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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
勇者くん 旅に出ようや
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33話 同行希望者

「テメエ、百歩譲ってこの二人に教えるのは良いとして、馬鹿みたいに大声で叫びやがって!」


「安心したまえアキラくん!ちゃんと結界で彼女達にしか聞こえないようにしてたから!」


「そういう気が使えるならもう少し俺に気を使え!」


「それとこれとは別さ!とりあえず僕は一旦逃げるよ!」



 二人が驚いている間に、言うだけ言ったアホ神は遠くへ飛んでいった。後で泣かす。



「あ、新しい勇者……?」


「今噂になってる、あの……!?」



 突拍子も無いことを言い出したはずのアホ神の言葉だったが、女の子達は意外にも全否定って感じではないみたいだ。

 ああ、そういえば『そういう人がいる』っていう事実は既に世界中に知られてるんだっけか…


 しかし、俺を見る二人の目は、半信半疑、いや7割方信じられないといった様子だった。そりゃそうだ。すぐ隣に前勇者がいるけど、見比べたら全然雰囲気違うだろうもん。


 と、ここでリントが慌ててフォローに入る。



「あ、あの人が言ったことは本当だよ。僕と決闘して勝ったのがこのアキラさん」


「あ、新しい勇者様……」


「すごい……」



 リントのフォローを聞いた途端、二人の視線は憧れの有名人を見るような目に変わった。

 リントが近付いてきて小声で話しかけてくる。



「すいません……ルシャナ様があれだけはっきり言ってしまったので、妄想や虚言と思われるよりはマシだろうと思って咄嗟にフォローしちゃいました」


「いや、確かにその方がマシだから助かったわ。でもその能力ヤバくね?洗脳じみてる」


「気軽に冗談も言えないのは困ってます………」



 リントと話しながら二人を見ていると、先程のキラキラした目から若干明度が落ちたのに気付いた。



「でも……思ったより普通の人ね」


「ごめんなさい、リント様と並ばれると、どうしても……」


「効果分かりやすすぎてちょっと嫌な気分だよダーナ様!」



 勇者補正がフラットになった瞬間だった。後から消すんじゃなくて最初から無くしといてくれよ……少し悲しくなるじゃん……



「あぁ!気を悪くしたのならすみません勇者様!なんというか、親しみやすくてつい……」


「ごめんなさい、まさか現代の勇者様をこんなに早く、こんなに近くで見られるとは思わなくて……」


「あー……その勇者様っていうのやめてくれない?アキラでいいよ」



 言いながら、ふと違和感に気付いた。あれ?ダーナ様が言うには、世界を救って初めて勇者と認められるんだよな?

