第9章 読む前から選別するようになった
横道では、
長い作品が好きなのに、マンネリは嫌だ。
という、我ながら面倒な話をした。
そして本編に戻ると。
長年なろうを読み続けて変わったことが、もう一つある。
昔の私は。
とりあえず読んでいた。
タイトルを見る。
あらすじを見る。
「面白そうだな」
読む。
ある程度進んでから、
「これは好きだ」
「これはちょっと違うな」
と判断する。
ごく普通の読み方である。
ところが今は。
読む前から、かなり選別している。
タイトル。
あらすじ。
タグ。
話数。
そして最初の数話。
そこまで見れば、
「これは私の好きなやつだな」
「これはたぶん重くなるな」
「これは途中でしんどくなりそうだな」
と、なんとなく分かるようになってしまった。
もちろん。
百発百中ではない。
「これは絶対好きだ」
と思った作品が途中から合わなくなることもある。
逆に。
最初は微妙かなと思っていたのに、読んでみたら大当たりだったこともある。
未来が見えるわけではない。
ただ。
十数年読んできた結果。
自分が何を好きで、何を苦手としているのか。
その傾向だけは、かなり分かるようになった。
例えば。
あらすじに、
「裏切られた主人公が――」
とある。
昔なら、
「どうやって逆転するんだろう」
と思った。
今はまず、
「この裏切り、長く引っ張るやつかな」
を気にする。
その先に、
「すぐ見返す」
「新天地で成功する」
という雰囲気が見える。
よし。
読んでみよう。
一方。
「絶望の果てに――」
「信じていた仲間にも見放され――」
「復讐を誓い――」
などと続く。
……ちょっと待とう。
面白そうではある。
でも。
今の私に耐えられるやつだろうか。
作品の面白さより先に、自分の耐久力を考えている。
逆に。
「最初から最強」
「勘違い」
「スローライフ」
「周囲からなぜか評価されていく」
「配信したら大騒ぎ」
その辺の匂いがする。
すると。
「はいはい、好きなやつね」
となる。
まだ一話も読んでいない。
なのに。
かなり前向きである。
完全にあらすじとタグに飼い慣らされている。
タイトルもそうだ。
昔なら。
作品名は作品名だった。
今は。
タイトルを見ただけで、ある程度内容まで予想する。
「追放された○○ですが――」
ああ、追放ものね。
「実は最強――」
はいはい、隠れ最強。
「のんびり――」
スローライフかな。
「配信――」
現代ダンジョン系かもしれない。
「転生したら――」
はい、転生。
もちろん。
タイトルだけでは分からない作品も多い。
それでも。
長いタイトルの中に、
主人公の立場。
能力。
導入。
場合によっては、この先どうなるかまで書いてある作品を見ると。
こちらも、
読む前にかなりの情報を受け取っている。
昔なら、
「タイトルでそこまで説明するの?」
と思ったかもしれない。
今では。
便利である。
タイトルを見る。
あらすじを見る。
タグを見る。
話数を見る。
「よし、行こう」
となる。
もはや作品選びというより、
パッケージの成分表示を確認しているようなもの
である。
甘い。
辛い。
苦い。
重い。
軽い。
長い。
短い。
今の気分に合うものを選ぶ。
そして。
この「今の気分に合うか」という感覚も、昔より強くなった。
面白そうな作品だからといって。
いつでも読みたいわけではない。
今日は重い話でもいける。
今日は無理。
今日は頭を使いたくない。
今日はただ主人公が無双しているところを読みたい。
同じ私でも、その時々で読みたいものは違う。
長年読んだ結果。
作品だけではなく、
自分の状態まで見ながら選ぶ
ようになった。
さらに私は。
作品そのものだけではなく、
ストレスの種類
まで何となく見るようになった。
主人公が苦労する。
これは別にいい。
強敵が出る。
これもいい。
多少負ける。
それも作品によってはいい。
でも。
長い誤解。
仲間割れ。
洗脳。
裏切り。
何十話も続く鬱展開。
この辺の気配がすると。
少し慎重になる。
前にも書いた通り。
私はもう、自分がその辺に弱いことを知っている。
だったら。
無理して読んで疲れなくてもいい。
ここで。
昔と今の一番大きな違いに気づく。
昔の私は。
作品を読みながら、
「この作品は面白いか」
を判断していた。
今は。
それだけではない。
「この作品は、今の私に合うか」
を判断している。
この違いは結構大きい。
面白い作品。
評価の高い作品。
人気の作品。
それでも。
自分に合わないことはある。
逆に。
典型的なテンプレ作品でも。
私にはものすごく楽しいことがある。
そこでようやく。
「作品の良し悪し」と、
「自分との相性」は、
別の話なのだと分かるようになった。
この考え方ができるようになると。
途中で読むのをやめることへの抵抗も減った。
昔は。
「ここまで読んだんだから」
「評判がいいんだから」
「もう少し進めば面白くなるかも」
と粘ることもあった。
今は。
「今の私には合わなかった」
で終われる。
また読みたくなったら戻ればいい。
戻らなければ、それまでである。
その結果。
私は以前より、
読む作品を決めるのも早くなったし、離れるのも早くなった。
少し冷たい気もする。
作者からすれば、
「もう少し読んでくれれば面白くなるのに!」
という作品もあるだろう。
たぶん。
私はそういう作品を、かなり取りこぼしている。
そこは間違いないと思う。
でも。
読む時間には限りがある。
読みたい作品は、いくらでもある。
そうなると。
どうしても、
自分に合いそうなものから読んでしまう。
これは。
長くなろうを読んできたことで身についた、
一種の経験値なのかもしれない。
最初の頃は。
何が好きなのか、自分でもよく分かっていなかった。
だから色々読む。
面白い。
合わない。
途中でやめる。
大当たりする。
外れる。
それを何度も繰り返す。
その結果。
少しずつ、
自分専用のフィルター
みたいなものが出来上がっていく。
タイトル。
あらすじ。
タグ。
話数。
最初の数話。
そこを通した時点で、
「これは行けそう」
「これは今日はやめておこう」
となる。
十数年読んだ結果。
私は作品の読み方だけではなく。
作品を読む前の選び方まで変わった。
そして。
ここまで来ると。
さすがに一度、自分でも整理したくなってくる。
私は何を見て、
「これは好きそう」
と思っているのか。
何を見て、
「これはしんどそう」
と思っているのか。
その判断基準になっている、
今の私の好みとは何なのか。
次は。
十数年読んできた末に。
結局、私は何が好きなのか。
一度まとめてみようと思う。




