レポート53:運命=なんかもう誰かしらの意図を感じる。
「あ!カキュウくん!!?」
「ん…あれは…おー。2人とも何してんのさこんなとこで。」
クノムの案内でやってきた師匠とやらの工房。普通の家の横に立方体をくっつけたような奇妙な見た目をした家の前にいるのは見慣れた2人。
「君たちがすぐ迷子になるから一旦私たちだけで件の職人の工房に来たんだよ…君たちこそ。その子は?」
「ここの工房の弟子らしい。少しゴタゴタあって手伝ってる。」
「は…はじめまして……」
ただでさえちっこいのに更にちんまくなったクノムに自然と笑みがこぼれる。クノムが玄関の呼び鈴を鳴らすと、ドアを蹴破るようにして出てきたのはノームの女。
ボサボサの長い、少し暗めのワインレッドの髪の毛にでけえ。なんだ、ノームってでかいのか。170…175cm程度。
胸の大きさも相当なもの。
全身は筋肉質。足腕腹筋。見えないだけで背筋もすごいものだろう。なぜわかるのか?
「師匠!!服きてください!!」
「いいだろう。誰がいる訳でもなし。」
「いるんですよ!お客が!」
「む?…そうか。なら服を着てくるとしよう。」
1度引っ込むと短パンと胸下までしか届いていない服を着て戻ってきたその女ノーム。
「そんで?お前たちは誰だ。」
「名を過求。こっちがモノリス。そこのトカゲはフレイド。あとウィーネ。」
「あと??あとって何??」
「分かりやすくていいや。アタシはブロン。にしてもよくこんな工房を見つけられたな?」
「組頭様からのご紹介で…」
「ああ。親父が行ってた奴らか。なら無下にはできねえな…いっぺん見せてみろや。」
うながされ、椅子に座り左腕を見せると義手を外し腕の様子を眺める。
「親父…ってことはあの組頭の娘さんかい?」
「ああ。ここ数年話してないがな。」
「通りでデカイわけだ。」
「でけぇだろ。アタシの胸。」
「身長の話だよ!!で、どうだ?」
「見たところこれはー…焼け落ちたか。神経はまだ使えるな。なるほど…よし。」
「作れるか?」
「作ってやってもいいが...それじゃつまらない。お前、私の弟子になれ。」
クノムが出してくれたお茶をすすりながら対面する過求とブロン。後ろに控えるようにそれぞれの傍に座っているクノムとモノリス。ただのお茶会のはずが一触即発の空気感が張り詰めており、それぞれの
「「2人だけで話させろ」」という言葉によりウィーネとフレイドは帰りまして。
「なんの真似だ。」
先手は過求。ぶっきらぼうに放たれた一言。しかしブロンはそれを涼しい顔でスルー。
「言葉の意味だ。お前私の弟子になって、自分で義手を作れ。」
「メリットは?」
「技術が手に入る。メンテナンスや改造、新造すらできるようになる。」
「現物より方法を教えた方がタメになるって奴か。」
昔の文献に魚がどうとかいうのがあったな、などと思い出す。
「そういう事。何かある度アタシのところに持ってくるのも面倒なろう?」
合理的。納得のいく言葉に1度頷くと紅茶を飲み干すと空のカップでブロンを指し示す。
「なるほど。で、そっちのメリットは。」
「自分の条件だけじゃ決めないか。賢くていいね。」
「相手のメリットがない取引なんてありえない。もし会ったら詐欺かお人好し。どっちにせよ、信用出来んさ。」
お互いにトゲのある、腹の探り合い。しかしその反面何故か、談笑の様にも見える妙な空気。
自嘲と道化の半分ずつ。小馬鹿にした様な態度で交渉は続く。
「ノームにはな? 弟子の格みたいなもんで師匠の格が決まるみたいなのがあるんだよ。簡単に言えば弟子がすごけりゃ師匠もすごい。入れ子構造にその師匠もすごい的なノリでな。」
「めんどそうな文化だな。1人で集中したい職人とかいい迷惑だろ。」
「まさしくその通り。アタシは教えるのに向かないし、気に入ったやつにしか教えたくねえ。」
「なるほどな。言葉から察するに、弟子はクノム1人だけか?」
「ああ。」
「そのせいで家事の大半は僕の負担ですけど。」
「仕方ないだろ。できないんだから。」
「何だ。ただの生活力ないショタコンか。」
「この取引なくしていいかな。」
「マスター。今すぐごめんなさいしましょう。」
「冗談だって…そんなこと、こいつもわかってるよ。」
「っふ。そうだな。」
視線をやればニヤリと笑い、モノリスとクノムは苦笑する。なるほど、関係性はここは近いのかもしれない。しかしここまでの説明を聞いて浮かぶ疑問。まあもう腹の探り合いする必要もないか。
「率直に聞くが、余所者1人受け入れたとこでなんか関係あんのか?」
「まあ普通なら関係ない...が。救世主サマなら話は別だろ?」
この国に来て初めて聞いた。しかし、頭の中に強く残るその言葉。救世主。
「知ってたのか。」
「この国で昔から言われてる御伽噺だよ。
特に肉災以降はよく言われるようになったから名前込 みでみんな知ってんじゃねえかな。」
「そんな有名なのか。だから名声目的で狙ったのか?」
「それもあるな。いくら職人として独り立ちしたとはいえ、娘のアタシが親父のメンツ潰してちゃ世話ないだろう?まあ最後の決めてはフィーリングだったが。」
「なるほどな?つまり、俺はノームの技術をダイレクトに教われて?」
「アタシは一発トップ逆転の名声獲得。いい取引だろう?」
「…ああ。乗った。よろしく頼むぜ?師匠」
「おっ、ノリいーねぇ?んじゃ、明日は日が登ったら集合な。」
「早くね??」
「職人の朝は早いってよく言うだろ?」
「そんなもんか?」
「あ、ちなみに住み込みになるから必要なもんあれば持ってこいよー」
「後出しは卑怯じゃないか?」




