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81話

 さて、態勢は整った。後はこの裸族とどう戦うかだな。

 これまでの俺の経験では、この状況に合う経験がない。

 目と目が合う距離で戦ったのなんて、変態以来か・・・・・・。

 他には・・・・・・ああ、訓練と言う名の折檻で子供の神様たちともこの距離間だったな。

 なんか、色々と技名出してきたけど、そもそもまともに格闘技すらやったことのない俺に、何を求められているんだろうか?

 まあ、そのお陰もあってこうして生きてこれたって言うのはあるんだけど。

 あ! そうか、あれやってみるか。

 少年の神様がいつも得意げにやるあれ、一対一ならそれなりにイケるかも。

 

 俺は裸族の周りを再び周回し始めた。

 今度は観察はそこそこに、速度を上げて視界の端に裸族を追いやる。

 俺の行動が戦闘行動に変ると、裸族も再び舞踊を始める。

 俺が通った後に幾つもの魔法が通りすぎていく。

 火の魔法が俺に熱を伝え、風の魔法は俺にのスーツをかすめて裾が破れていく。

 至近弾が多いが、裸族は俺を捉えきれてはいないようだ。

 そこから、俺はさらに速度を上げる。

 イメージは残像が残るくらいの速さをイメージしているが、まあ、そんなに早く人間が動けるわけはない。

 それに、地面が土で走る度に土が巻き上げられて、いくつかが自分の顔にかかる始末。

 

 そんな状況で、攻撃なんて・・・・・・しちゃうんだな、これが。

 走りながらナイフを鍛造、出来たそばから円の中心に向かって投擲を行う。

 未だに裸族の舞踊を邪魔するには至らないが、ナイフは確かに裸族に向かって飛んでいく。

 そして俺に向かってくる魔法も、至近弾が少なくなってきている。

 裸族の舞踊が、だんだんとぎこちなさが目立つようになってくる。

 脚を出そうとした地面に、ナイフが刺されば思わず引っ込めたくなるのが人の本能。

 そういう攻撃を少しずつ増やしていく。

 うん、なるほど。速度が戦いに有用とは聞いていたが、こういうことか。

 

 裸族の舞踊は次第に限られた行動の繰り返しになっていく。

 段々と舞踊とは呼べない代物になってきている。

 でも、それはこちらにも問題があると言う事。

 限られた動きで、こちらの攻撃を避けることが可能だと言われているようなものだ。

 攻撃を上下に散らす以外に何か出来ることは無いだろうか?

 やってみて分かったことだけど、この動きは正直俺には合わない。

 魔力を無限に使えるならまだしも、有限でしかも別のことに魔力を割り当てながらだと、こっちの方がまいってしまう。

 はっきりと、悪手を打ったことを認識できてしまった。

 

 そう思うと不思議なもので、裸族の魔法の至近弾が再び増えて来た。

 思案が行動を阻害してしまったんだろう。

 速度が落ちて来たのかもしれない。

 ヤバイな、どうしようか。

 相手を妨害しながら、一撃を加える方法はないものか?

 あ・・・・・・アレ、出来るなら使いたいな。

 達夫には無理をさせてしまうかもしれない。

 でも、戦いには無理は付きものだしね。

 頑張ってもらおう。


 周回速度を少しだけ抑えて、とあるものを鍛造する。

 そして、再びナイフを鍛造し、先にナイフを投げる。

 後を追わせるように、先に鍛造したポンプ機構を内蔵した針を投げつける。

 すると、思っていた通り魔力の残量が著しく減っていくのが分かった。

 一瞬のめまいに襲われ、脚がもつれる。

 しかし、自分の企てが上手くいくと信じて次の行動に出る。

 周回行動をやめて、裸族に向かって切り込む。

 

 ナイフを避けた裸族の足元に針が刺さる。

 勝手に外れたと思ったのだろう。

 切り込んでくる俺に、安どの表情と共に魔法を投げつけてようとする。

 しかし、裸族の表情が固まる。

 針が刺さった地面に、裸族の足が縫い留められた。

 何時かの変態と同じように、影縫いは再び成功した。

 体勢を崩した裸族に俺は刀を振るう。


 予想より大きく身体を崩した裸族のせいで、俺の刀が完全に届くことは無かった。

 肩を浅く切る事しかできなかったが、俺は勢いをそのままに薬杯に迫る。

 あわよくば、両方とも始末しようと思っていたけど、そううまくいかないらしい。

 祭壇に見立てられた台を駆け上がり、薬杯に手が触れる。

 魔力の欠乏が始まっていた体に、再び魔力が駆け巡る。

 出来るだけ勢いを殺さないように、壁を蹴り出口に向かって走りだす。

 

 任務完了!!! 撤退しまーす!!!

 俺は心の中で叫びながら、地上を求めてひた走る。

 後ろで裸族の声と足音が聞こえる。

 一本道の洞穴の中で、魔法なんて撃たれたらかなわない。

 ジャンプしながら後ろを振り向き、手にただの針を鍛造する。

 そして俺に向かって魔法を撃とうとしている裸族を見つけ、針を投げつける。

 迫る針を警戒して、祈りを途中でやめた裸族が、後ろに大きく飛びのくのを確認して再び出口に向かって走りだす。

 途中、なにかを踏みつけて走っていたけど、きっと芋虫に違いない。

 大体、逃げるのにそんな事を気にする余裕もないしね。

 仕方がない。


 出口から出た俺は、そのまま民家を飛び越えながら真っ直ぐに橋のまで逃げる。

 逃亡の途中に俺とは反対方向に走る人たちを確認できたが、あれがきっと待機していた魔法使いの隊員なんだろう。

 まあ、俺の仕事は帰るだけになったし、後はよろしくお願いしますとしか言えない。

 橋を渡っていると、河川敷に設営された今回の作戦本部が見えてくる。

 助かった~!!!

 橋を飛び降り、作戦本部に滑り込む。

 

「お! お帰り~」

 キツネがいつものテンションで迎えてくれた。

 これで本当に任務完了。

 

『呆れた、言ってることとやってることが違いすぎる』

 達夫が何故か俺のことを批判している。

 はて? 俺としては有言実行したんだけどな。

『いや、逃げ帰って来ただけじゃないか』

 は? 第一目標は完全に壊れたと思うけど? お仕事は完了でしょ?

『いやいやいや、敵は残ったままだけど?』

 え? まともに残ってるのなんて幹部の裸族といても数人だけでしょ?

 十分壊滅と言って良いと思うけどな。

『あ、それ言い方だけじゃない? 本質はそこじゃない!!!』

 だから、今回のお仕事の内容を思い出してごらんって。

 あくまで第一目標は薬杯。そのほかは付随してても、それこそ本質じゃないだろ。

 だったら、あの裸族は放置に限る。

 状況が悪かった。倒せればそれに越したことは無いだろうけど、その状況になかったってことだろ。

『それじゃ! アイツのアルカナが!!!!』

 

 おい、達夫?

 今なんて言った? アルカナ?

『あっ!!! ・・・・・・』

 おい、黙るな。おーい!

 

 いや、アルカナ? それってもしかしなくても、アレだよね。

 もしかして、俺ってとんでもないことに巻き込まれてた・・・・・・?

次回投稿は02/08を予定しております。

では、次回投稿で。

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