 それにしては、アードックさんもこの二人も、すんなり勇者と認めているような……


 女の子達が、「そんな失礼なこと……」「でも勇者様の頼みなら聞いた方が……」とかゴニョゴニョ言っている間に、今気付いたことを仲間達に聞いてみた。



「あぁ、確かに……リントも、魔王倒すまでは、ただの滅法強い冒険者って扱いだったよな」


「確かに……リーラ様と旅をしていた私たちは別として、世界中から勇者と呼ばれるようになったのは、全てが終わった後だったな」


「そうですね……僕も自分から名乗ったりはしなかったですけど、どんなに信仰を集めても、魔王を倒す前に勇者として持て囃されることはなかったですね」


「どうなってんだよ……」



 四人で頭を悩ませているところで、急に音が鳴り、ポケットに振動を感じる。

 割れてしまった携帯の画面を見ると、着信を示す画面。



「お、ダーナ様からだ。その子達の相手頼むわ」


「え?あ、はい」

「おーう」

「わかった」



 三人の返事を聞き、少し離れた所まで歩いていく。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆







 歩きながら、未だ振動している携帯の画面に一度触れ、耳に当てる。

 電話口からはあのアホよりよっぽど頼りになる神様の声。



『ああ、アキラ君。そろそろまた色々説明が要る頃だと思ってな』


「はい、まさに。モニタリングしてんのかってくらいドンピシャです」


『まあ管理神だからな……さて、何から聞きたい?』


「そっすね……今まさに気になってた事がありまして」


『ほう?』



 先程の疑問を話すと、ダーナ様は聞かれるのを予想していたようで、「やはり気付いたか……当たり前だが」と漏らした。



「その反応、ダーナ様にとっても明らかな違和感ってことですか?」


『ああ、だから原因はもう調査した。で、もう判明しとる』


「話が早い。じゃ、なんでダーナ様はああ言ったのに、すんなり俺が勇者として話が通るんですか?いくらリントのフォローがあるとはいえ」


『うむ、やはりリント君のフォローが大きいのもあるが……アキラ君の場合、最初のインパクトが大きすぎたのだ』


「………というと?」


『君が先代勇者との決闘に勝ったことで、名前や顔はともかくアキラ君の存在自体は爆発的に有名になっただろう。その一件だけで一旦日本に帰れたというのも事の大きさを物語っとる』


「ええ」


『規模がでかすぎたのだ。………考えてもみろ、死闘の末魔王を討ち滅ぼした、今後伝説になるレベルの最強の存在である勇者を、一対一で、勇者に好きに攻撃させた上で全くの無傷、そして自らは武器すら持たぬただの一撃で致命傷を与え、疲れた様子も見せることなし……話だけ聞くと、これ以上ないくらいひどいチートだろう』


「たしかに、文章にするとひどいですね。めっちゃ恥ずかしい」


『そしてそんな説明が嘘ではないというのがタチが悪い。そんな存在、同じく勇者でなければありえん、いや勇者じゃなければ困る、というかそいつが勇者じゃなければ逆に誰なんだ──と、どんどん新たな勇者候補の評判は独り歩きし、結果、まだ魔王は倒してないけど勇者は確実に既にこの世界にいる、という認識が当たり前となったようだ』


「…………そこへリント本人が説明に入れば……」


『”負けた本人、そして勇者の言葉なんだから間違いない!この人が勇者なんだ!この人が魔王を倒してくれるんだ!“…………と、まあそうなる。』


「うわー………萎えるわー………」


『……まあ、君のスタンスならそうなるだろうな……まあ、こればかりはもう仕方ない……逆に、君にとってのメリットも0ではない』


「メリット?」


『うむ……既に勇者の存在は知れ渡っている、ということは、それだけ信仰が集まりやすくなっているとも言える。思ったより頻繁に帰れるかも知れんぞ』


「まあ……それは確かに良いことですけど……」


『………やっぱり嫌か?』


「24にもなって勇者勇者とちやほやされるのは気分的に辛すぎます……まだ中学生の時だったら素直に調子に乗れたかもしれないけど……」


『まあ、君は最初から一貫して乗り気じゃなかったからな……』


「………ってことは、今後も俺がリントに勝ったって事がバレたり、あのアホが口を滑らせたりしたら、どんどん俺が勇者として認識されるって事ですか」


『まあ、そうなるな』


「とりあえずあのアホの上唇と下唇縫い合わせていいですか?」


『儂は構わんが奴が全力で逃げるだろうな』


「許可さえしていただければ充分です。全力で絶対に逃がしません」


『成功を祈っとるよ。他に聞きたいことはあるか?』


「そうですね……あ、さっきチンピラを返り討ちにした時なんですけど」


『うん?』


「なんか、練習したわけでもないのに、漫画の技を真似してみたらその漫画どおりの効果があったんですよ。偶然ですかね?それとも何か知ってます?」


『ああ、それか。お節介になるかもしれんのだが……いくら魔法やスキルを無効化できるとはいえ、さすがに闘争の経験も無い君をその状態で送り出すのは忍びなくてな……目立たない程度のスキルを一つだけ付与しておいたのだ』


「え、そうなんですか?どんな効果です?」


『そうか、君はステータス確認も自分ではできないんだったな。説明文はメールで送っておこう』


「なんか神様からメールとか聞くと変な感じ」


『電話しとるから今さらだな………口頭で説明すると、アキラ君が今まで読んだ漫画ややったゲームなどの中で、君が不自然だと思わない程度の技術なら再現できるというスキルだ。先程使った技も、ビームが出るとかみたいな技ではないだろう?』


