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48話

「キツネ―! キツネ―!」

「何やねん、騒々しい」

 無事に逃走した俺は、いつも気にかけてくれる神様に一番に報告したいことがあった。

「俺っ! 俺、魔法が使えるようになったんだよ!!」

「何やて!!! 砂漠に落とした針を見つけたみたいなもんやで!!!」

 いやー、驚きすぎじゃない? しかも、すっごく失礼な言葉に聞こえたぞ?

「いやいや、本当なんだって。魔法が本当に使えたんだ! 俺にも信仰心が芽生えたんだよ!」

 うわー、何その疑わしい目。俺だって人並みに感謝する心ぐらい持ってるよ。

 なんやかんや言って、一番世話になってるのは人より神様だしね。

「兎に角見てくれよ! 俺が使う魔法をさ!!」

 

 自分の中に小さな熱を、体中に広げ、その熱が手のひらから噴き出るイメージを加える。

 そしてその熱を手の中で形成する。

 再び、俺の手の中に刀が顕現する。

「どう!! やっと俺もこの世界の住人になれたんだよ!」

「・・・・・・スンスン・・・・・・?」

 首を傾げるキツネに詰め寄る。

「なあ! どうだよこれ!」

 釈然としない俺の方を見ずに、キツネはあらぬ方向に声をかける。

「・・・・・・###、いるかぁ~」

「ハイハイ、いますよっと」

 キツネが小さな男の子を呼び出す。

 俺を鍛えてくれた神様の片割れだ。


「どうやった? 信仰の香りした?」

「いや、全然」

「ふぇ?」

 お新香の香り? そんな上等なものは口にしたことないけどな?

「いや、誰が漬物の話してん!? 信仰な、神様を敬う気持ち!」

 ああ、信仰ね。んで? 香りって?


「いいか? 魔法は信仰の賜物。魔法ある所に神様あり、それがこの世界の律や。その信仰って、ワシらには匂いとして感じんねん。でもな、キミからはそれが一っっ切匂わへん」

 え? えっと、つまり?

「ソレ、魔法ちゃうな!」

 なんだってーーーーーーー!!!!!!!

「未だにキミには、ワシらを敬ったり、感謝する心が備わって無い言うことやな」

 わざとらしく涙をぬぐう仕草をするキツネ。


「嘘だ、だって・・・・・・これ! これは!?」

「うーん、あの女神さまの世界でもソレみたいな魔法は確認できてないから、魔法じゃないとは一概に言い切れないけどね? この世界の定義じゃ・・・・・・魔法じゃないかな」

 二柱揃って、否定された。

 何なの? 何なの、この世界!!

「いや、世界否定してもね」

「せやな、寧ろ否定されとるんは・・・・・・」


 こうして、めでたく俺の借金は半額が消失したかに思えた。

 けど、実際は・・・・・・。



「キミ、アホちゃう?」

「哲夫君、また記録を更新してしまったね」

 後日、瑠璃男さんの部屋を訪れたとき、それは発覚した。

 またしても、服がお亡くなりになった。

 マジカル・マッスル・スーツは、虫たちとの乱戦の時に破損していた。

 それが引き金になり、勢いよく袖を通したとき・・・・・・完全に服とは言えなくなってしまった。


 舞い散る布切れ、下着姿の俺。

 男しかいない空間で、俺は何でこんな姿をしているんだろうか?

 こんな時、何をしゃべればいい?

 思いを巡らせて、瑠璃男さんとキツネの言葉を思い出す。

 ああ、そうか。

 ジャンプしながら、脚を折りたたんで落下の勢いのまま、頭を地面にこすりつける。

 そして、はっきりとした口調で一言。

「借金をさせてください!!」

 俺の借金は、総額的には少なくなった。

 ・・・・・・200万ほど、だけど。

 い、いや、ポジティブに考えよう! 一回で200万も減ったんだよ、高効率じゃないか。

 そうだよ、これを続ければいつか完済する日も・・・・・・来るのかなぁ~。


◇ ◇ ◇


 哲夫が帰った部屋に明かりがともる。

 部屋の主である葛西瑠璃男も、今はこの部屋にはいない。

 キツネが応接用の机にチョコンと座っているだけである。

「そろそろ、話を聞かせてもらえますやろか?」

 虚空に向かって、キツネが言葉を投げる。

「いやぁ~、君たちは本当に愉快だよね。そうは思わないかい?」

「・・・・・・」

 軽薄そうな笑顔を着飾った男と、顔が隠れるほどの長い髪を蓄えた女が何もない空間から躍り出る。

 哲夫が悪戯の神と山の女神と呼ぶ二柱が、そこにはいた。

「で? 説明。してくれるんやろな!?」

「説明? 何を?」

「なんで小僧に、あんな祝福を与えたのか。とかな」

 キツネの目に厳しい追及の光が灯る。

 

「何故って、ボクはその方が面白そうだったからとしか。ね?」

 言葉とは違い、とても慈愛に満ちた目をキツネに向ける悪戯の神。

「だからって、権能の一部を分け与えますか? 人間に!!」

 耐えきれなくなったキツネの怒声が響く。


「面白くなる可能性があれば、十分な理由なんだけどな」

 キツネの目線を受けても、どこ吹く風とまともに取りあわない。

 そんな二柱を横目に、山の女神が口を開く。

「あの子の渦巻く感情に、形を与えた。では、ダメ?」

「それが理由でも、あんな権能を!!」

「嘘は良くないねぇ~。頭のいいキミのことだ、『どう取り込むか』に思考を向けてるよね?」

 悪戯の神は、心底面白そうな笑顔をキツネに向ける。

 

 その言葉に、一瞬口角を上げるキツネ。

 しかし、すぐに職責にある顔に戻る。

「それはこちら側の話。今は彼の話です」

「あの子の名前、鍛冶師なんでしょ? この娘の水に対して僕の火。両方必要でしょ? ボクとしてはもう少し見てたいんだよね、彼のことをさ」

 鍛冶をするには、必要不可欠な2つの要素。

 それを彼らは、分け与えたという。

 キツネは思う。では、火にくべる鉱石は何をくべるのか?

「決まってるだろ? 人の持つ神にさえ届きうる最大の武器さ」

「それは・・・・・・っ! クソが!!」

「そう、だから君たちの権能では彼女に届かない」

「どこでそれを!?」

「犠牲を払ったからね、娘と息子を」


「そう・・・・・・でしたか」

 キツネは二柱に首を垂れる。

 素直な礼のつもりだった。

 自分の主人が引き起こしたことへの、謝罪と共に。


次回投稿は12/04を予定しております。

では、次回投稿で。

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