レポート54:ごく一般的な師弟関係。…か?
早朝。日がようやく登りかけて空が青くなってきたころ。ブロンの工房を尋ねた。
「おーい。きたぞー。」
「あ、おはようございます。早いですね?」
ノックしていると裏手から出てきたのはクノム。背中には斧を背負い、両手には薪を大量に抱えている。
「ブロン…師匠って俺も呼んだ方がいいのかね?まあ、早朝にって言われたんだが…」
「あー…多分まだ寝てますね。丁度いいし起こしてきて貰えますか?」
「本人が指定しておいて?」
「慣れた方がいいですよ~。一々怒ってたらキリないので」
「そんなもんか??」
中に入ると大きないびきが聞こえてくる。発生源は…北側の壁に備え付けられた3つの扉の真ん中。
ドアを開けるとそこには…全裸で寝ているゴミ山の女王が。
「部屋きったな!?」
「ん…ぅ…なんだぁ?あさから…」
そこら中に散らばった資材と道具とその端材。
足の踏み場がないというか踏みたくないレベルの惨状。
「朝から来るように言ったのはそっちだろうがよ。」
「あぁ。カキュウか…なんかいいずらいな。カキウ…余計言いずらい。カキ…もなんか…」
「そんなんなんでもいいだろ。」
「ならかーくんで。」
「すまなかった。ちゃんと決めてくれ。」
「わがままだな…んー救世主らしいしカキュウとも被ってるし、キュウでいいか。」
「まあ…マシか。」
「まずは朝飯からだ。キュウは?」
「まだだが…」
「なら食ってけ。てか作れ。」
「まじで生活力ないのな。」
「弟子を取る理由がここに詰まってる。」
「誇れることじゃねえよ。」
ブロンを放置してとりあえずキッチンに。どうやらクノムは居ないようだ。まあ師匠の方からの命令なら特に困ることもないだろうととりあえず食事を作る。
どんな味が好みか聞けばよかったな。まあ無難所を抑えればいいか。トースト…いやサンドイッチか?
とりあえずレタスをサッと水で洗うと、トマトを輪切りに。塊の肉を使う分だけ切り出し、ナイフでこそいで平たく。調味料をしまっていると思しき棚を開けると色々入っていてよく分からないがこういう時こそ、
「【分析】」
調味料の味を解析。大凡の用途を把握。そこからは感覚で肉を味付けして、表面を強めに焼いたパンで挟めば完成。
「まあこのくらいか。」
「ん…いい匂いだな。」
「お師匠様ー洗濯終わりましたよ…あ、ご飯作ってくれたんですね。」
「簡単なもんだがな。」
寝ぼけ眼で紙もボサボサ。とりあえず福を最低限着たブロンが机にすわると、待ちきれないとでも主張するようにゆらゆらと揺れ出す。
ダイニングへと持っていき、そうそうに手をつけようとするブロンはクノムに抑えてもらって、牛乳を注いで持っていく。
「っしゃいただき!」
並べ終わり全員が座るやいなや、サンドイッチを掴み取り大口を開けてかぶりつく…
「…結構大きかったはずなんだがな…一口でほぼ半分行ってないかあれ……」
「お師匠様は色々大きいですから。」
態度も?って口をついて出そうになるのを抑える。一応師匠と弟子の間柄になる訳だし…あ。
「…そうだ。俺も師匠って呼んだ方がいいか?」
「んあ?そうだな。アタシのことは師匠。クノムについては…自分らで話し合えー。」
残りの一欠片を口に放り込みながら牛乳で流し込むのを横目にちびちびと少しずつ食べているクノムと向き合う。
「…らしいが、どうする?先輩とか兄弟子の方がいいか?」
「僕の方が年下だし…逆にこっちが敬語した方がいいんじゃ……」
「んー…もう兄弟子と年下で相殺して互いに呼び捨てで行く?」
「あー、いいね。そうしよっか。」
ファーストコンタクトは上々。むしろなんだか気の合いそうな人達で助かった。
「よっし!早速教鞭を振るうか!」
「あ。」
勢いよく立ち上がったことで、飲みかけの牛乳をひっくり返され、牛乳が僕のサンドイッチに…
「お師匠様??こぼさないでくださいよ!」
「…キュウ。今度からご飯作る時は、食べやすいものでたのむぞ。」
「…これ俺が悪いのか??」
湿ったサンドイッチを口に放り込む。案外行けるな。
「お師匠様がガサツなんですよ…!」




