第33話 恋人になる覚悟を決めた日、私は幼馴染へ初めて自分から告白しました
日曜日の朝、午前八時十四分。
私は自室の机へ向かい、開いたままのノートをしばらく見つめていた。
カーテン越しに差し込む朝の光は穏やかで、昨日まで胸の中へ張りついていた重さを少しだけ薄めてくれている。窓の外では、近所の家から掃除機の音が聞こえ、遠くでは犬の鳴き声もした。何でもない休日の朝なのに、私の中だけが昨日までとはまるで違っていた。
机の上のノートには、以前に書き込んだ言葉が残っている。
『誰の恋人になる未来を失う方が怖いか』
その下には、昨日の夜にようやく書いた名前。
『春斗』
私は、その文字を何度も見た。
消したくならない。
言い訳もしたくない。
竹下くんを振った直後だから、春斗へ気持ちが傾いただけ。
幼馴染だから安心するだけ。
失いたくないから好きだと思い込んでいるだけ。
そんなふうに、自分の気持ちを逃がす言葉を探そうと思えばいくらでも探せた。
でも。
もう、そうしたくなかった。
昨日、水戸駅で竹下くんと別れたあと。
私は泣いた。
大切な恋が終わったことが苦しかった。
竹下くんを傷つけたことが申し訳なかった。
好きだった人に「何が足りなかった」と聞かれ、それに対して何も足りなかったわけではないとしか言えなかったことも辛かった。
それでも。
一人になった瞬間。
私が最初に会いたいと思ったのは春斗だった。
誰かに慰めてほしかったからではない。
幼馴染だからでもない。
春斗に会いたかった。
春斗の顔を見たかった。
春斗の声を聞きたかった。
そして。
春斗に抱き締められたとき。
私は逃げなかった。
むしろ。
もっとその近くにいたいと思った。
昨日の夜。
それを何度も思い返した。
竹下くんとの恋を終わらせた悲しさと、春斗に選ばれたいという気持ちは、同じ場所に同時に存在していた。
どちらかが偽物なのではない。
竹下くんを本気で好きだったから悲しい。
春斗を本気で好きになったから会いたい。
それだけだった。
私はペンを持ち、ノートの新しい行へゆっくり書く。
『私は春斗を好き。恋人になりたい』
書き終えた瞬間。
心臓が大きく鳴った。
自分の字なのに、目で見ると恥ずかしい。
でも。
嫌ではない。
私は何度かその文章を読み返したあと、ノートを閉じた。
「……うん」
小さく呟く。
答えは。
もう出ている。
今日は。
誰かに相談してから決めるのではない。
愛ちゃんに聞かない。
母にも聞かない。
春斗の母にも、もちろん聞かない。
竹下くんのことを理由にも使わない。
私が。
自分で。
春斗と付き合いたい。
その気持ちを伝える。
私はスマートフォンを手に取った。
春斗とのトーク画面を開く。
昨日の最後のやり取りが残っている。
『家着いた』
『俺も』
『本読む?』
『読む』
『感想まだ』
『分かってる』
『おやすみ』
『おやすみ』
それだけ。
昨日。
改札の前で。
春斗は言った。
『無限には待たない』
少し強い言い方。
でも。
あれは。
春斗がちゃんと自分の気持ちを私へ出してくれた言葉だった。
待ってくれる。
でも、何も言わずにずっと待つわけではない。
恋人になりたい。
選ばれたい。
そう言ってくれた。
だったら。
今度は私が言う。
文字を打つ。
『春斗』
送信。
既読。
早い。
すぐに返事。
『何』
私は一度、深く息を吸う。
『今日会える?』
送る。
数秒。
『会える』
続けて。
『何時』
私は迷わなかった。
『今』
送信。
既読。
少し間。
『今?』
春斗が戸惑っている。
