表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/185

85話

「その日、県立左河合高校に激震が走ったんや。欲に溺れた野人が可憐な女子生徒を追い回し、密かに結成されていた少女のファンクラブ総勢150人をちぎっては投げちぎっては投げ。その勢いは少女に届いてしまうかと思われた。そこにラブリーでプリチーでこの世の愛らしさを集めたかのような救世主が現れたんや。その外見とは裏腹にその美声は内面の美しさを用意に察することが出来、それでいてその真の姿は絶世の美男子であることが想像に難くないそんなキツネの姿をした神様が、欲に溺れた野獣を成敗し学校に平和が訪れたんや。のちにその出来事は『終業式の狂気』として永く学校に語り続けられましたとさ。めでたしめでたし・・・・・・終われる? なあ、終われんの?」

 冷めた目線を俺に向けるキツネが、俺を非難するように2000%美化された話を朗々と語っている。

 それについて、反論は山ほどある。

 しかし、今の俺にはそれを口にする資格を与えられてはいなかった。

「いやぁ~、まいったよ」

 そういいながら現れたのは、少年の神様。

 少し疲れたような表情が浮かんでいる。

 いつもの朗らかとした雰囲気はそこには無かった。

「おお、###。そっちはどないや?」

 俺から一切目線を動かさず少年に現状を確認するキツネ。

 その態度から、今回俺がやったことの大きさがうかがえる。

 因みに、現在キツネの視線は俺よりも高いところにある。

 そして俺の脚は、一時間ほど前から痺れている。


「ああ、あっちは###に任せて来た。『行かなくていいですか?』『大丈夫、問題ない』の応酬であと五年は持たせられそうだよ」

「そうか、アイツの語彙で交渉ごとに役立つ日が来るとはな。本当に驚きだわ!!!」

 キツネの怒りがそろそろ限界を迎えそうになっている。

 今回、俺が怒られる経緯は簡単だ。

 あの日、桐山に渡された紙きれ。

 深く考えないで受け取ってしまったが、実はあれ。請求書と書かれていた。

 そう、薬杯の行方を捜索してもらった報酬を要求する紙切れだった。

 まあ、確かに仕事はしてもらった。

 相応の報酬はあってしかるべき、それは分かっている。

 しかっし、その金額が俺の負っていた借金の総額よりも多いとなれば話は別だ。


 ダメ元で瑠璃男さんにそのふざけた紙切れを持って行った。

 一部は支払われることになった。では、残額は?

 依頼した俺に支払い義務が生じることになった。

 瑠璃男さんは、俺に苦言を呈した。『個人で盗掘師を利用してはいけないよ?』と。

 あまりに短かった、俺の綺麗な身。借金が無くなったという事実は数日だけしか存在しなかった。

 そして俺は思った。この借金は個人が個人に対して負ったもの。

 であるなら、個人の判断で減額できるのではないだろうか?

 しかし、あの桐山が取得する金銭を減らすはずがない。そこで俺は一計を案じた。

 ただの顔見知りの俺達では、アイツも減額を認めないだろう。

 だったら、ただの顔見知りでなくなればいい。

 

 そして俺は、明日から冬期休暇になる終業式の日。作戦を決行した。

 古人曰く、押してダメならもっと押せだ。

 朝、桐山が登校し教室に顔を表した瞬間に、俺は不意を打ち愛の告白をした。

「桐山、好きだ。結婚を前提に付き合ってくれ!!」

 その言葉が教室に響くと、まあ、シーンとしたね。ものすごく。

 そして赤面した桐山が教室から走り去ると、俺はそれを追いながら告白を続けた。

 途中、意味の分からない男どもが出て来たり、教師陣に道を阻まれたりもしたが、運よく屋上に桐山を追い詰めることに成功した。

 あとは、ゆっくりと愛を語ればいいだろうと思ったその時、キツネが現れ一瞬でボロ雑巾の様にされた。

 マジで。変態や裸族が可愛く見えるぐらい、徹底的にボコられた。

 そして、魔法教会に強制連行されるという事態になった。

 

 うん、順序立てても俺が一方的に悪いのは分かる。

 どうしてそんな行動に至ったのか、過去の自分を問い詰めたい。2、3時間問い詰めたい。

 その後、どういう経緯か分からないが、学業を司る神様の耳に俺の蛮行が入ってしまったらしい。

 そして魔術師が行った失態を、神様界隈に広げないためにも教会内で処分することになり、神様同士の交渉という戦争が勃発した。

 その間、俺は一切外に出ることが許されることもなく、こうして日に何時間かキツネに怒られながら身を隠すという生活を送っている。

 ・・・・・・食費がかからない生活という利点を見だしてしまった、浅ましいのが今の俺と言う訳だ。


 金運と言う言葉から、徹底的に見放された哀れな男の話として・・・・・・語り継がれたくはないが、魔法教会にとって大問題であるだろうから、そうもいかないんだろうな。

 

 ◇ ◇ ◇


「あちらさん、やっと諦めてくれたわ」

 キツネの姿の神が、疲れた表情で口にする。

 その姿をさも面白い物を見るように、笑みを浮かべた少年の神が囃し立てる。

「なんだ、もうちょっとごたごたしても面白そうだったのに」

「アホ言うな! 別勢力と事を構えるほど余裕ないわい!」

 それにしてもと、キツネは思う。

 あの少年は、どうしてあんなにも借金に対して危機感を覚えるのか。

 教会内も彼の有用性を認め、少しばかりの配慮をしようとした矢先にあの出来事を起こされてしまった。

 残念なことに、今回は何も援助が出来ない状況に追いやられてしまった。

「ホンマになんでやろな?」

 心底不思議そうな顔を浮かべるキツネに、少年が一言。

「半分はあんたのイジメのせいだけどな」


「でも、あの娘・・・・・・嫌がってない。何が問題?」

 突如現れた少女の神がキツネに問を投げかける。

「それ! 俺も不思議に思ってた。なんであの娘、嫌がってないの?」

 違う角度の問が少年の口から飛び出る。

「お前と似たような性格なんじゃないんか? 思い当たる節、あるやろ?」

 巨大な疑問符を頭に浮かべている少年と少女。

 キツネからは盛大なため息が漏れる。


 人間界はもうすぐ新年を迎えようとしているそんな日の出来事であった。

次回投稿は02/16を予定しております。

では、次回投稿で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