24話 勇者ゲットだぜ!
「よし、あー死ぬかと思った」
終了の合図を聞いてシャーレイの手首を放す。
「いや、あんな一方的な展開でどの口が言うのよ……」
マリーに突っ込まれた。
「いや、マジで剣を抜かれるまではどう生き残るか必死に考えてたから」
「剣を抜かれるまでってどういうことよ……」
「あの剣を見たら『あ、大丈夫だこれ』ってなった」
「普通だったら逆の筈よね」
まあそうだろうね。実際、リントと比べると目で追える程度の動きだったけど、避けることは全くできてなかった訳だし。
あんな伸びたり曲がったりする剣、普通だったら初見で対処できないと思うよ。ほんと、魔法でできた剣で助かった。
「……さて」
涙目でへたりこんでいるシャーレイの目の前でしゃがみ、声をかける。
マリーとフィオナとフィックスの3人はおや?という目でこちらを見ている。
「………落ち着いたか?」
「………あ、ああ、もう大丈夫だ」
──シャーレイからしてみれば、こちらに非があり、相手も乗り気ではなかったにもかかわらず、無理やりこじつけた決闘。
しかも、そんな身勝手な決闘で、一撃も与えられず、相手は片手でこちらの腕を押さえつけていただけという、これ以上無い完敗。
これほどの無様をさらしたのに、目の前の相手は目線を合わせ、自分を気にかけてくれている。
ああ、見掛けの雰囲気は違えど、この優しさはやはりリントと同じ勇者の素質なのか───
「よし、じゃあ謝れ、今謝れ、すぐ謝れ。こんな迷惑な決闘させたことも含めて謝れ。さもなくば単純にお前を嫌う」
「………え、ええ!?」
俺の言葉に予想外だったのかシャーレイは目を丸くした。
「い、今のは負けた私にお前が優しく謝って仲直りする流れじゃないのか!?」
「あぁ?最初に攻撃したのもお前、それを謝らずに無理矢理決闘させたのもお前、お前は普通に斬り殺しにかかってきて、俺は腕を掴んで武器を奪っただけ。なんで俺が謝る?なんでお前はまだ謝らない?」
「えぇ………あぅ…………」
「あはははははははははは!!!」
「あー……そういう人間よね、アキラは……」
「自分の都合しか考えませんもんね……」
フィックスが大笑いし、マリーとフィオナがこのやり取りを見て変に納得している。
「ちょっと待てフィオナ、俺は自分の都合しか考えないんじゃない。俺に迷惑をかける奴と、その上謝らない奴が嫌いなだけだ」
「そこで『人に』じゃなくて『俺に』って言う所がらしいわね」
マリーに更に突っ込まれた。まあそこは否定しない。
攻撃を続ける。
「で?どうすんの?俺はこのままあんたを嫌います、終わり。……でもいいんだけど?」
「……す、すまなかっ─」
「あ、そんな感じの言い方で済ます?」
「……騎士として、人としてあるまじき行いをしたことを、心よりお詫び致します……迷惑をかけてすみませんでした……」
「よし、合格。んじゃ無かった事にして仲良くしようぜ奥さん」
「……は、はあぁ!?あんな態度をとっておいてそれで終わりか!?」
「え、俺が許す側なんだから俺がいいって言ったらそれでチャラだろ?え、何?このまま嫌われた方が良かったの?オークかスライム連れてこよっか?」
「なぜそこで特定の魔物の名前が出てくる!?」
シャーレイをいじって遊んでいると、 フィックスがまた笑いすぎて涙目になりながら近づいてきた。ちなみにマリーとフィオナは、ついていけないという様子でただ見ているだけだった。
「いやー毎回思うけどホントアキラはわけわかんねえ。強さもそうだけど、言動が予測できなくて笑えるわ!普通あれだけ責めるか?そんであっさり引くか?」
「実は初めて生の『くっ、殺せ!』が聞けるかと思って少しワクワクしてたけど期待はずれだった」
「意味はわからんが馬鹿にされてるのはなんとなくわかるぞ!」
「そんな怒るなよ、シャーレイ=クリムゾンさん?」
「クリエストだ!いや今はシーダースだ!!」
フィックスが更に笑い出した時、中庭にもう一人やって来た。
自室で今後の対応を考えていた筈のリントである。
出てきたということは、結論が出たのかな?
「居間にいないと思ったら………何してたんですか?」
「お前の嫁が喧嘩売ってきたから買取拒否したのに結局無理矢理買わされて俺が今きわめて平和的に勝ったところ」
「ええ!?シャーレイそんなことしたの!?」
「くっ………何一つ否定できない!」
状況を簡単に説明し、今度は俺の方から質問をする。
「………で?協力してくれるのかどうか、決めたか?」
「………一つ、一つでいいので、僕の心を動かすような情報を先払いで教えてください。……それによって決めます」
「ふーん………じゃあ………」
さて、どうするか。ここで簡単に説明できてかつインパクトのある情報を、そしてなるべくリントが興味ある情報を言わなければ。
………といったら、これかな?
「ゴンとジン、もう会っちゃったよ」
「詳しく聞かせてください!!」