珍しい。
『うん』
『何かあった?』
『ある』
『何』
そこまで読んで。
私は少し笑った。
春斗。
昔から。
必要なことはすぐ聞く。
でも。
今日は。
会って言いたい。
『会ってから』
送信。
少し待つ。
『分かった』
それから。
『十分快』
「早っ」
思わず声が出た。
春斗の家からなら。
確かに十分快。
でも。
早すぎる。
『急がなくていい』
『無理』
『何で』
『真理から今会いたいって言われた』
胸が鳴る。
続く。
『大事だから』
また。
その言葉。
春斗。
本当に最近。
ずるい。
「もう……」
頬が熱くなる。
でも。
今日は逃げない。
私は急いで身支度を始めた。
◇
午前八時二十七分。
私は家を出た。
日曜日の住宅街は静かだった。
平日の朝なら通勤や通学の車や自転車が行き交う時間なのに、今日は人影も少なく、空気まで少しゆっくりしている。近所の庭では洗濯物を干している人がいて、どこかの家からテレビの音が微かに漏れていた。
待ち合わせ場所は決めていない。
でも。
何となく分かった。
私と春斗なら。
きっと。
昔から何度も使った小さな公園。
小学生の頃。
放課後。
休みの日。
特別な約束なんてしなくても自然と集まった場所。
私はその公園へ向かう。
そして。
角を曲がった瞬間。
春斗がいた。
「早い」
思わず言う。
「真理も」
春斗は少し息が上がっている。
黒いパーカー。
ジーンズ。
休日の春斗。
学校で見る制服姿とは違う。
昔から見慣れているはずなのに。
今は。
少し格好よく見える。
「走った?」
「少し」
「何で」
「待たせたくなかった」
また。
そういうことを言う。
胸が鳴る。
「真理」
「何?」
「今日」
春斗は私の顔をじっと見る。
「何かある?」
鋭い。
やっぱり。
分かる。
「ある」
「悪いこと?」
「違う」
「竹下?」
胸が少し痛む。
「違う」
「じゃあ」
春斗の表情がほんの少し変わる。
期待。
怖さ。
両方。
「俺?」
聞かれる。
私は。
ちゃんと頷く。
「うん」
春斗が一瞬黙る。
でも。
何も言わない。
私が話すのを待つ。
「公園入る?」
「うん」
二人で。
小さな公園へ入った。
◇
朝の公園には誰もいなかった。
ブランコ。
滑り台。
砂場。
古いベンチ。
小学生の頃からほとんど変わっていない。
風が吹くたび、ブランコの鎖が微かに鳴る。
私たちは。
並んでベンチへ座った。
距離。
少し近い。
でも。
まだ触れない。
春斗がこちらを見る。
「話」
「うん」
「聞く」
心臓が速い。
昨日。
竹下くんから告白されたときは。
答えを返す側だった。
今日は違う。
私が伝える。
自分から。
春斗へ。
「春斗」
「何」
声。
少し震えた。
「私」
続かない。
喉。
急に乾く。
「うん」
春斗は。
急かさない。
でも。
目を逸らさない。
私は一度深く息を吸った。
「竹下くんのこと」
「うん」
「まだ」
言葉を選ぶ。
「全部忘れたわけじゃない」
春斗の表情が。
ほんの少し固くなる。
「うん」
「思い出す」
「うん」
「昨日も」
「うん」
「楽しかったこと思い出した」
春斗は黙っている。
「それで」
私は少しだけ視線を落とした。
「泣いた」
「そっか」
春斗は。
それだけ。
否定しない。
嫌な顔もしない。
私は続ける。
「でも」
「うん」
「春斗と帰ったとき」
「うん」
「手繋いで」
「うん」
「嬉しかった」
春斗の目が少し揺れる。
「昨日の夜」
顔が熱い。
「春斗のこと考えた」
「うん」
「今日も」
「うん」
「朝起きて」
