レポート58:卒業試験。あるいは実践テスト。
でかいパワー型は、動きが遅くて避けやすい。というのが戦場における通例である。ただし、それは対人戦の話。
尋常でない大きさならどうなるか。答えは簡単。
「っ…危な」
「…あれダメージ入ってる…?」
空気を押し退けながら迫る巨大な拳の振り下ろしをバックステップで、ギリ回避。
その前にクノムのハンマーによる打撃と過求による拳を当てているが…入ったヒビも縁から消しゴムで消すみたいに再生していく。
「…遠距離チクチクはダメか。」
「どうすんのさ。」
「どうすっかな。」
ゴーレムの蹴りを横飛びで回避。振り下ろしをうしろ飛びで回避。
幸いなことに飛び道具や特殊な技は持ち合わせて居ないらしい。あるいはまだ必要ないと思われているだけか。
「再生するってなら…再生される前に一撃で砕くしか。」
「あれを??ハンマーで叩いたし君も殴ったからわかると思うけどあの体鉄くらい硬いよ??」
「だよなぁ……ってなるとやっぱ…原動力を奪うしかないか。」
胸部にて見せつけるように高速で回転する物体。
ランド・ギア。あれがエレメントの供給元ならそれを奪えば止まる…はず。
「あれ取れるの?」
「…多分?」
正直触れないことには分からない。以前のケースでいえばドラゴンの胸部に関しては触れるだけで取り出せた。今回がどうか…は。やってみないと分からない。
「とりあえず行くしかないでしょう。」
変形の術式を発動させると義手中ほど、部位にして肘に当たる部分に取り付けた排気口がオープン。
発動されるは火の術式。つまり
「ジェット噴射だ。」
着想元は以前、アクアギアで行った水圧飛行、
しかしあれは地面がなければ発動しないし負担が大きい。故に、火。地面は不要。噴出の勢いで飛行。
しかし問題も0ではない。
「片腕しか炎でないから飛びずらいっ!!」
もういっそ、右腕も引きちぎって両腕義手にしてしまおうかと思うくらい飛びずらい。強いて救いがあるとすれば義手ゆえに、腕が多少無理な体勢でもなんとかなることだろうか。しかし、人も同じように飛んでくる何かがあればはらい落とすもので。
迫る巨大な手。速度が足りない。あわや直撃に割り込む影。
「連携ってものを…考えてよ!!」
同様にジェット飛行するハンマーに乗って飛び出したクノムのフルスイングが手に炸裂。全破壊とは行かないが、ぶち抜かれた掌。ぽっかり空いた風穴を通ってゴーレムに迫る。
「考えてるさ…どうせ来てくれるってな!」
だが、手はひとつではない。左手のなぎ払いが迫る。狙いは、俺とクノムの一掃。仕方なしに推進を前から上に変更。急激なカーブの圧力に体が軋むがそんなことは置いておく。
「予想通り…こいつ、知能は高くないっ」
目の前を上方向に横切るものがあればどうするか。
目で追う。そして賢くないゴーレムは捕まえようと手を伸ばす。しかし、前や横と比べて上方向へのレンジは伸びずらい。速度も落ちる。高速で上に飛び出せば逃げ切るのは容易。
掴み取ろうと空を切った手。
「ここだっ!!」
急降下、からのギアを取ろうと胸部で回転する歯車に義手を突き立てる。
「…偽物!?」
貫いた歯車は回転を失いボロボロと土塊として砕け散る。所か変形して腕に食らいつく。そこに襲いかかる腕。回避は不能。
「またサヨナラかよ…っ」
左腕をパージ。突き刺さった技手ひとつ残して自由落下。可能なら僕が決めたかったが…ラストアタックを譲るのもまた一興。
「クノム!」
「言われなくても!」
クノムのハンマーが、巨大化する。
…変形の術式は質量は変わらないはずなんだが。
どんだけ重いんだよあのハンマー。そしてなんで持てるんだよ。そのハンマー。後方から吹き出すのは大量の炎。火力ならドラゴンに負けず劣らず。1回転。2回転。2回転半のジャストミート。
上を向き、手を伸ばし、急降下攻撃でさらに仰け反り、過求をつかまえ損ねて空振って。がら空きのボディにクノムのハンマーが叩き込まれる。
常時であれば、ぶつけてもヒビで止まったであろう一撃。しかし、今回は違う。打撃の中心点にあるのはクノムの義手。それは今この場で、楔の意味をなす。
広がるひび割れ。砕け散るボディ。
「ナイスアタック。今日のMVPはクノムだな。」
「ナイスサポートは君だよ。ほら、立てる?」
瓦礫と一緒に落下し、受身は取ったが悶絶しているところに差し出された手を取る。
瓦礫の中で、ただ一つ。吸い寄せられるように転がってくるそれを拾い上げる。
「ランド・ギア。獲得完了。」
残りは、木都と風都。




