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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
勇者くん 旅に出ようや
22/44

21話 勇者を落とそう!

「あんた何言ってんの?そんなの私達が許すわけないでしょ」

「リントはもう私達と静かに暮らすって決めたんです」

「ふざけるな!今日は本当だったら私とリントは……」


 嫁3人が3人とも不満をぶつけてくる。


「まあまあ落ち着け、何もお前たちの意見は聞いてない。俺はリントに聞いてるんだ」


「悪い話じゃないみたいな言い方だけど単に無視してるだけよねそれ?」


 マリーに突っ込まれた。言い方で騙せなかったか。


「アキラさんの事情は気の毒ですけど、リントを巻き込まないでください。もうリントは充分戦ったんです」


「いやいや考えてみろフィオナ、世界で初めて2回も世界を救った勇者、かっこよくない?」


「え、あんな戦い一回でいいです」


 あ、そう。どんな戦いだったか知らんけどよっぽど辛かったのね。


「今日の予定も既にめちゃくちゃなのに、これ以上私からリントを引き離すなんて認めないぞ!」


「うん。君がなんでそこまで怒ってるかは俺よく知らないんだけど?えーと……3号さん?」


「誰が3号だ!!私はシャーレイ・シーダース!リントの嫁だ!!」


 嫁なのは知ってるよクソが。

 ていうかさっきから言ってるけど、俺はリントの返事が聞きたいんだよ。


「リント、ダメか?」


「いやー、さすがにもう一回魔王と戦うってのはちょっと……ていうか、僕じゃもう封印できないのに、なんで僕なんです?ただ強い人っていうだけなら、フィックスさんあたりが喜んで行くと思いますけど」


「おーぅ、しばらくアキラについてくつもりだぜー」


「フィックスも来てもらえるなら勿論大歓迎だけど……リントにしか頼めない大事な役目があるんだ」


「……と、言うと?」


「いちいちこの世界のシステムとかに初見で反応すんのめんどくさいから、簡単に言えば現地コーディネーター的な事を頼む」


「嫌ですよ!」


「え、マジかよ……知らない土地で不安な俺の気持ちを考えろよ」


「それはわかりますけど!そういうのも含めて異世界ものでしょ!」


「だから俺はそういうの求めてないんだって」


「あっさりしすぎですよ……とにかくもう僕はそこまでガチな旅はしたくないんです。家族もいますし」


「えー……」



 どうしよう。異世界について無知であるがゆえのハプニングとか、定番だろうだけど俺だったらなるべく避けたい。

 コイツさえついてきてくれればかなり楽になりそうなのに……

 一応フィックスもSランクなので色々知ってはいるだろうけど、リントの方が俺にわかりやすくナビゲートできるはずだ。こんな物件を知った上でリント無しでの旅なんて、すごく損した気分になりそうだからどうにか連れていきたい。

 なんとかして説得しなければ。



「あー…お前、どうせ長い距離でも短時間で移動する手段とか持ってるだろ?」


 こういった異世界ものでは便利な移動手段というのはある程度定番のはずだ。


「なんか引っ掛かる言い方ですけど……まあ、ありますよ。転移魔法が」


「よし、じゃあこうしよう。俺は夕方にはもう活動を終わらせて宿を取るなり野営の準備なりするから。その時間になったら家に帰っていいぞ。次の日の朝にまた来てくれれば」


「なんでそれならいいと思ったんですか?普通に昼間の僕の自由が無いじゃないですか」


「お前なあ……相手が譲歩してんのに自分の都合ばっか考えるのってどうかと思うぞ?」


「そっくりそのままお返しします」



 むう、ダメか。てっきり夜さえ帰れれば嫁とイチャイチャする時間はあるからいいかなと思ったんだけどな。


「ちゃんと週休2日あげるから!それ以外でも事前申請すれば年20日まで休んで良いから!」


「嫌なものは嫌ですよ!」



 クソ、これでもダメか。社会人経験してないから有休のありがたみがわかってないのかな?


「ちゃんと報酬は出すから!」


「別にお金に困ってないし!アキラさんだってお金持ってる訳じゃないでしょう!」



 勢いで言ってみたが確かに人に給料出せるほど金持ってねえや。


「………あ。」


 と、ここであることが閃いた。


「………なあ、依頼したことへの報酬って、金や物品じゃなくてもいいんだよな?」


「………はい?」


「フィックス、この世界でも、情報ってのは内容によっちゃ価値のあるものだろ?」


 というか、ある程度の文明のある世界では情報というのは大きな価値を持つはずだ。

 急に話しかけられたが、フィックスがうまく答えてくれた。


「ああ、まあ情報屋が商売として成立して、大体みんなそれなりに儲けてるからな。あくまで内容次第だけど」


 よし、それなら可能性はある。


「じゃあ、俺から出せる報酬はズバリ情報だ。一日一個、リントの知りたい情報を教えてやる」



「………………」


「……………」


「…………」



 あれ?なぜかリントと嫁たちが呆れた顔で黙ってしまった。


「いや、だから旅に着いてきてくれたら金の代わりにリントの知りたい情報を……」


「聞こえてますよ!……いや、アキラさん、矛盾してますよ」


「何が?」


「いやいや、だって、この世界についての知識や情報が無いから僕に同行を頼んでるんですよね?それなのに情報が報酬っておかしいでしょ?」



 ほう、こいつ、俺がどれだけこいつにとって為になる提案をしているか気づいていないようだな……



「お前の知らない情報ならあるよ。とっておきのがいくつも」


「いやいや、だってアキラさんこの世界に一週間もいなかったでしょ」


「この5年間、色々変わったなあ。『色々変わったり』、『色々終わったりした』」


「いや、だからアキラさんこの世界に5年もいな───」



 そこまで言ってリントがハッと目を見開く。どうやらなんとなく気付いたようだ。リントが知らず、俺の知っていることの貴重さを。

 この世界では特に貴重なそれを。



「え、そりゃ5年もあれば色々あるだろうけど……いやでも、そんなに……?そんな自信満々になるほど動きがあった……?」


 おお、考えてる考えてる。気になるだろうな。いくらこっちの世界で生活が落ち着いても、あれらの文化に関しては以前好きだったのであればあるほどその後が気になるはずだ。


「え、ちょっとリント、どうしたの?」


「リント、あの人がリントの知らないことを知ってるはずないですよ!」


「私もそう思うぞ。どうみてもリントの方が聡明に見える」



 嫁たちが急にうろたえだした勇者の様子を心配している。おい3号、お前完全に顔で判断しただろ。リントは中学生で止まってるがこちとら高卒だぞ。

 ……別に自慢できるほどじゃなかった。



「いや、確かに僕は知らない……いや、今はこの人しか知らない……」


「だからどうしたのよリント!?大丈夫?」



 効いてる効いてる。ちょっと追い打ちしてみよう。


「それに、もう一個メリットはあるぞ。俺はセーブするたびに一旦帰るわけだが……その際、向こうからある程度自分の荷物を持ってきていいことになった。管理神様の気遣いでな」


「…………まさか」


「情報は勿論教えるけど………やっぱり、自分の目で確かめたいよなあ?」


「ま、マジですか………持ってきてくれるんですか!?」


「リント!?様子がおかしいですよ!?」




 よしよし、あと一歩だな。もうここまで来たらほとんど堕ちてるだろう。

 最後にとどめをさしてやろう。

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