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47話

次回投稿は12/02を予定していります。

では、次回投稿で。

 虫たちをゆっくりと追いかけていたつもりだった。

 異変に気が付いたのは、虫たちがへんてこな、大よそ岩とは呼べない石ころを持ち上げて踊っているのを発見した時だった。

 恐らく、あの石ころが千曳の岩であってるはずなんだけど、千曳って千人でも引けないって意味だと思ってたのに違うようだね。

 

 それにしても、さっきから倦怠感と口が渇きて仕方がない。

 一応、何が起きるのか探ろうと思って隠れてはみたものの、思いの外虫たちの踊りが長引いてるみたいだ。

 倦怠感は次第に強烈な睡魔に変ってくる。

 どんなに集中しようと思っても、まぶたが言うことを聞いてくれない。

 例えるなら、水泳の授業終わりの授業のような、2徹した後の解放感のような抗いがたい睡魔。

 心地よく、思考を許さない様な強制性を感じている。

 

 それでいて、口の渇きも次第に強くなる。

 暑い日差しの中、黙々と歩き続けている時のような強烈な口の渇き。

 川の水でもいいから、すぐに口に入れたくなるような危険な雰囲気を伴う渇き。

 

 総じて感じるのは、今寝たら死んでしまうかもしれないという危機感。

 それを感じていた。

 落ちている木の枝で、手の甲を刺激しても太ももをつねってみてもどちらも引かない。

 そして、現状も引くに引けないという危機的状況だ。

 人に発見されても、虫に発見されても無事では済まないだろうし、かと言って、このままでも危険には変わりがない。

 

 それにしても、だいぶ長い。

 虫たちが踊りだして、もうすぐ1時間は経つだろうか?

 逃げ遅れていた虫たちも合流して、だいぶ経つよな?

 ざっと千匹ぐらいの虫が、石ころを持った虫に向かって踊り続けている。

 はっきり言って、異様としか言えない状況だ。

 

 山の下の方から、足音が聞こえるようになってきた。

 恐らく、魔法使いたちの山狩りも終盤に入ったのかもしれない。

 なにせ、目標も八つ当たりの対象もここにいるからな。

 あと数十分でここに押し寄せてくるだろう。

 仕方がないな。

 

 強烈な睡魔を抱えながら、身を隠していた茂みから躍り出る。

 手短な虫たちから、斬り伏せていく。

 こころもち、切れ味が悪くなっているような気もするが、そんな事も気にしてられないほど多勢に無勢な状況だった。

 巨体な虫の攻撃は一切届かなかったのに、スーツは今や、ほぼ全壊と言って良いほどにまできり避けれていた。

 

 おかしい。

 流石に自分の状態がおかしいことに、今更に気が付く。

 踏み出す脚は重く、いつもの一歩でさえ踏み出せない。

 手に持つ刀は羽根の様に軽かったのに、今はダンベルを振っているかのようだ。

 そしてそんな状況で、睡魔と口喝はより一層強くなってきている。

 何より口喝が酷い。

 斬りつけた虫から零れ落ちる体液にでさえ、のどが鳴る。

 

 どれくらい経ったか不明だけど、足元には十体ほどの虫の死骸があり、いよいよ刀から滴る体液を啜ろうかと思っていた矢先、それは起きた。

 石を持つ虫の足元に、黒い穴が出来たかと思うとそれに気が付いた虫たちが、我先にと飛び込む。

 目の前にいた虫でさえ、俺にはかまわず背中を見せて逃走していく。

 何が起きたんだろうか?


 そして、最後の虫が穴に飛び込むと石を持っていた虫が、さながら幻の様に消えていった。

 唖然とするしかなかった。

 一瞬、意味を理解できなかった。

 要するに、これは・・・・・・撤退した、ってことか?

 

 まあ、放っておいても逃げてたんだし、良いけどさ。

 それにしても、あっけない引き際だったな。


 ・・・・・・ん? 引く?

 いやいやいや、まさか!

 そんな訳ないよな、撤退するのに千以下にならないと撤退できないから千曳とか。

 そんな、ダジャレみたいな条件な話・・・・・・。

 いや、曳と引くと退くって違う意味だったよな?

 うん、違うはずだよ。

 

 まあ、取りあえず脅威の半分はいなくなってくれたから、後門の狼たちが来る前に遺跡を破壊しないと。

 それにしても、岩って言ってたのにこんな石ころとは。

 ん?

 周囲の石の中に、奇妙な窪みを持つ石がある。

 ああ、なるほど。

 岩にハマってたのが、風化して石ころだけ残ったのか。

 遺跡は残っていなかったけど、遺跡核だけ残ってたのね。


 よっと、これで任務完了っと!

 遺跡核が砕けたとたんに、さっき感じていた睡魔と口喝が嘘のように引いていく。

 ・・・・・・え?

 なになになに!?

 こわっ!

 

 どうした俺の身体!?

 おかしい、なに? 何だったのさっきまでのは?

 あり得ないよ!

 

 先ほどと違い、倦怠感すら感じない口喝どころか清流を飲み干したかのような爽快感を感じている。

 何より、こんな状況になったことへの考察が、自分の中で始まっていた。

 さっきと違い、まるで生まれ変わったかのような感覚に陥る。

 そのことが、何より自分を混乱させる。

 

 遺跡って、なんなんだ?

 俺って・・・・・・何者?

 いや、俺の身体の本来の持主、斉藤達夫って何者だったんだ?

 理解できない。


 呆然と立ち尽くす俺の耳に、明らかに集団の足音が入ってくる。

 あっ! 魔法使い!!

 あまりのことで、忘れていた存在を思い出す。

 あの狂気の集団に見つかれば、恐らく俺の命はないだろう。

 何より、今みたいな状況で戦いたくはない。

 頭が真っ白になったりしたら、以前みたいな暴走もあり得る。

 今は、逃げるしかない。


 足音と反対に走り出す。

 あっという間に、足音は遠くに消えていく。

 まるで、魔力を発動している時のようだ。

 ・・・・・・いや、ようだ、じゃなくって発動してるな、これ。

 ん? ってことは、もしかしてさっきの眠気やらのどの渇きは、魔力が切れてただけ?

 

 いやいや、だったら遺跡を壊したとき治ったのは?

 あっ! そう言えば・・・・・・。

 初めて遺跡というものに触れた時、キツネが何か言ってたような・・・・・・?

 たしか、高濃度の魔力がどうの? とか、言ってたな。

 ・・・・・・。

 

 おいおい、嘘だろ?

 ってことは、なにか?

 俺が魔力を取り込んでたから、遺跡は壊れてた?

 そう言えば、前にヴィマーナの時もぶっ倒れたけど、あれも魔力切れ?

 待て待て待て、魔力が切れたらあんな気持ち悪い状態に、これからもなるってことか?

 いや、仕事は続けるから遺跡には事欠かないけどさ。

 仕事続けると、魔力切れの可能性も出てくるってこと?


 うわぁ~、無いわぁ~。


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