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82話

 達夫の言葉、俺はそれの意味を気が付くことが出来なかった。

 ヒントは散らばっていたが、確かに俺の手元にあった。

 しかし、この時の俺はそれに気が付くことが出来なかった。

 それに気が付いていれば、衝撃の事実にも予測がついたはずだった。

 ・・・・・・まあ、気が付いたからどうなると言う物でも無かったからそれはそれでいいけど、でも、知っておくべきことではあったと思う。

 達夫の言う『アルカナ』がなんのためにあるのか、そのことに思考の一部だけでも傾けておくべきだった。

 後悔先に立たずとは、なんとも為になる言葉だ。

 でも、それを実感する時、人は必ず後悔しているものであるのだけど。


 達夫の言葉と態度に怪訝な表情を受けベていたであろう俺に、キツネが声をかけて来た。

「なんや、どないしてん?」

 この言葉にも何も疑問を感じていなかった。

 あのキツネが、俺に疑問を投げかけているという事実に何も気をまわしてはいなかった。

 あり得る話ではないのに、そのことに疑問を挟むことすらしなかった。

 一音だけ、キツネが声を上ずらさせたことにも何も感じていなかった。

 もう一つの事実もそこに有ったというのに。


 ◇ ◇ ◇


「いや、・・・・・・? なんでもない・・・・・・?」

 達夫のヤツ、アルカナとか言ってたな。

 いや、確かに不穏な言葉ではあるけど、これだけ神様がいるんだぞ?

 それぐらいあるよな。

 いや、無いと不思議なくらいだよな。

 元人間の神様が確かにいるんだし。

 何言ってんだ、アイツ?


 それにしてもつらかった。

 何よりも視界に移るものが酷かった。

 いや、確かに一部は俺のせいでもあるけど。

 洞穴の出来事を思い返すと少しだけ気が滅入る。

 通路は手足がなくても死ねない人間が、そこら中に散らばっていたし。

 何より幹部の姿が・・・・・・。

 二度と会いたくないんだけど。

 そんな訳には、いかないんだろな。


 治療を受けながら、耳を澄ますとそこいらで俺の後続となった部隊の報告が飛び交っている。

 中々状況は良さげではある。

 しかし、肝心の報告が一向に入ってこない。

 敵組織の幹部を捕獲したという報告は入ってくることは無かった。

 どうやら、入口は俺が侵入した一か所だけではなかったようだ。

 はあ、またあの裸族と対面せにゃならんのか。

 ・・・・・・頭が痛くなるな。

 あとどれくらいの変態どもと対面しなくてはいけないんだろうか?


 そんな事を考えていると、幕の向こうでキツネの声が聞こえる。

 やけに相手は怒っているようだけど?

 アイツ、また何かやったのかな?

「若造! 貴様知っておったというのか!?」

「ええ、知ってましたよ? あんたらが無能だってことを」

 おぅ、かなり嫌な場面に出くわしてしまったな。

 キツネがあんなに冷たい言葉を使うのは、初めて耳にする。

 本当に同じ口から出ているのかと思う程、言葉に温度が感じられない。


「アレがどういうものなのか、知らんはずあるまい! 何故静観しておった!!」

 この声の感じ・・・・・・あの老人の神様だよな?

 あの神様とキツネって、同じ神様に仕えてる同僚だろ?

 何を言い合いしてるんだ?

 何となく興味が湧いて、キツネの声に集中してしまう。

「静観? 馬鹿言わんといてください。あいつとやりあってるのは、我々ですよ? あんたが何してるっていうんですか? それこそ静観でしょ? ねぇ、大天使様」

「こちらとてヤツの同調者をけん制して負ったわ! それなりに成果も出ておる」

「その結果、身内に裏切りものが出て、知らぬ間にあれを根こそぎ奪われたと?」

「ぐぅ、だが、こうして――」

「遅いんですわ、こっちもあれが元の持ち主に渡ったことは少し前に分かりましたしね。見間違えもできないものですし」

「ならば対策を――」

「してますよ? 気が付きませんでした? 逆位置を急遽作成中です」


 なんだなんだ? 根こそぎ?

 まだなにかとんでもない物を盗まれているのか?

 それに、元の持主って? もしかして、あの女がまだ何か持ってるってこと?

 はあ、絶対また変態が俺の前に立つな。

 間違いない、確定事項だ。コレ。

 それにしても・・・・・・逆位置ってなんだ?

 しかも作成中? キツネが?

 嫌な予感しかしないな。

 何せ自動翻訳の遺跡とか作って、怒られた神様だからな。

 間違いなくろくでもないものだろう。

 ん? キツネと老人の声が聞こえなくなったな。

 ああ、俺の声が聴こえたから声に寄らない方法に切り替えたな。

 残念、少しだけ面白そうな話ではあったのに。


 ・・・・・・大天使?

 大天使って、あの老人が?

 え!!!! あの人がミカエルのモデル!?

 うわぁ、ショックだ・・・・・・。

 マジか、本当にショックなんだけど。

 絶対美形だと思ってた。

 本物はああなのか、しかもそれなりの地位にいるはずなのに、主神に怒られたことを堂々と言っちゃうような神様なのか。

 なんか、本当にただただショックだわ。

 いや、待てよ。人間社会でも古くはやんごとなきお方には、やすやすと目通りできなかったらしいから。

 そう考えれば、どんな理由であれ目通り出来ることは、誇れることになるのかもしれない。

 ・・・・・・ああ、なにもフォローになってないし、逆にショックが増したな。


 それにしても、ミカエルだから薬杯に係わって来たのか。

 何となく納得。

 ああ、そう言えばあれもアルカナに関係してたっけな。

 神様が本当に係わってるアルカナか・・・・・・悪戯の神様なんかまさに愚者のカードにピッタリだな。

 おっと、これは神様に対する悪口になってしまうかな?

 まあ、ここにいないし大丈夫だろう。


 ん? 少し眠くなってきたな、少し寝るか。

次回投稿は02/10を予定しております。

では、次回投稿で。

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