氏康は気持ち悪い。
お屋形様への報告も終わり、私は北条 長綱殿、北条 氏康の元を訪れ、明日にお屋形様との会談を行う事を伝えた。
氏康は心ここに在らずでニヤニヤしていて気持ち悪い、長綱殿に今の状態を尋ねると厠に行った後からおかしくなったとの事。
長綱はとても可憐な女神様に会ったと聞いているらしいのだが、それ以上の事は聞けていないそうだ。
今も氏康は女神様と会う事が出来て、鶴岡八幡様に感謝しますとにぶつぶつと言い始めた。
やっぱり、氏康は気持ち悪い!!
瀬名 勘十郎がいたので氏康と華との事を父親である瀬名 氏貞にすぐに伝えた事を褒めた。
勘十郎は私に褒められて喜んでいた。
情報が早かったお陰で私は氏康を揶揄う事が出来る。
長綱殿に氏康の事を尋ねた時も笑いを堪えるのが大変だった。
氏康を揶揄う為に声を掛けたが反応無し……
私の事は無視ですか?
しょうがないので氏康の事は無視して長綱殿に会談は明日になる事を伝えて、氏康に聞こえないように氏康の婚姻の事を伝えようとしたところ、氏康が私に気付き私の事を『お義兄さん』!!と叫びやがった。
誰がお義兄さんだっ!!
つい、私は叫んでしまった。
氏康は私に妹の華の事を聞き出そうと詰め寄って来たが、そこに葛山 氏広殿が勢い良く襖を開けて入室して来た。
氏広殿はそのまま氏康に、氏綱の兄上が認めれば華姫との婚姻が決まるぞ!!と話し出した。
氏広殿……その事は明日、お屋形様から氏康に伝える事に決まったはずなのですが…
私が氏広殿に抗議の目線を送ると、氏広殿はあっ!!と言う表情をしたが咳払いを一回して、間を取った後に私に謝罪をした。
氏広殿のうっかりが無ければ明日まで氏康を揶揄い続けようと思っていたのにな。
氏康は氏綱殿に華との婚姻を認めてもらう為に小田原に戻ると言い出したが、氏広殿がすでに風魔忍軍に頼んで氏綱殿に使者を出していると説得した。
私も氏康に華と一緒にいる時間を過ごして、華が氏康に安心して嫁いで行けるようにして欲しいと説得した。
長綱殿と氏康には武田家から三浦 氏員殿が戻って来るまで今川家に留まってもらう予定なので氏広殿は必死で説得し、私にもなんとかしろと目で訴え来たので仕方なく氏員殿に加勢した。
氏康も落ち着いて来たので氏康に明日の会談が終わったら華と会って話をしてもらう予定だと伝えたら、氏康はいきなりは無理、無理、無理と華姫に嫌われたく無いと騒いでいた。
本当に面倒くさい奴だな…
私が氏康と戯れている間に氏広殿と長綱殿は明日の事を話し合っていた。
後ほど氏広殿と長綱殿に今川家から朝比奈 泰能殿が出席して明日に向けての話し合いが行われる事になっている。
今日の内に今川家と北条家の意見を擦り合わせておき、明日は決まった事をお屋形様が述べる流れになる。
氏広殿が長綱殿に氏康と華の事を詳しく話しているのだろう。
長綱殿の笑い声が聞こえてくる。
ふと気付いたが氏康が部屋から出て行こうとしている。
首根っこを捕まえて問いただすと華に会いに行くつもりらしい。
氏康、私は明日に氏康と華の婚姻を発表するから会談の後に会ってもらうと言ったよね。
しかも、さっきまで会って話すのは無理、無理、無理と恥ずかしかって尻込みしていたくせに。
氏広殿から長綱殿への説明も済んだようで長綱殿が私に語りかけて来た。
私が武田家から正室を迎える予定である事を知り、北条家から正室を迎えて欲しかったと残念がっていた。
長綱殿は社交辞令とわかっていても嬉しい事を言ってくれる。
長綱殿は私に兄から見た妹の華はどのような人物かと尋ねて来たのでちょっと変わり者で自分が興味が無い物事には無関心で関わらず、興味がある物事にはとことん自分から関わる性格をしていると説明した。
そんな話をしていると襖が静かに開き、妹の華が失礼しますと一言発言してから部屋に入って来て、そのまま氏康の目の前まで進み、氏康ににこりと微笑んだ。
氏康は突然の華の登場でパニックになっている。
華の行動に免疫がある私も少し戸惑ってしまっている。
まさか、華が氏康を尋ねてやって来るとは思わなかった。
長綱殿はすぐにこの人物が華だと気付き華に話し掛けたのだが華は長綱殿に軽く会釈をして再び、氏康と向かい合いながら微笑みを浮かべている。
華は長綱殿に興味が無いようだが氏康の関係者と感じたのだろう、最低限の会釈をしたのだろう。
長綱殿に今は興味の対象の氏康がいるから長綱殿に会釈しかしないけど普段はちゃんと礼儀を重んじているし、常識もちゃんと持っていると華を擁護しておいた。
今は単に今の氏康と同じ状態になっていると告げたら長綱殿は納得してくれた。
私が華に話しかけたら、そこで華は私の存在に気づいたみたいで私に向かい、私にもついに王子様が迎えに来てくれました!!と興奮気味に語っていた。
うん……良かったね……
私は辛うじて言葉を発した。
最初はぎこちない華と氏康の2人だったけど次第に自然体になって来て2人の世界を造っている…
氏広殿と長綱殿はそんな2人を温かい目で眺めている。




