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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
勇者くん 旅に出ようや
21/44

20話 どうしてこうなった

 

 昨日、俺は自分の部屋で寝たんだよな………?

 んで、夢も見ないでぐっすりだった。

 それでいつものように起きて………






「───という訳で、おととい日本に帰ったはずなんだけど、今日気付いたらここにいて、しばらくこんな感じでうなだれてるんだよね……」



 そうだ。リントも言っている通り俺は帰ったんだ。

 帰って試合だって行った。打ち上げで楽しく飲んだりもした。

 異世界なんて気にせずまたいつもの生活に戻るはずだったんだ。


 ……なのに、なんで俺はここにいるんだ。



「別れ際がそんな調子だったし、実際昨日にはもう話を知った人が何人か訪ねてきて大変だったから、アキラさんを見つけて皆文句を言おうとしたんだけど……この落ち込みようだから、ちょっとそんな雰囲気じゃなくなっちゃってね………シャーレイ?聞いてる?」


「……あ、ああ。気になる所が多すぎて固まってた。すまない」


「うん、まあしょうがないよね。僕も何があったのかさっぱりだし……とりあえずアキラさんにどうなってるのか説明してもらわないと……」



 と、その時、突如俺の携帯が鳴った。

 驚き携帯を手にとって画面も見ると、ダーナ様からの着信だった。

 リントと嫁3号が何事かと驚いている中、急いで電話に出る。



「はい!大室です!何ですかねこれ!!」


「あー………、相当混乱しとるようだな」


 答えるダーナ様は最初に話した時よりさらに申し訳なさそうな声だった。

 嫌な予感しかしないがとりあえずこの状況が何なのか聞かなければ。



「先に謝る。本当に申し訳ない。」


「何がでしょうか!?」


「結論から言う。………アキラくん、君はもう、勇者として魔王を倒すしかない」


「嫌です!」


「知ってる。……だがそうしないと、今まで通りの日本での暮らしは続けられないぞ」


「え、それってどういう……」


「………実はな───」








 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆







「………で、どういう事なのかしら?あんだけ私たちを焦らせて、普通に今ここにいるってのは」


 マリーが投げつけるように俺に問い掛ける。

 ダーナ様から現在の状況について説明を受けた俺は、聞き終わってからまた小一時間ほど落ち込んだあと、仕方なく気持ちを切り替えて皆を居間に集めた。


 皆と言うのはリント、フィックス、フィオナ、マリー、嫁3号の5人である。


「そんな不機嫌そうな目で見られても困るな。俺だって今超不機嫌なんだ」


「そうは見えませんけど……」


「一周回って振りきれてるだけだ。とりあえず状況を話そう。といっても、話すのはコイツだ」


 俺は自分のスマホを机に置く。その画面には、元のイケメンが判別できないほどボコボコになったルシャナの顔が映っていた。


「やあみんな。一日ぶり」


 自分の顔の状態を気にせず画面内のルシャナが喋り出す。

 すると皆はおおむね予想通りの反応をした。


「えっ!?小さな板の中にルシャナ様がいる!?」

「こ、これは魔道具の一種かしら?」

「おールシャナ。一日ぶりー、なんで殴られてんだ?」

「え、これ携帯電話ですか?」

「全くついていけないんだが」


「はいはい、色々あると思うけど後で言うから、今はこのクソ野郎の話を聞いて」


 そう言うと、5人はとりあえずおとなしく話を聞く態勢に入った。

 画面の中のルシャナが話し出す。


「この度は、神である自分の立場にふさわしくない軽率な行動でアキラくんを始め皆に迷惑を─」


「そういうのいいから早く説明しろ」


「アッハイ。……えっと、僕がアキラくんを無理矢理連れてきちゃったのは知ってるよね……」


 嫁3号を除いて四人全員が軽く頷く。


「んで、これまでの歴史上、勇者として異世界から来た人は、みんな世界救済を成し遂げるか、こちらの世界で途中で死んでしまうかのどちらかだったんだ。…途中で帰る人というのは、前例がなかった。だから、今回アキラくんが初めてのパターンとなった訳なんだけど……途中で帰るというのは、どうやらいわゆる一時中断みたいなものとなるみたいなんだ……」


 ここまで言ってリント以外の四人が首を傾げる。だが、リントは理解しているようだった。


「リント君ならわかるかな……ゲームでいう一時セーブだね。そして、中断できる期間は最大でも一日……24時間経ったら、自動的にこちらの世界に再召喚されてしまうみたいなんだ。」


「だから、アキラ君は何度信仰を溜めてその度に日本に帰っても、世界を救わない限り一日しか向こうにいることはできない。正式に帰るには、魔王を倒さなくちゃならないんだ」


「リントにもっとわかりやすく言うと、いくら俺が信仰を50万ペリカ集めて帰ってもそれは単なる一日外出券で、魔王を倒して借金完済しないと地下帝国からは解放されないってことだ」


 俺の説明に他のみんなは更に首を傾げていたが、リントだけはよく理解したようだった。


「…と、俺が戻ってきたのはそういう理由らしい。この家から帰ったから、ここがセーブポイントになったって事だな」


「それは……なんというか、お気の毒に……」


 リントから同情の言葉をかけられる。

 ここで、こうなったら仕方ないのである頼みごとをする。


「俺を気の毒に思う?」


「そうですね、あんだけ早く帰りたいって言ってたので……」


「可哀想だと思うなら、ちょっと協力してくれる?」


「?はい、なんでしょう?」



「こうなったら魔王倒しに行くしかないからさ、リント、先輩としてちょっと魔王の城まで一緒についてきて」







 軽い気持ちで言ったのだが、その一言で居間は静まり返ったのだった。

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