声が少し震える。
「最初に会いたいって思ったの、春斗だった」
春斗の目が大きくなる。
「真理」
「まだある」
「うん」
春斗が黙る。
私は。
ここで止めない。
「竹下くんを好きだったこと」
「うん」
「大事にしたい」
「うん」
「でも」
私は膝の上で、自分の手を強く握る。
「今」
春斗を見る。
「恋人になりたいって思ってるのは」
心臓。
速い。
「春斗」
言った。
春斗の動きが止まる。
「真理」
「何?」
「それ」
声が少し掠れている。
「昨日も聞いた」
「うん」
「でも」
私は続ける。
「昨日は」
竹下くんとの別れ。
涙。
春斗への安心。
全部が混ざっていた。
「今日は」
「うん」
「ちゃんと考えた」
ノートへ書いた。
一人で。
誰にも聞かず。
「誰かに言われたからじゃない」
「うん」
「竹下くんを振ったからでもない」
「うん」
「春斗が待ってるからでもない」
「うん」
「私が」
胸が苦しい。
でも。
嬉しい。
「春斗と付き合いたい」
春斗の目に。
少し涙が滲む。
しばらく。
何も言わない。
「春斗?」
「待って」
「何?」
春斗が片手で顔を覆う。
「今」
「うん」
「無理」
「何が」
「嬉しい」
声。
少し震えている。
「そんなに?」
「そんなに」
春斗が手を下ろす。
目。
少し赤い。
「泣く?」
「泣かない」
「昨日も言った」
「今日は違う」
「どう違うの」
「嬉しすぎる」
私の顔も。
熱い。
少し。
笑ってしまう。
「じゃあ」
春斗が身体を少しこちらへ向ける。
「俺から言っていい?」
胸が鳴る。
「何を?」
「ずっと言いたかったやつ」
分かる。
私は。
頷く。
「うん」
春斗は。
私を見る。
真っ直ぐ。
「真理」
「うん」
「俺」
一度息を吸う。
「小さい頃から」
「うん」
「ずっと」
声。
静か。
でも。
震えている。
「真理が好き」
胸が。
大きく鳴る。
「幼馴染だからじゃない」
「うん」
「家が近いからでも」
「うん」
「毎日一緒にいたからでもない」
「うん」
「真理だから好き」
涙が。
少し。
出る。
「俺」
春斗は続ける。
「真理の隣にいたい」
「うん」
「幼馴染じゃなく」
「うん」
「恋人として」
春斗の手が。
少し動く。
でも。
まだ触れない。
「俺と付き合ってください」
正式な告白。
春斗から。
初めて。
言葉になった。
私は。
泣きながら。
笑った。
「はい」
答える。
春斗の表情が。
崩れる。
本当に。
安心したように。
「はい?」
「うん」
「付き合う?」
「うん」
「俺と?」
「春斗と」
「本当に?」
「何回聞くの」
「何年待ったと思ってる」
「知らない」
「かなり」
また。
その言葉。
私は笑う。
春斗も。
笑う。
でも。
次の瞬間。
春斗が。
顔を逸らす。
「真理」
「何?」
「俺たち」
「うん」
「恋人?」
聞かれ。
私も。
急に。
恥ずかしくなった。
「……うん」
「本当に?」
「さっきからそればっかり」
「確認」
「恋人」
言った。
自分で。
すごい。
重い。
嬉しい。
春斗が。
私の彼氏。
私は。
春斗の彼女。
「春斗」
「何」
「彼氏?」
「うん」
春斗も。
顔が赤い。
「真理」
「何?」
「彼女?」
「うん」
二人。
沈黙。
何も言えない。
さっきまで。
あれだけ真剣な話をしていたのに。
正式に恋人になった瞬間。
急に。
何を話せばいいのか分からなくなった。
「……何これ」
私が言う。
「知らない」
「さっきまで普通だった」
「恋人になったから」
「急に?」
「たぶん」
