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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
勇者くん 旅に出ようや
32/44

31話 男の戦い、終了

 

「…………アキラさん、遅いな………」



 フードコートの一席で、リントが呟いた。

 テーブルには、既にアキラ以外の分の食事が置かれてしまっている。



「人も多いし、迷っただけじゃないか?いい大人なんだし心配する程でもないだろう」


「まあ、それならいいんだけど……」



 リントとは対照的に、隣に座るシャーレイはさほど気にせず答える。



「この短時間でまた面白いことになってたりして」


「ありえるな。さっさと食って探しに行こうぜ」


「見逃したら勿体ないもんね」



 ルシャナの心配とは無縁な発言にフィックスが同調する。二人は既にマイペースに食事を始めていた。



「二人も心配とかは微塵もないんですね……まあ、探しに行くのは賛成だし、食べちゃおうか……」


「そうだな。案外食べてる内に帰ってくるかもしれないし」



 こうして、実際ルシャナの言う「面白いこと」になっているアキラ以外の4人は、各々食事を始めていた──








 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇









「後悔すんなよテメエ!!ギタギタにしてやる!!」



 4人のチンピラが一斉に向かってくる。ギタギタってジャイアン以外の人から初めて聞いた。

 一斉に向かってくるとは言っても、タイミングが同じなだけで位置はバラバラだ。ならばここは、先頭の一人にまず狙いを絞り、正面からそいつに向けて走り出す。



「おらあぁぁぁ!」



 先頭の男がバカ正直に殴ろうとした直前、俺は体を沈めてそいつの腰にタックルをしそのまま頭の高さまで肩で持ち上げる。やっててよかったラグビー。



「あああぁぁぁ!?」



 急に持ち上げられた男は混乱して間抜けな叫び声をあげる。周りにいる他の奴らがその光景を見てたじろいでいたので、そのうちの一人に向かって男を持ち上げたまま盾にするようにして走って突っこむ。



「ちょちょちょ、うわっ、うわっ!!」



 咄嗟のことで横に避けるという選択肢が出なかったのか、後ずさりで逃げようとするチンピラ。その背には壁がすぐそこに迫っていた。

 俺はそのまま走って二人まとめて押しつけるように壁に叩きつける。



「あ、やべ!」

「ぐぇっ!!」



 逃げていた男は強い衝撃とともに壁と人に挟まれ、崩れるように倒れた。持ち上げられていた男の方も、同じく挟まれた衝撃でダウンしたようだ。倒れた男の上に持ち上げていた男をドサッと落とし、お手軽に二人を片付けた。予想外の攻撃に、一撃で二人とも動けなくなったようだ。

 残り二人。



「何なんだよお前、本気で殺すぞ!?」



 あっという間に3人も仲間を倒され、残る二人は本気の戦闘に入る構えに入っていた。

 一人は片手で持てる短い、わかりやすく言うとハリポタサイズの魔法の杖的なものを。もう一人は、刃渡り30㎝ほどの、デカめのナイフのような刃物をそれぞれ取り出した。



「おま、刃物はやめろよ!危ないだろ!」



 思わず普通にビビって反応してしまう。アレはまずい。いくら子ども程度の力といえども簡単に大怪我をする、刃物は恐らく今の俺にとって一番相性が最悪の武器だろう。重複表現してるけどそんくらいヤバい。



