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3話

少女エリシアを雇って三日。

店の裏で彼女に「昨日売れ残った高級肉のシチュー(実は彼女のためにわざわざ買った)」を食わせていると、店のドアが蹴破らんばかりの勢いで開いた。

「おい、店主! 出てこい!」

現れたのは、光り輝く白銀の鎧に身を包んだ騎士たち。

中央に立つのは、傲慢そうな笑みを浮かべた騎士団長らしき男だ。

「貴様が『クロガネ』か。不法所持の疑いがある。店内の在庫をすべて検品させてもらうぞ」

名目は検品だが、目が笑っていない。

彼らの視線は、店内の棚にある「格安品」ではなく、俺が奥に隠しているはずの「真の財宝」を探っている。

「……あいにく、うちはガラクタ屋だ。騎士様が欲しがるような立派な剣はないぜ?」

「黙れ、卑しい商人が。……ほう、これは?」

団長が手に取ったのは、俺が昨日、川べりでガキから銅貨1枚で買い取った「ボロボロのさや」だった。

名称: 聖域の守護鞘

価値: 測定不能

詳細: 伝説の聖剣を収めていた鞘。持っているだけであらゆる呪いを無効化し、自動回復リジェネを付与する。

「……ふん、薄汚いゴミだな。だが、軍用の予備として没収してやる。代金はこれだ」

団長が放り投げたのは、たったの銅貨5枚。

市場価格なら、王国の城が三つ建つレベルの宝を、ポテトチップス一袋分くらいの値段で持っていこうというわけだ。

「……いいのか? それ、ただのボロボロの鞘だぞ」

「はっ! 審美眼のない貴様にはゴミに見えるのだろうが、我ら選ばれし騎士には、微かな魔力を感じるのだ。これは『当たり』だ。貴様のような小市民には、銅貨5枚でも多すぎるくらいだな!」

騎士たちは「目利きに成功した」とばかりにゲラゲラと笑いながら、鞘を腰に差して店を出ていこうとする。

だが、彼らは知らない。

その鞘には、「正しい持ち主(聖剣の保持者)」以外が身につけると、装備者の全魔力を吸い尽くして急激に老け込ませるという強烈な呪いの副作用があることを。

「あ、待てよ。……返品は受け付けないからな」

俺が冷めた声で告げると、団長は振り返りもせず鼻で笑った。

「当たり前だ、愚か者め!」

直後。

店を出て数歩歩いたところで、団長の悲鳴が上がった。

「な……なんだ!? 体が……力が抜けて……!? 髪が、俺の髪が抜けていくッ!?」

若々しかった団長の顔が、一瞬でシワだらけの老人に変わっていく。

慌てて鞘を捨てようとするが、吸着の呪いで腰から外れない。

「助けてくれ! クロガネ! これを外してくれ!」

「悪いな。さっき言ったろ? 『返品不可』だって」

俺は店のカウンターに肘をつき、震える老人(元団長)を見下ろした。

その背後では、シチューを食べ終えたエリシアが、不思議そうにこちらを覗いている。

「あ、それと。その鞘、俺が売った時は『ただのゴミ』だったはずだ。勝手に呪われたのは、あんたの管理不足だ。……器に合わないものを持とうとするから、そうなるんだよ」

騎士団がパニックに陥り、団長を担いで逃げ帰るのを見送りながら、俺はふんと鼻を鳴らした。

さて、棚が一つ空いたな。

次はどんな「お宝」を並べてやろうか。

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