春斗の顔。
赤い。
私も。
絶対赤い。
おかしくなって。
二人で笑った。
◇
少し。
沈黙。
風。
公園。
遠くで。
自転車の音。
日曜日の朝。
私は。
まだ信じられない。
春斗と。
付き合った。
あの春斗。
毎朝。
隣にいて。
本を読んで。
私の恋愛相談を聞いていた。
その春斗が。
彼氏。
「真理」
春斗が呼ぶ。
「何?」
「手」
また。
春斗。
私は。
自分の右手を見る。
「恋人だから?」
「恋人だから」
「昨日も繋いだ」
「今日は意味違う」
胸が鳴る。
確かに。
恋人として。
初めて。
私は。
手を差し出す。
春斗も。
手を重ねる。
指。
絡まる。
昨日までより。
少しだけ。
強い。
「春斗」
「何?」
「緊張する」
「俺も」
「恋人なのに?」
「なったばかり」
「そっか」
二人で。
笑う。
手。
温かい。
昨日も。
同じ手。
でも。
意味が違う。
恋人の手。
それだけで。
心臓が。
おかしい。
「真理」
「何?」
「もう一つ」
「何?」
春斗が。
少し。
迷う。
「抱き締めていい?」
胸が。
鳴る。
昨日。
初めて抱き締められた。
泣いていた。
今日は。
違う。
恋人として。
「……うん」
答える。
春斗が。
ゆっくり近づく。
腕。
背中へ。
私は。
今度は。
自分から。
春斗の服を掴んだ。
抱き締め返す。
春斗の身体が。
一瞬。
固まる。
「真理」
「何?」
「今」
「うん」
「抱き締め返した」
「恋人だから」
自分で言って。
また。
顔が熱い。
春斗の腕が。
少しだけ。
強くなる。
「嬉しい」
「うん」
「かなり」
「二回言う?」
「大事だから」
いつもの。
でも。
今は。
恋人として。
聞く。
胸が。
温かい。
◇
しばらくして。
離れる。
でも。
近い。
顔。
思ったより。
近い。
春斗の目。
私を見る。
少し。
空気が変わる。
胸。
強く鳴る。
春斗の視線。
一瞬。
私の唇へ。
落ちた。
分かった。
私も。
動けなくなる。
初キス。
頭に。
浮かぶ。
春斗も。
たぶん。
考えている。
「真理」
「何?」
声。
少し低い。
「キス」
直接。
言った。
身体中。
熱くなる。
「……」
「していい?」
聞かれた。
逃げない。
でも。
怖い。
恋人になった。
だから。
いつか。
する。
でも。
今。
竹下くんと別れて。
一日。
春斗と付き合って。
十分。
「まだ」
私は答えた。
春斗の目が。
少し残念そうになる。
「嫌?」
「嫌じゃない」
「じゃあ」
「まだ」
私は。
春斗の胸へ。
少しだけ。
額をつける。
「今日付き合ったばっかりだから」
「うん」
「もう少し」
「うん」
「恋人に慣れてから」
春斗は。
小さく息を吐く。
「分かった」
「怒る?」
「かなりしたい」
「答えになってない」
「でも待つ」
「うん」
「無限には待たない」
「また?」
「キスは早め」
「交渉しないで」
「する」
春斗が。
笑う。
私も。
笑う。
これでいい。
初キスは。
まだ。
その日は。
来る。
たぶん。
すぐ。
◇
午前九時二十分。
私たちは。
公園を出た。
手は。
繋いだまま。
恋人として。
初めて。
並んで歩く。
「どこ行く?」
私が聞く。
「決めてない」
「せっかく恋人になったのに?」
「真理が急に呼んだ」
「そうだった」
「朝飯食べた?」
「食べた」
「俺まだ」
「何で」
「急いで出た」
「馬鹿」
「真理が今って」
「十分快って言ったの春斗」
「待てなかった」
胸が。
少し。
温かくなる。
「じゃあ」
「うん」
「コンビニ?」