「今更うるせえ!俺たちを甘く見てるとどうなるか教えてやる!」



 杖を持った男が凄む。いや、お前はどうでもいい。刃物はまずい。

 刃物の男が続ける。



「へへ、こいつはこれでも上級魔法まで使えるんだぜ。本気ならお前なんか簡単に殺せるんだ。運の尽きだな」


「刃物はやめて!ほんとに!」


「見たところ丸腰だから上級を使うまでも無いだろうが……下級魔法だってお前なんか充分殺せるぜ?」


「そう、丸腰だから!刃物は大人げないから!」


「おう、考えなしのバカに魔法の怖さを教えてやれ!」


「刃物はやばいって!マジで!!」


「ああ、俺が使えるあらゆる魔法をお前にぶち込んでやるぜ!」


「刃物はしまおう!な!」


「炎も雷も氷もフルコースで味わわせてやる!」


「刃物─」


「魔法にビビれやあぁぁぁぁ!!!!」



 杖の方が急にキレた。

 え、何?俺お前に対して何も言ってないんだけど。



「ナイフよりよっぽど強力だろうが!魔法の!ほうが!!」


「ああ!そうだね!確かに!じゃあナイフいらないよね!!」


「ナイフばっか気にすんなぁぁぁ!!」


「お、落ち着け!混乱させようとしてるだけだって!」



 流石にナイフの男も取り乱した杖の男を心配している。

 この隙にあのナイフをどうにかする方法を考えよう。どうしよう、何かないか?

 アレより長い武器になりそうなものか、アレを防げる盾代わりになるものは……

 自分の周辺を見回すが、武器にできそうなものは……無い。

 じゃあ盾は?盾、盾………




 ……………あ、あった。





「大丈夫だ、お前の魔法は本物だ!思い知らせてやれよ!」


「おう……おう!」



 二人の話し声が聞こえる。そろそろ仕掛けてくるな。

 だが、今思い付いた手なら、もう安心だろう。あとはどうやって隙をつくかだけど……



「お前が魔法でビビらせて、そこに俺がトドメを差す、それで終わりだ!あとは動けなくなったあいつにいくらでも魔法をぶちこんでやりゃあいい!」


「それもそうだな……」



 いやそれもそうだなじゃねえよ。そこまでされるほど俺何もしてねえだろ。

 と心の中でツッコみつつ、俺はそこに落ちている盾代わりのものを使う心の準備をする。

 奴らが魔法を撃ってきて、ナイフの奴が飛び込んできたら勝負だ。正直ケガする可能性が0ではないので不安はあるが仕方ない。やるしかない。



「よし、俺の魔法を見せてやる!──炎よ集え、我に仇なす者を阻め!ファイアウォール!!」



 チンピラが顔に似合わぬこっ恥ずかしい詠唱をすると、俺の目の前に炎の壁が出現した。壁はそのまま動き、俺に向かって迫ってくる。しかしこれは目隠しになってちょうどいいので、盾を構えて準備をする。

