90話
キツネと福の神様に別れを告げて、いざ、要塞攻略へ。
さて、どこから潜入しようか?
いつもいつも、一歩目で敵とかち合ってるからなぁー。
どう考えても、俺に潜入系の任務が出来ないんだ。
そう考えるとあれこれ悩んで、最終的に自分を責めることになるなら正面から乗り込もう。
そう、この要塞にもあるようなそそり立つミサイルの様に、男らしい行動を取ろう。
周囲を警戒しながら歩を進め、表玄関といえる門にまで到達した。
あれ? こんな見晴らしのいい通りを隠れもせずに歩いてきたのに・・・・・・一切攻撃が飛んでこないのは、何故なんだぜ?
一切の遮蔽物を使用もしなかったのに、某ゲームジャンルならヘッドショットされても不思議じゃないのに。
何故か俺の目の前には門がある。
・・・・・・ま、まあ、門を開あけたら流石に敵さんが待ちうけてるよな。
門の向こうに人の気配は感じられないけど、流石にいるさ。
っていうか、いてくれないと。今まで俺が神様連中に可愛がりを受けてた意味が分からなくなる。
ゆっくりと、門を開ける。
大きな門はその重量で、動くたびに隠しきれない音を上げる。
俺の身体が完全に門からはみ出る形になった。
さて。・・・・・・この状況はいったいぜんたいどういう意味だ。
待ち構えているとばかり思っていた敵の姿は、一つもない。
いや、きっと足を踏み出したら流石に、警報ぐらいは鳴るよな?
踏みしめるように一歩、脚を出す。
風の音が耳に響く。
やめてくれ、俺が今まで散々されてきたことが、まさか無意味だなんて言わないでくれよ。
見ているんだろ?
俺が一体どんな魔法を使うのかを警戒して、息をひそめているんだよな?
さらに一歩、二歩、三歩四歩と歩いても一向に俺に向けられるべき敵意を感じない。
さ、流石に建物に近寄ったら、わんさかと敵が出てくるんだろ?
少しだけ速度を上げて建物に近寄っていく。
不意に何かが動く気配が背後から飛んでくる。
そうだろうそうだろう! さあ、掛かってきなさい!!!
勢いよく後ろを振り向き、けん制用のナイフを鍛造する。
投擲を開始しようとした俺の目に飛び込んできたのは・・・・・・一匹の猫。
猫は俺と目が合うと驚いたように、走り去ってしまった。
何だろうか、どうも調子が狂うな。
変態騎士団員が数人目撃されていると聞いたけど・・・・・・もしかして敵の規模って今回はそんなに大きくないのかな?
いやいや、前回あんなに人員を投入していたんだ。
それでいて壊滅させられているのに、少ないわけがない。
増員されていないとおかしい。
それなのにこの静けさはいったい?
建物に侵入しても人の気配はない。
恐らく上の階にも誰もいないだろう。
取りあえず誰もいないのであれば、この遺跡要塞の中枢である制御室を破壊してから考えるか。
福の神様に教えてもらった順序で部屋を抜けていく。
一応警戒はしているけど、人の影さえ見つけることが出来ずに制御室の前まで来てしまった。
何故だ?
陽動なのか?
これとは違う遺跡を入手しているのか?
制御室に入ってみると、やはり人の気配もない全くの無人であった。
遺跡核も教えてもらった通りの場所にある。
何だ、ちょっと拍子抜けだな。
今回は完全に陽動に乗っかってしまったわけだ。
完全な敗北ではあるけど、まあ、人の身にしてみれば危険な遺跡が一つ減って、神様から見れば黒歴史を葬り去ることが出来る結果となっただけだ。
それに大した危険も無く、任務が遂行できるのは喜ばしい限りだ。
遺跡核に手を伸ばそうとした瞬間、珍しく達夫が意識に割り込んできた。
『罠だ!! 手を離せ!!』
握りしめた遺跡核が針状の棘を出し、俺の手に突き刺さる。
激痛が左手を襲う。
あまりの痛さに足を延ばしていることさえできない。
膝から地面に落ち、辛うじて落とさなかったナイフで棘を切り離す。
ご丁寧に返しまである棘が手の甲まで貫かれている。
棘を抜くために力を込めて、棘を引く。
「っぐぁ!!! っぁああああ!!!」
棘が肉を押し広げながら、通過していく感触。
声にならない声が思わず漏れる。
左手が痛みに支配されたような気さえしてくる。
滴り落ちる血液が、膝を濡らす。
シャツの袖を破り、手を縛る。
痛みでどうにかなりそうだ!
ほぼ無意識で、処置をしていく。
手に巻いたシャツの上から、傷口を抑え止血できないかを試す。
シャツの着れはしに広がる血は、未だに広がっていく。
これ以上自分だけではどうにもできないと、達夫に協力を仰ぎスーツに魔力を伝える。
おまけ感覚で付けた治癒の加護。
これを大々的に使う日が来るとは・・・・・・。
少しだけ痛みが引いてきたような気がする。
シャツから滴り落ちる血の量も、心なしか少なくなっている気がする。
動かせる程度に痛みが引くと、今度は左手の点検をしなくてはならない。
指先に痺れはない。
痛みは継続しているが、少しだけなら動かすこともできる。
しかし、強く握ることは出来そうにはない。
最悪だ、今日という日は俺という人生最悪の日に違いがない。
あるべき遺跡核が無く、負傷しそれを回復させるためとはいえ、補充の目途もないのに魔力の使用を強要される。
しかも福の神にあったのに、任務が失敗するかもしれない。
キツネになんて言えばいい?
踊らされた揚げ句、負傷しましたなんて言えるだろうか?
それでも、一旦はキツネの元に戻った方がいい。
状況は状況で正しく報告しないと。
何とか立ち上がり、足を踏み出すとそこにあるべき床の感触はなかった。
そのまま、俺の重心は崩れ口を開けた奈落に飲み込まれてしまう。
手負いの獲物は逃さないつもりか?
今回の任務はまだまだ終わりそうにもない。
次回投稿は02/26を予定しております。
では、次回投稿で。




