紹介①
「いやぁ……嵐マジ収まらんのですが、どうしましょう……」
窓の外では、視界を白く染めるほどの豪雨が吹き荒れている。館が震えるほどの凄まじい嵐は、すでに数日間も続いていた。
「君を逃がすまいとしてるんだろうな」
「物理攻撃してきやがって……お陰様で拝殿やらお祈り部屋やらに近づけませんっ!」
「当然の報いだ」
たからは、天罰だとばかりにミヤビへ呆れた視線を向ける。
ふと見れば、最近仲間に加わった幼子――みのりが、ミヤビのことをじっと無言で見つめていた。
その視線はどこか観察的で、逃げ場がない。
「最近仲間にした幼女はずっっと見てくるしよぉ……元いた場所に帰ぇりな!」
「邪険にするな。……しかし、本当に困ったな」
一行は外へ出て助けを求める算段を立てていたが、この暴風雨では一歩も外に出られない。
頭を抱えて沈黙したたからの前で、ミヤビが名案を思いついたとばかりに人差し指を立てた。
「どうせ暇ですし、せっかくならルームツアーしませんか?」
「ルームツアー?」
「正確には『奉日本家全員大集合中大広間派閥ご紹介ツアー』です!」
「……ああ」
たからは懐から、大切に保管していたリストを取り出した。
紙面にはびっしりと名前が連なっている。
「……まだ全員とは会えてない……よな?」
「はぁい! 名前だけ出てきた子を含めても全員は登場してませんっ! キャラが多い? 新キャラ使い捨て群像劇だっつってんだろ甘えんな」
「使い捨てるな、大切にしろ」
たからは深い徒労感を滲ませ、指先でこめかみを強く押さえた。
「ここらでわーって紹介してサクッと処理したいです!」
「処理なんて言葉を使うな」
「まぁまぁ、嵐で閉じ込められてる今こそ、一気に把握するチャンスですよ」
たからは諦めたように溜息をつき、握りしめていたリストを丁寧にしまった。
どうせ外に出られないのなら、頭の中の整理だけでも済ませておかなければ。この先の混沌に飲み込まれるのは明白だ。
「分かった。この状況でじっとしていても気が滅入るだけだ。その『派閥』とやらを、一度整理しておくとしよう」
「お、いいですねぇその心意気! 行きましょう行きましょう」
「みのり、君はお留守番だ」
「話がややこしくなっからよぉ、じっとしとけよな!」
「わかった」
ベッドにみのりを座らせ、意気揚々と駆け出したミヤビの背を追い、たからは重い腰を上げた。
廊下に出ると、窓を叩く雨音がいっそう激しさを増して聞こえてきた。視界を遮る雨は、外界との繋がりを完全に断絶させている。
「外は嵐、中は地獄……。さあ、若々しい奉日本オールスターズのご開帳といきましょうか!」
ミヤビが勢いよく重厚な襖に手をかける。
二人は、多くの視線と気配が渦巻く「大広間」へと足を踏み入れた。