 奴らがさっき話していた作戦なら、このあとナイフ野郎が突っ込んでくるはずだ。



「よーし、これであいつは逃げられねえはずだ!死なねえ程度に斬りまくってやる!行くぞ!うおおぉぉ」



 ………こちらに走り出す音と叫び声が聞こえてくる。非常に親切だ。


 炎の壁が少しずつ弱まってきているので、一応炎が消えた瞬間に襲いかかる算段を立てているのだろう。


 じゃあこちらから出ていこう。俺は燃えないし、盾が燃えようが知ったこっちゃない。

 俺は盾を構えて炎の壁に飛び込み、向こう側へ抜けた。



「うぉぉぉ!?おま、何!?なんで!?」



 俺を斬ろうとこちらに向かっていた筈のナイフ野郎は、逆に突っ込んでくる俺にやたらと驚いていた。


 それもそのはず、向こう側が見えないくらいだいぶ厚みのある炎の壁を普通に突き抜けて出てきた上、出てきたのは倒されたはずの仲間なのだから。


 そう、俺が見つけた盾とは、さっき倒した奴らの仲間のカールスである。

 やたらとベルトの多いダッサい服を着ていたのだが、そのお陰で腰のベルトと背中のベルトを持って肉の盾として構えやすかった。


 両手でカールスの体を構えながら、ナイフ野郎へと突進する。



「な、なな何してんだお前!それでも人間か!?カールスが燃えちまうだろ!!」


「」


「何か言えよ!!無言が一番怖えぇよ!!」



 ビビりまくっているナイフ野郎に構わず突進し、カールスごとぶち当たる。

 生身の人間に魔法撃っといて人道を説いても聞く耳持たん。



「ぐえぇぇ!」



 ぶつかった拍子にカールスから手を離し、ナイフ野郎はカールスもろとも倒れた。この隙にナイフを奪い取る。



「あっ、俺のナイフ……!」



 ナイフを奪われ情けない声をあげる男を無視し、そのナイフを人のいない方へ放り投げる。

 カチャンカチャンと虚しい音を立て、ナイフは地面に落ちた。



 危険が遠ざかった事を確認し、倒れたままのナイフ野郎の胸ぐらを掴む。



「ひぇっ………」



 武器という優位が失われ、男の顔は先程の見下したような表情が消え、恐怖しか浮かんでいない。



「やめろクソ野郎!殺すぞ!!」



 声が聞こえた方を向くと、魔法男が杖を向けてこちらに叫んでいた。男の周囲には小さな魔方陣が2つ3つ浮かんでいる。

 特に気にせずナイフ野郎に向き直る。



「無視すんなやぁぁぁぁ!!!」



 気持ち半泣きのような叫び声とともに、何か魔法が飛んできたので、胸ぐらを掴んでいたナイフ野郎をそのまま盾にして魔法を受け止めた。



「うぎゃあぁぁぁぁ!!」


「ナッチーーー!!?」



 背中で魔法を受けた痛みの叫びと、仲間に魔法を当ててしまった驚きの叫びが同時にこだまする。別に魔法なら盾にする必要も無かったんだけどね、つい手頃なものを持ってたから使っちゃった。

 ていうかこいつの名前ナッチっていうのね。覚えなくていいと思うけど。


 魔法攻撃で気絶したナッチを床に捨て、残り1人となった魔法男の方を向く。



「て、てめえ……人間を盾にするなんて、それが人のやることかよ……!?」


「それさっき聞いたしお前らに言われたくない」


「ぐっ………クソがぁぁぁぁ!!」



 切羽詰まった男が、取り乱したようにちっちゃい魔法を乱射してくる。

 それらをすべて無視し、真っ直ぐ歩いて男に近づいていく。



「なっ、何だよこれ!?いくつか当たってるだろこれ!?」



 無数に飛び交う魔法攻撃を気にせず歩く俺を見て、男は更に混乱している。

 もう冷静な思考ができず、どうにか俺に魔法を食らわせる事しか考えてないらしい。ここまで近づいたら殴りかかった方が速そうなのに、目の前で必死に杖を振り回している。隙だらけ、というか隙しかない。



「あ、じゃあちょっとあれ試してみるか……」



 俺の独り言に何かを感じたのか、男が更に速く杖を振り回して魔法を乱射する。

 俺はそれをお構い無しに右手を振りかぶり、思い切り男の左胸を殴った。



「うぐっ……………!」



 胸を殴られた男は、短いうめき声と共に崩れるように倒れた。

 どうやら気絶したようだ。



「あれ、マジで?一発で成功?……というかマジで出来るもんなの?」



 漫画で読んだ胸を殴って気絶させる技を試してみたらなんか成功した。

 いや、実際できるのかどうかもわからないし、こんな簡単に成功するはずもないんだけど……何か俺の体に異世界効果無効以外の何かが起きているのかも。

 今度ダーナ様に聞いてみよう。





 とりあえず、この醜く不毛な戦いは終わった。

 なんで戦うことになったんだっけ………



「あ、そうだ、トイレ行こうとしてただけだったんだよ」



 別にそれほど我慢してた訳でもないが、一息ついてちょうど催してきたので、俺は倒れたチンピラの中を歩きトイレに入っていった。













 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
















「あ、あれ………あの人、私達の事忘れてる?」


「普通にトイレ入っていっちゃった………」



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