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89話

 キツネに連れられるまま、俺は雄大な川の前に立っている。

 時折見受ける人々、眼下に広がる大きな要塞のような建物。

「キツネさんや、あれってもしかしなくても・・・・・・モヘンジョダロじゃない?」

「おお、よう勉強しとるなぁ~。大正解」

 いや、確かに俺の知ってるものとは全くといって違うんだけど。

 建物の配置とか、どこかに既視感があったと思ったんだぁ~。

 そうかそうか、ってことは俺の後ろに流れてる河ってインダス川ってことか。

 ・・・・・・前の世界で4大文明と教えられた川が、これか。

 また、随分と古い神様の遺跡なんだろうな。

 

 最近気が付いたことなんだが、文明・文化の発祥地と記憶ある土地に住み着く神様は古い神様が多い。

 そして古いだけあって、信徒の数も多い。

 言ってしまえば力の強い神様が多いということだ。

 そしてそんな神様が己の力を示す場合、兵器としか言えない遺跡を創る傾向にある。

 空気無くしてみたり、火山を連動させてみたり、空飛ぶ城だったり、人の手に渡ったときの事なんてお構いもしない威力の遺跡を創る。

 そもそもこの世界で兵器なんて意味も無いはずなのに。

 

 この世界に突出した宗教も、地域における貧富の差も存在しない。

 人がいるということは、そこには信仰をさせたい神様もいると言う事。

 人間は食うや食わずの状態では、信仰心なんて持ち得ないということだろう。

 まあ、たまに飴と鞭で信仰心を煽るやり方もあるようだけど、大抵は一部地域で独占できるようなものはこの世界には存在さえしていない。

 エネルギーを生み出すことさえ、神様にとっては造作もない事なんだから人が飢えるということ自体があり得ない。

 現に俺の知ってる世界人口は、この世界では100年前に通過した数でしかない。

 まさにこの世界は、神様によって地に満ちることを許された楽園と言って良いだろう。

 

 そんな世界で戦争なんて起きるはずもなく、武力を示す必要もない。・・・・・・はずなんだが、どうしてか神様の中には如何に威力の高い兵器を生み出せるかということを競うやつがいる。

 一種の示威行為なんだろうか?

 神様の考えることは、よく理解できん。

「いや、それ普通の事やん?」

 そして、眼下に広がる要塞。


「いやいや、意外と平和利用されてるのよ?」

「どんな風に?」

「川の氾濫とかの時、避難所として」

 うん、そういうのも必要だよね。

 ・・・・・・神様がいるのに、災害?

「ほ、ほら、飴と鞭の鞭がね」

 どうやら、折り合いの悪い神様もこの地域で同居しているようだ。


「それにしても、この遺跡・・・・・・本当に必要だったの?」

「しー! 声がでかい!! 聞かれたらどないすんねん!」

 キツネが相手の神様に気を使うように俺に釘を刺すには訳がある。

 このモヘンジョダロ要塞を創った神様は、未だにこの遺跡が必要だと言い張っているようだ。

 曰く『遠くない未来、再生を促すなら徹底した破壊が必要』なんだそうな。

 そして創られたのが、この遺跡。

 これと似たような遺跡が、実は世界には複数個存在している。

 それらは世界を破壊しうる兵器が眠っている遺跡。そしてここはそれを操作するための施設。

 この遺跡が稼働してしまったら世界は、なんとも言えない終わりを迎えてしまう。

 

 実際問題として、多くのミサイルが地表を焼き尽くす事態になるだろう。

 ・・・・・・まあ、そこは神様らしい終焉のイメージなんだけど。

 肝心の焼き尽くすためのミサイルがアレじゃな~。

 人類うかばれないぞ、マジで。

 ちょうど、俺の目線にはミサイルが頭を出しているいわゆるミサイルサイロがある。

 頭って言うか・・・・・・亀〇なんだけど。

 なんで男のシンボルで地表を焼くんだよ・・・・・・他にもっと相応しい物あるだろうに。

「何と言うか・・・・・・破壊の神様であると同時に、一応豊穣の神様だったり子孫繁栄の神様だったりもするから・・・・・・なんか、ゴメンな」

 キツネもあれには疑問があるようだ。

 しかし、俺とキツネではキツネの方が関係が深い。

 まあ、謝りたくもなるよな。


「いやはや、お恥ずかしい。まあ、若気の至りといいますかね」

 後から現れたこの遺跡の製作者は、第一声を言い訳から始めた。

 きっと、さっきまでのやり取りを聞いていたんだろう。

「壊しても良かったんですけど、いつも間にやら壊すに壊せない事態になってましてね。ここはひとつお願いできますか」

 神様も自分の行いを恥じるようだ。

 そうなる前に、よくよく考えてデザインなりすればいいのに。

 

 当時のこの神様は随分と激しい性格を持ち得ていたようだけど、永く生きていると性格の変化が生じるようだ。

 本人が言うには、もう一つの人格が創ったもので本意で無かったらしい。そして時間がたつともう一つの人格とやらはいなくなっていたという・・・・・・本当かなぁ~。

「本当ほんとう!! だって今は恵みを与える福の神でもあるんだから!!」

 な、なんだって!?

「信じましょう!! だから金運に見放された私めに、どうかお恵みを!!!」

 俺はこの神様の言葉を全面的に信じる。

 その証として五体投地で信仰を示した。

 因みに、魔法は何も発動しなかった。

「哲夫君。キミ、自分に正直すぎやで」


 さて、気を取り直して要塞攻略するか。

 これまでの調査で現在、この要塞を守っているのは福の神様の信徒ではないことが分かっている。

 よりにもよって、薔薇鉤十字騎士団が守っている。

 またしても、奴らに先を越されている。

 よっぽどいい情報源を持っているんだろう。

 盗掘師以外で遺跡の情報を持つものが、あの組織にはいるみたいだ。

 前回の衝突で捕らえた奴らには、それを知る者はいなかった。

 何としても幹部を捕まえないといけない。

 

 相手の情報を知らないということは、負けてるも同然だからね。

次回投稿は02/24を予定しております。

では、次回投稿で。

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