「初デートがコンビニ?」
春斗が聞く。
私は止まる。
「これ」
「何?」
「デート?」
「恋人二人で出かけるなら」
「デート」
口にする。
恥ずかしい。
「春斗」
「何」
「初デート」
「うん」
「コンビニ嫌」
「俺も」
二人で。
笑う。
「じゃあ」
春斗が考える。
「駅前」
「水戸?」
「今日は近く」
「何ある?」
「喫茶店」
「知ってる?」
「木下書房の店主に教えてもらった」
「また?」
「うん」
「じゃあ行く」
恋人になって。
最初のデート。
派手じゃない。
遠くでもない。
ただ。
近くの喫茶店。
それでも。
嬉しい。
◇
歩いている途中。
スマートフォンが震えた。
見る。
愛ちゃん。
『生きてる?』
私は。
画面を見て。
少し笑う。
「愛?」
春斗が聞く。
「うん」
「何て?」
「生きてるって」
「何で」
「昨日から心配してる」
私は。
返信。
『生きてる』
少し。
迷う。
でも。
今。
言いたい。
『春斗と付き合った』
送る。
既読。
一秒。
二秒。
電話。
「早っ」
愛ちゃん。
私は出ない。
『電話しないで』
送る。
すぐ。
『は!?!?!?!?』
大量の記号。
春斗へ見せる。
「愛らしい」
「でしょ」
次。
『いつ!?』
『今』
『今!?』
『今』
『正式に!?』
『うん』
『告白どっち!?』
私は。
少し考え。
『両方』
送る。
『??????』
思わず笑う。
「何」
春斗。
「愛ちゃん混乱してる」
「そりゃそう」
『後で全部話して』
『うん』
『おめでとう』
最後。
短い。
胸が。
温かい。
『ありがとう』
送る。
画面を閉じる。
「春斗」
「何?」
「おめでとうって」
「うん」
「私たち」
「うん」
春斗が。
少し笑う。
「付き合ったから」
その言葉。
何度聞いても。
嬉しい。
◇
喫茶店へ向かう道。
春斗と手を繋ぐ。
道の向こうから。
家族連れ。
自転車。
知らない人。
誰も。
私たちのことを知らない。
でも。
私たちだけは。
知っている。
今日。
関係が変わった。
幼馴染から。
恋人へ。
ずっと近くにいた。
近すぎて。
気づかなかった。
竹下くんを好きになって。
初めて。
春斗が男の子だと知った。
嫉妬した。
怖くなった。
離れたくないと思った。
触れたいと思った。
そして。
好きだと分かった。
遠回りした。
たくさん傷つけた。
竹下くんも。
春斗も。
石井さんも。
自分も。
でも。
今日。
私は。
自分で選んだ。
春斗の隣。
恋人として。
私は。
少しだけ。
繋いだ手を強く握った。
春斗が。
こちらを見る。
「何?」
「何でもない」
「またそれ」
「今日はいいの」
「何で」
私は。
少しだけ。
笑う。
「彼女だから」
春斗の足が。
一瞬。
止まりかけた。
「真理」
「何?」
「それ」
「うん」
「何回でも言って」
「嫌」
「何で」
「恥ずかしい」
「俺は聞きたい」
「また今度」
「今日」
「また今度」
「真理」
「春斗」
名前。
呼び合う。
それだけで。
今は。
楽しかった。
そして。
私はまだ知らなかった。
恋人になったから。
全部が簡単になるわけではないことを。
むしろ。
幼馴染だった時間が長すぎる私たちは。
ここから。
手を繋ぐだけで照れ。
名前を呼ぶだけで意識し。
家族の前で距離感を失い。
学校では噂に追われ。
竹下くんや石井さんとも。
もう一度向き合うことになる。
それでも。
今だけは。
恋人になれた嬉しさを。
何も考えず。
抱えていたかった。
私は。
春斗の手を。
離さなかった。




