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71話

 周囲の視線をごまかすために、握りつぶされた刀を拾って見る。

 ものの見事にひしゃげている。しかも、刃の部分に少しの断裂も無くぐにゃりと曲がっている。

 そんなにもろい造りにした覚えはないんだが・・・・・・。

 拾って数回振ってみると、曲げられた部分から完全に折れてしまった。

 うーん、こんなにも簡単に折れるなら曲げられても仕方がないのかな?

 それなりに魔力は込めたが、何せ数を投げた中の一本だしな。

 

 そんな言い訳でもしないと、あの事実は受け止められない。

 一応前回遭遇した時よりマシになったとは思う。

 あの時はまともに顔すら見ることが出来なかったんだし、それを考えれば今回は指一本触れることが出来ないとは言え、攻撃をすることが出来た。

 けど、決定的な真実が明確にこの目に映ってしまった。


 俺の攻撃は、あの女には届くことが無いという真実。

 この世界、いや、キツネとその仲間たちが管理している世界群で、神様に手をあげることは出来ないということを思い知らされる出来事。

 しかも、自分が追っていたのが神様だったということ。

 どうすれば、あの女に一撃を加えることが出来るのだろうか?

 この世界に降り立った俺には、到底無理なことなんだろうか?

 そう、無理とあきらめることは出来る。

 そっちの方が簡単だ。常識的にもその方が正しい。

 無駄な労力を使うより、他の何かで一泡吹かせる方が望みはある。

 でも、それじゃ、負けを認めることになる。

 負けを一度でも認めると、今後あの女に対して妥協せざるを得ない状況に追いやられる気がしてならない。


 どうにかできないだろうか? 人の身で神様に対して一撃を加えることのできる、そんな矛盾を。

 あるのか? そんな都合のいい方法が。

 これに関してはキツネにも相談は出来ない。

 何せ、キツネ本人も神様なんだから、自分が危険に晒される可能性には協力してくれはしないだろう。

 この件については、俺自身で何かしらの答えを見つけなければいけない。


 できれば早いうちに見つけないと。

 今回のことで達夫が協力しない可能性も出て来たし、俺を裏切ってあの女に協力しないとも限らない。

 まあ、現状があるのもあの女に協力しているからこそ、という言い方もできるんだけど。

 はあ、厄介なことに巻き込まれたんだな、俺。

 ・・・・・・今更か。


「哲夫君! こっちきてはよ、仕事しいや!!」

 おっと、考え事をしていたら二柱は揃って遺跡の前まで行っていたようだ。

 ん? ・・・・・・神様の前で考え事って、もろバレなんじゃ?

 ・・・・・・うん、それも今更だった。

 

 それにしても、これどうすればいい?

 遺跡を目の前にしてみると、この循環している海水が邪魔としか言いようがない。

 意外と流れが速く手にした刀だったものを投げ入れてみたらあっという間に、神殿の外に流されてしまった。

 俺が入ったら・・・・・・溺れてしまうよね?

「アホか、ワシらが居るやんけ。そんな状況で流石に見捨てはせんって」

 本当に?

「本当や」

 本当のほんとうに? 

「それ、長くなるから止めへん? ワシが信じられんくてもこの方が居るやん」

 そう言いながら蛇の女神様が宿る桐山に尻尾を向ける。

 そうだった、優しい女神様がいるんだったな。

 だったら安心か。

「哲夫君? そない理解が早いのも傷つくんやけど? 神様も傷つくんやで?」

 だって・・・・・・あ! 長くなるといけないんだったな。

 さっさと仕事しないと。

「あっ! ちょっと、逃げんとちゃんと理由言えや!!」


 後ろでキツネが何か叫んでいるが、まあ、今は蛇の女神様を信じて飛び込むしかない。

 うわっ!!  思ってたより厳しいぞ、これ!!

 どんなに泳いでみても一向に前に進めない。

 それどころか、徐々に流されてしまっている。

 息も続かないし、これ・・・・・・無理・・・・・・!!


 力尽き、溺れるように流される俺。

 意識が遠のくかと思った瞬間、指に何かが触れた気がした。

 それを何とか掴もうと、足掻いてみる。

 手の中でパキリと音がしたかと思うと、流れがいきなり消えて大量の海水と共に宙に投げ出される。

「っぶは!」

 落ちながらなんとか肺の中に空気を取り込む。

 下を見ると中々に高い所に入るようだけど、受け身が取れない高さじゃない。

 何とか体勢を変え、受け身の体勢で地面に帰ってこれた。


「はぁ、はぁ、はぁ」

 あーー!! 死ぬかと思った。

 マジで死ぬかと思った。苦しいの嫌い! 地面大好き!!!

「いや、今、何で泳いでん? 自分」

「な、にって、はぁ、遺跡の所まで、行かないと」

 任務を成功した俺に到底向けられるべきものではない視線をキツネが向けてくる。

 物凄く不思議なものを見るような目だ。

 さっきの事まだ怒っているんだろうか?

 大丈夫、本当は信じてるって。一番頼りにしてますよ。

「いや、そう言うことや無くて。流れたら遺跡核まで行くやん。なんで自力で行こう思ったんや?」

 はぇ?

「なあ、なんでそんな無駄な労力つこったんや?」

 ・・・・・・あー。


「なあ、キミ・・・・・・頭って生きてるうちにしか使えんのやで? 大丈夫か? 使えてるか?」

「失礼な奴だな! 使ってるよ!!」

「キミが信心ないのって、そのせいちゃうん? ワシ敬えんのってその頭が残念だからやないやろな?」

 本当に失礼な奴だな! どの立場なら人にそこまで言えるんだ!?

「神様の立場やけど・・・・・・何か問題ある?」

 ・・・・・・無いです!

次回投稿は01/19を予定しております。

では、次回投稿で。

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