いぞー」
「カキュウくん!よそ見しない!!」
「マスター…他の人の会話に耳を立てる余裕があるんですね?」
「あ、いやそんなことは…」
度の用意を整え、詫びの品を携えてやってきたのは土都の来賓用屋敷。
そろそろ2時間になろうか。女性2人に叱られ続けている過求もいつもの態度はどこへやら、小動物のようになってしまっており、追いやられたクノムとフレイドは、詫びの品であった羊羹をつまんで談笑に勤しんでいた。
「はぁ…疲れた。カキュウ。お茶入れて」
「私もお願いします。」
「はーい…」
ようやく開放され、でよぼよぼとキッチンに向かう姿は1回り2回り小さくなって見える。
「君が…カキュウから聞いていたクノム君だったかな?済まないね。初対面で挨拶もせずに…」
「そんな全然大丈夫ですよ!キュウが全部悪いですし。」
「俺の味方…どこ…」
「味方には違いありませんよ。甘やかすばかりが味方ではないと言うだけで。」
「…フレイドー」
「自業自得だ。というか下手に擁護して俺様まで矛先向けられたくない。」
「そりゃそうか。」
いれてきたお茶をそれぞれの前に置き、大回りしてクノムの横に座る。
「こらーにげないのー」
「逃げてない。だが今あいつらの近くに座りたくもない。」
「そんなんだから怒られるんだよ…」
一通り叱りつけてお茶もあって溜飲も下がったのか、少し呆れ口調のウィーネが過求の方をむく。
「で?数ヶ月待たせたんだから…それなりに成果はあったんだよね?」
「ん…まあノームの職人として認められた程度にはな。」
「ノームじゃないですよね?」
「ノームのじゃなくてノームにと言うべきだな!」
「いやそれ普通にすごいことじゃ。」
「特段何が変わったってこともないぞ?武器防具の作成と修理ができるようになったくらいか。あ、あと土のギアね。」
「え?あ、はい。」
受け取ったギアはモノリスに吸い込まれるようにして消え、モノリスに土のエレメントの力が宿った。
「これであとは…木と風か。」
「エルフ及びシルフ。そのどちらも現在行方不明です。肉災以前からあまり姿を見せない種族だったそうですが。」
「流石にノーヒントワールドワイドはきついぞ…?」
「エルフの国といえば…世界樹があるって聞いたことがあるかな。」
「ん…それなら分かりますよ?」
「はい??」
割と遠慮なく過求の分の羊羹も食べたクノムがお茶をすすりながら爆弾発言。
「厳密な場所ではないですけど…方向だけなら。」
「どうやって。あと俺の分返せ。」
「詫びの品なんだからキュウの分はないですよ。
で、方向ですけど…師匠曰く、本殿の中庭から世界樹の根っこが見えるらしくて。その根元に世界樹があるらしいですよ?」
「世界樹の根っこですか。確かに分かりそうですね。」
「触れる場所にあるのかい?」
「地面から生えてるらしいので触れるとは思いますけど…」
その時、クノムを除いて皆一意に定まった。
『触れるなら過求が解析できるじゃん。』と。
というわけでいざ、中庭。
小石が敷き詰められ、模様が描かれたその中央にそれはあった。
黄金に輝く、鋭利に尖った物体。なるほど確かに木の根と言われればそうも見える。
組頭の許可を得て、中庭に立ち入り、触れる。
【解析】
力の流れがわかる。方向がわかる。
情報がわかる。…凄まじい。まさしく世界樹か。
現在は一定の範囲内で留まっているがもともとは世界中に根を張り、自然のエレメントの源泉として機能していた。すなわち木都のギア、ネイチャー・ギアの所在地。
「…次に目指す場所は、わかった。北だ。」
「もう…行かれるのですか。」
「ああ。色々と便宜を図ってもらい感謝するよ。」
組頭に頭を下げる。
「そんなそんな…また何時でもいらしてください。」
「そのつもりだよ。師匠が飢え死にしちまうからな。」
「変なもの食べてお腹壊さないといいですけど。」
「…たまにでいいから面倒見てやってくれな。心配で旅もできやしない。」
「もちろんですとも。我が子を放置する親がいるはずがありません。」
「…そう、だな。」
次なる目標:ネイチャー・ギアの確保。
小目標:木都にたどり着く




