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モノリス・ギア  作者: 櫛名田
土都編
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55/63

レポート55:ちょっと工学タイム。

弟子になり住み込みで働き始めてから1ヶ月程度後。

「…筋がいいな。」

「まあちょっとズルしてるからな。」

「試作品できたぞ。」

「悪くない。干渉もないな。」

出来上がった神経接続の術式を刻んでいない、素体の義手を指をつまんで動かしたりする様子は職人そのもの。結論から言えば、日常生活の杜撰さに対して、ブロンの教え方は上手かった。勿論、解析の助けも大きい。紙に教えられながら設計図を書いてを作るのではなく、完璧な設計図を見ながら専門家にアドバイスを貰えているようなものであるとイメージしてもらえると分かりやすいか?とはいえ、その設計図だけみても組み立て方や素材の加工までは細かく分からない。

それをブロンは論理的に説明、アドバイスを行い時には実演もして見せた。結果として…

「うん。もそろそろ変形の術式に手を出してもいいかもな。クノムも見せてみろ。」

「はいっ」

クノムの義手も細かくチェックすると満足そうに頷く。

「クノムも合格。2人とも今日からノームの術式の指南に入る。さて、先ずは、クノム。刻印術のメリットデメリットは?」

「メリットは適性が無い属性の術を使えること。デメリットは元々刻む必要があるから事前準備が必要だし壊れたら終わりなこと。」

「キューはどう思う。」

「…刻印術式は労力や大きさ、精密さの割に出力が低い。神代の物は例外とするけどな。あと一個の術式につき1つしか使えないから詰め込むほどでかくなる。」

「その通り。そしてもうひとつ…ノーム以外の使う術式タイプは変形に弱い。ヒビが入るのは論外として角度に意味を持たせてるから目に見えてわかるくらい曲がれば機能しなくなるのが弱いところだ。」

「…その言い草から察するに、ノーム式の刻印は強いのか?」

「正解。さて…お前らに見せてやるか。」

渡されたのは小さな金属片。

「…術式が刻んである…が、なんだこれえらいカクカクしてんな……」

「それになんだか…ただの一本の術式じゃないような…」

「2人ともいい目をしているな。」

術式を発動させると金属片は縦横30cmほどの金属板。四隅にはそれぞれ出っ張りがある。

「…なんだこれ。」

「全く違う術式?」

刻まれた術式は…金属片のものとはまた異なる。従来の方式は円を起点とした魔法陣のスタイルがおおい。それ故に円に沿ったり角度をつけたりで丸みを帯びている場合が殆どなのだが。今見ている金属板に刻印されているのは直線のみで構成された術式。

「……もっかい縮めてもらっていいか?」

「いいぞー。好きなだけ観察するといい。」

術式を発動。金属板は金属片に戻り、また金属板に戻せる。

「変形させても機能してる…変形の術式?」

「……形が変わっても発動するんですね。」

「ノームの術式は、従来の方式とは違って直線で構成されている。まあ、角度に意味は持たせていないから曲がってても別にいいんだが…はいこれのメリットは!」

「…破損、変形に強くなる?」

「その通り。あと応急処置もしやすい。どこか欠けてもそこを迂回して刻むだけでまた使えるからな。」

それだけではない違和感。金属板の術式全体を見る。

従来の物と基盤の形は変わらないはず…そこから効果を予測。そして、見つけた。

「…なんで変形の術式が複数ある?」

「……そこまで気がつけるとは予想外だったな。」

術式を発動。火がでる…つぎの術式。水が出る。

次は風が吹く。次は植物。

「4属性発動…??」

ありえない。と言うべきか。複数属性の発動はありえないことではない。だがその為には、術式を一つづつ用意して重ねてひとつの武器に保管する必要がある。

簡単に言えば本棚に術式の書かれた本を1冊づつ入れている様なものだ。だが…今目にしたものは。

一冊の本の中で複数術式を管理している。

「原理が分かったら褒めてやるよ?」

…明らかにわかるわけが無いというニヤニヤ顔。

解析は使わない。当ててやる。絶対。

変形の術式を発動させる。火が出る。

次に変形術式2を使う。水が出る。

なぜ、変形術式を起点にしている?変形させることで術式の形状を変えている…?

再度発動。風が出るが術式に大きく変わったところはない。しかし変形の術式を使っている以上、どこかは変わっているはず。

「クノムはどう思う?」

「うーん…変形してるはずなのにしてない……

変形が小さすぎて見えないとか?」

「一目見て分からない術式の変化…?」

確かに球体から円錐などの形状変化なら分からないこともない。だがこれは属性がまるまる変わっている。

丸から星型に変化させるようなものを見逃すわけがない。

「なんか根本的なことから間違えてる気がするんだよな……」

「そう言えば…なんで直線なんですかね。」

「…言われてみればそうだな。」

直線の術式。角度を問わない刻印…

「直線の…角度を問わないメリットってなんだ…?」

「うーん…繋げやすい…とか?普通のやつと差別化するなら干渉しないってところが大きそうだし…」

「師匠。この板…壊しても大丈夫か?」

「ん?ああ…まあいいが。」

「よしクノムは風の変形を発動させて。俺は火を流す。」

「分かった。」

同時に流すと…金属板は何も起こらず魔力だけが霧散する。複数の術式を同時に発動させた時の干渉現象と同じ…

「複数属性の同時発動は不可能…と」

「てことは1個だけじゃないといけない理由…干渉しないようにする方法…」

「…師匠。ヒント。」

「そうだなぁ…従来の物が干渉を起こす理由は全部の刻印に魔力を流すから。とでも言っとくか。」

全部の刻印に流すから失敗する。つまり部分的に魔力を流している?

「…変形で流れる部分を制御している?」

刻印術を発動させ、指先でなぞる。スムーズに通り抜ける。別の術を発動。指先でなぞると…引っかかる。

「2人とも。正解だ。」

板を手にニヤリと笑う。

「これから2人には、変形の術式を混ぜこみつつ、複数術式を共存させるのをひとまずの目標に訓練をしてもらう。気張っていけよ?」

「望むところだ。」

「わかりました!!」

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