「なるほど、そういう事ですか」


『もちろん、そのスキルも要らないというなら外すが………』


「…………いや、この程度ならむしろありがたいですね。そのままでお願いします」


『なら良かった。詳しい説明はメールの方に書いておくから、よく読んで考えが変わったらまた連絡してくれ。なるべく君の要望に応えよう』


「何から何まですいません、ありがとうございます」


『いや、こちらこそ、本当にすまん……頑張ってくれ』


「はい。それではまた」





 だいぶ長く話し込んでしまったが、とりあえずまたいくらかの疑問が解決した。

 携帯を見ると、ダーナ様からの通知。

 メールと言ってたがSNSでメッセージが来た。まあどっちでもいいんだけど。



 メッセージの内容は、まず先程言っていたスキルの説明だった。






 スキル:技術再現

 文献や映像で知識として覚えている技術をそのまま再現できる。

 ただし、自分なりに原理を正しく理解していないと再現できない。

 また、魔法や特殊な能力などは再現できない。あくまで技術のみの再現となる。






 ほーん、だからさっきの技はできたのか。

 あの技に必要なのは、正確に心臓部分を殴ることと、心臓まで衝撃を伝える充分な筋力という、説明するだけなら単純な能力だからな。


 ところで、それが再現できるということはあの技も………

 色々と漫画やゲームの技を思い浮かべ、自分なりに使えそうなものを考える。

 なるほど、これらがみんな再現できるとなると……相当便利だぞ、このスキル。


 後で早速実験しよう。アホ神捕まえたらサンドバッグにしよう。

 最悪はリントに協力してもらって色々試さなければ。



 だが今は、あの女の子達をどう対処するか、それが問題だな。とりあえず戻ろう。








 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆







「おう、悪かったなみんな。で、なんか話進んだ?」



 フードコートに戻り、状況がどうなったかを聞く。



「何言ってるんですか、この子たちはアキラさんにお礼したくて来たんだから、アキラさん不在で進む訳ないでしょう。自己紹介したくらいですよ」


「そりゃそうか。まあ、お礼される程のことはしてないから本当に気にしなくていいよ。じゃ、解散!」


「この流れで解散はおかしいだろう!せめてお前も自己紹介くらい聞いてやれ!」



 シャーレイに怒られたのでちゃんと話をしてあげることになった。

 別に悪いことはしてないはずなのだが。

 ちなみにフィックスは下を向いて笑いを堪えている。あんま大したこと言ってないのに……薄々感じてたけど、かなり笑い上戸だよねこの人。


 シャーレイに促され、二人の女の子が俺に向けて自己紹介を始める。威勢の良かった方の子が先に喋りだした。











 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆











 結論から言うと、この二人が新たな仲間になるとか、重要人物になるとか、そういうのは無かった。というか全力で回避した。

 彼女達は二人ともそろそろ冒険者となって自立するつもりだったらしいが、女だけでパーティを組むのも不安だったらしく、頼りになる男性を探しているところだったらしい。そんな時に、颯爽と(?)現れてピンチを救ってくれた男が実は勇者、となり運命を感じずにはいられなかったようだ。



 ついて来たいオーラ全開で、使える魔法や持ってるスキルなんかをアピールしていたが、これ以上仲間は要らないときっぱり言い、お礼も言葉以外の金品や奉仕は絶対に受け取らないと頑なに断った。

 20分ほどその問答を続け、最後は折れて二人はお礼の言葉だけを述べて残念そうに帰ったのである。正直、あの程度のチンピラにビビっているような子たちを連れてちまちま冒険する余裕は無い。精神的に。





「もったいなかったんじゃないですか?二人ともすごく可愛かったのに」


「なんであんなに意地になって断ってたんだ?」


「…………なんか、これ以上面倒臭くなりそうな要因増やしたくなくて………」


「………………まあ、今はそうか…………」


「まあ、そうじゃなくても君らがいるから別にこれ以上仲間増やす気ないんだけど」


「身も蓋もない………」









 こうして、この世界で初めて真っ当なルートで仲間が増えそうなフラグを全力でへし折ったのだった。













 まあ、完全には折りきれていなかったのだが、今はまだそれを知るよしもない。

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