34話 路線変更
さて、余計なイベントも終わったところで動き出そう。リーラ様に会うために時間を潰していたのだった。
リーラ様に会うために………
そこまで思い出して、ふと考えが変わってきた。
そこにリントが話しかけてくる。
「どうしたんですかアキラさん?とりあえず、食べ物買ってきたらどうです?」
「あー………まあ飯はいいや。そんなに腹減りすぎてた訳でもないし」
「そうですか?……まぁ、結構時間経っちゃいましたし、それじゃあまたリーラ様のところに行ってみます?」
「………その事なんだけどさ、やっぱ今日じゃなくていいや」
「わかりました。じゃあ神殿に…………はい?」
「状況変わって特に用無くなっちゃったから、挨拶するにしても後でいいや」
さらっと答えた後に、リントの「ええぇぇ!?」という叫びが響く。
食器を片付けて戻ってきたフィックスとシャーレイは何事かと慌てて駆け寄ってきた。
「何だ何だ!?またイベントか!?」
「どうしたんだリント?らしくない声を上げて?」
二人の問いに代わりに答える。
「いや、用が無くなったからやっぱリーラ様と会うのは後回しでいいやって言っただけだよ。そんな驚くこと?」
「なっ……本気かお前!?何を考えているんだ!?」
シャーレイも予想外の反応をした。なぜそんなに驚く?
俺とフィックスで二人して首を傾げる。あ、フィックスは別に驚かないのね。
そう思っていると、フィックスが俺の言いたいことを言ってくれた。
「いや、用が無いなら行かなくていいじゃん。何がダメなんだ?」
「いやいや、相手はリーラ様、神様ですよ!?いくらなんでも神様との約束をすっぽかしちゃ失礼すぎるでしょう!!」
「そうだ!お前とルシャナ様との間のことは知らんが、他の神を蔑ろにしてはいけない!馬鹿かお前は!!」
ああ、そういうこと。確かに初対面でいきなり約束をすっぽかすのはひどいな。
「……でも、別に約束はしてないじゃん」
「「………え?」」
俺の一言に、俺を非難していた夫婦は急に勢いを止めた。
「いやさ、神殿での流れをよく思い出してみ?」
「え…?えぇと、アードックさんに事情を説明して……」
「うん。で、この時間は声を掛けられないから後にしてくれと言われて」
「それなら仕方ないとまた後で会いに来ると言って、そのまま出てき………あ」
「な?別に約束はしてないだろ」
俺の説明にフィックスも横でうんうんと頷いている。
夫婦は少し考えた後、今度は不安そうに喋り出した。
「い、いやでも、あの流れだったら普通アードックさんはリーラ様に報告すると思いますよ?…………普通しますよね?」
「あ、あぁ……リントが訪ねてきて、時間を潰しているとわかっているんだから、リーラ様は待っていると思うぞ?………たぶん」
「それはあるかも。でもさ、『後で』としか言ってないじゃん?」
「ま、まあ……」
「会いには行く。行くが……まだその時と場所の指定まではしていない……つまり、会いに行くのはいつでも、場所は別の町の神殿でも良いということ……」
「そ、そんな……つまり、その気になれば会うのは10年後、20年後ということも可能だと……?」
「さすが、わかってんじゃん」
使う側になると便利だなこの理論。言われた方はたまったもんじゃないが。
「まあさすがにそんなに後回しにはしないから安心しろ、次に暇ができたら行くから」
「いや、今が暇だろうに!」
シャーレイにツッコまれる。
「うるさいな、他の用ができたんだよ。そんなに気になるなら行ってきてもいいよ。俺は今日は行かないけど」
「そ、そこまでの用なのか……わかった、とりあえずリーラ様にお前は今日は来ないとだけ伝えてこよう。じゃ、じゃあリント、一緒に──」
「あ、リントは俺と一緒に来てもらうから。手伝ってほしいことがある」
「あ、はい。わかりました」
「何故だ!?」
またシャーレイからツッコミが入る。毎度毎度声張り上げて大変だなこの子。
「今言ったじゃん。リントの手伝いが必要だって。1人が寂しいならフィックスについてって貰えば?」
「俺は別にいーぜー」
「い、いや!フィックス殿が不満という訳ではないが!なぜわざわざ私とリントを引き離す!?大体リントもすんなり了承しすぎだろう!!」
「いやー……今はちょっと出来る限りアキラさんの力になりたいっていうか……」
「いつの間にそこまでの絆を!?」
ほんと元気に叫ぶなぁこの子。まあ別に引き離そうとしてる訳じゃないし、解決策を与えてやろう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……申し訳ありませんリーラ様……しかしたまにしかないリントと過ごす時間は何事にも替えがたく………」
「さっきからブツブツと……そんな申し訳ないなら行ってきちゃえばよかったのに」
「う、うるさい!お前は私にとってこの時間がどれだけ貴重が知らないだろう!!」
「あーハイハイ。神様より優先するくらいだからイチャイチャタイムはすっごい貴重ですよねー」
「うぐっ………!」
俺が提示した解決策は「諦めて帰る」。しばらく悩んだ末にシャーレイはこちらを選び、ひとまず今日はリントの家に帰ることにしたのだった。
なので今は歩いて帰路についている途中である。
「ところでアキラさん、僕は何を手伝えばいいんですか?」
「んー、まあリントに何かをしてもらうって訳じゃないから、とりあえず付き合ってくれよ」
「そうなんですか?」
「うん。お前なら大丈夫だって信じてるよ」
「何の話ですか?」
「フィオナの説得も頼むぞ」
「ほんとに何の話ですか!?」
こうして、段々何かを察して怖くなってきたらしいリントに質問責めされながら帰宅したのだった。




