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第六夜


「止んだー! 止みましたよ、たからさんっ!」

 

 ミヤビが叫び、半壊した壁の隙間から外へと身を乗り出した。

 そこには、つい先刻までの地獄が嘘のような、透き通った紺碧の空が広がっていた。

 咆哮を上げていた風は凪ぎ、洗い流された大気は、宝石のように鋭い陽光を屋敷の奥まで突き刺している。

 遠くで山々の稜線が不気味なほど鮮やかにくっきりと浮かび上がり、濡れた木々が光を跳ね返して、世界全体が発光しているかのようだった。


「……ただ、被害も深刻だ」

「ボロッボロっすねぇ。まぁ日本家屋って大嵐に抵抗出来るほど強かねぇっすもんね」

 

 たからは、崩落した廊下の隙間から差し込む、残酷なまでに鮮やかな青空を見つめた。

 屋敷のあちこちから、きしむ音が聞こえる。それは死に体の獣があげる最後の呻きのようでもあった。

 

「……ミヤビ。君が劇薬を撒き散らしてくれたおかげで、彼らは死を、一時的とはいえ忘れることができた」

「おやおや、たからさん。急に褒めたらミヤビはびっくりしますよ。みやびっくり」

 

 ミヤビは埃を払うようにひらひらと手を振り、腰に手を当てた。

 その瞬間、奥から小さな皿が割れる音がした。それから小さな悲鳴と、子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

 たからは頷き、大広間の方へと視線を向けた。

 

「後は全員を連れてここを出る。……この屋敷という呪縛の外へな」

「みんなの目の前で言っちまいましたもんねぇ。男に二言はねぇよなぁ!」

「当然だ。……『最強面白コンテンツお前』を、ここで終わらせるわけにはいかないだろう?」

 

 ミヤビは一瞬、きょとんとした顔をした後、今日一番の毒を含んだ笑みを浮かべた。

 

「……いいっすねぇ。人の台詞を盗むなんて、悪趣味ですよ」

「君に教わったんだ。……幸い、備蓄庫の食料にはまだ余裕がある。嵐が去った今、焦って追い立てる必要はない」

 

 たからは、ゆっくりと腰を下ろした。

 

「あの子たちが、自分の足で『外へ行きたい』と答えるまで、ここで待とう。数時間か、あるいは数日か。彼らが居場所ではなく明日を選び取るまで、私は動かないつもりだ」

「一生、とか言ったらどうします?」

「それは困るな」

 

 ミヤビは毒づきながらも、たからの隣にどさりと座り込んだ。

 

「まぁ、いいでしょう。私も、あの子たちがどんな面して外の光を拝むのか、見届けてやりますよ。私、こう見えてハピエン厨なんですっ」

「見えないがな」

 

 二人は、どこまでも透き通った空を見上げた。

 嵐の後の静寂の中、屋敷の奥からは、子供たちのぎこちない、けれど途切れることのない話し声が、陽光に溶けるように響いていた。

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