27話 でっぱつ
意地でも同行したがる嫁たちに、妥協案を提示して数時間後。
俺とフィックスとリントは、旅に出る支度を終えて、リントの屋敷の玄関前でいつでも出発できるよう待機していた。
そこから更に数十分後、玄関の扉が開き、嫁たちも出てくる。だが先程とは違い、旅支度なのはシャーレイだけで、マリーとフィオナは普段着に戻っている。
「最初はあんたね……そりゃそうか。元々今日はあんたが優先の日って言ってたもんな」
「あ、ああ……ほ、本当に先程の謝罪で許してもらえたんだな?私が同行しても大丈夫だよな?」
「んなもんあんたの態度次第だよ。場合によっちゃ容赦なくオークの集落に放り込むぞ」
「そのオークやスライムへの異常な執着は何なんだ?………リント、何か知っているのか?」
「い、いや………アハハ………」
リントが俺の発言を聞いて苦笑いしていたのに気付き、シャーレイが質問するが、リントは苦笑いを続けるしかなかった。
リントは向こうで中学生くらいだった筈だよなー。なんでこのネタ知ってるのかなー?というのは触れないでおこう。そんなの俺だって言える立場じゃないし、健全な男子なら仕方ないよね!
「じゃ、マリーとフィオナは留守番だな。まぁ、3日耐えれば自分の番が回ってくるんだから我慢してくれな」
「まあ、仕方ないわね……理由はともかく、あんなに嫌がられちゃ」
「リントが説得してくれなかったのは少し納得行きませんけど」
「ははは…ごめんね。まぁ、夜は普通に会えるわけだし……」
そう、俺の出した妥協案とは、一日に一人だけ同行を許し、それを順番で回すということだ。
ちなみに、3人同行したら誰も来ない日を一日設け、また最初からという流れにしたので、4日で一週のローテーションである。
誰も来ない日を設けるというのは譲れないポイントであった。毎日休みなくカップルのイチャイチャを見せつけられるのではたまったもんじゃない。
「ま、結局4人で行動することになったのはちょうどいいんじゃねーか?俺が前衛、フィオナかマリーの日だったらリントも前衛、シャーレイの日だったらリントは後衛でバランスもまぁまぁ取れてるし」
さすがフィックス、うまくまとめてくれるぜ。
「ちなみに俺は?」
「正直扱い方がよくわかんねえから好きにやってくれ」
「雑ゥー!」
フィックスと二人、軽いノリでゲラゲラと笑っていると、リントが何か不思議そうに尋ねてきた。
「あの……そういえば、ルシャナ様は同行しないんですか?」
「あ?……ああ、あいつな。………やっぱいた方がいいのか?」
「えっと……僕の時はリーラ様に何度も助けていただいたので、それを考えると……」
「でもなあ……あいつ今のところ説明でしか役に立ってないからな……そこも今はリントが居るし」
そう言うや否や、俺のポケットの携帯が震え出した。このタイミングで掛けてくるのは奴しかいまい。仕方なく電話に出る。
「はい」
『あ、もしもし!アキラくん!僕だよ!』
「まず始めに何か言うことは」
『迷惑かけてすいませんでした。どうか許してください。もうダーナ様に殴られるのは懲り懲りです』
「まだ自分の都合で謝ってるな。誠意が感じられない。マイナス50ポイント」
『何のポイント!?』
「それより何の用だよ?」
『あ、はい。……えっと、僕の同行についての話をしてると思うんだけど……』
「あぁ、今んところ役に立つ気がしないから来なくていいと思ってる」
『待って待って!ちゃんと役に立つから!心を入れ替えて頑張るから!』
「つっても何ができんのよ?説明係はリントに頼むし、戦闘だってできない癖に」
『うっ………じゃ、邪魔はしないように頑張るから!もう余計なことも言わないようにするから!』
「お前そこは何か他で役に立つことアピールしろよ」
『嘘はよくないと思って……』
「お前神なのに自分で言ってて悲しくならないの?」
『だって、アキラくんの能力のせいでほぼサポートすらできないんだもん……』
「そうなのか?………まあ、そこは俺も悪いところはあるか。……いや、悪くはないな。100%悪いのはお前だったわ」
『結局フォローしてない!』
「……まぁいいか。肉の盾くらいにはなるだろ。一緒に来ていいぞ」
『今とんでもないこと言わなかった!?』
「うるせぇな。テメーから言い出したんだろうが。別にサンドバッグ代わりでもいいんだぞ」
『アッハイ……じゃあ、今から準備してそっち行くね』 プツッ
電話をポケットにしまい、リントたちに答える。
「というわけで、ルシャナを含めた5人での旅になるな。うん」
「何度聞いても神様との会話とは思えませんね……」
「気にすんな。じゃ、とりあえず出発しようぜ。ルシャナはそのうち合流するだろ。」
「よっしゃ!じゃあまたよろしくなアキラ!リントと旅すんのも久しぶりだな!」
「はい。よろしくお願いします!」
「フィックス殿。剣聖と呼ばれる程の技、勉強させていただきます」
「あぁ、そういえばシャーレイと一緒に戦ったことは無いな!よろしく頼むぜ!」
「え、絡んだことないのにそんな仲良い感じなの?」
「フィックスさんはいつもこんな感じですよ」
「さすが陽キャ……」
こんな感じで、緊張感も何もなく、魔王を倒して世界を救う為の旅が始まった。
我ながら話が中々進まない……




