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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
おみまいするぞー
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17話 決着

 まずいな、武器使われたら流石にケガする可能性が高い。刃物だったらなおさらだ。

 注意して見ていたが、しかしリントが武器を取り出す様子はない。

 というか、両手を軽く握り、そのままこちらを向いて構えている。


 ……お?これはもしかして?


「まさか……徒手格闘か?」


「ええ、大体魔法で済ますので、あまり使いませんが」


 そうか。しかし気を使って武器を使わないのか、本気の近接戦闘手段が格闘なのか……どっちなんだろ。聞いてみよう。


「フィックス、あのスタイルがあいつの本気ってことか?」


「ん?ああ、そうだな。魔法で倒せない敵は大体格闘で倒してた。実戦じゃ剣とかの武器は使ってなかったな」


「………ふーん」


 これは、もしかして勝てちゃうのでは?

 少しニヤッとしてしまったところで、リントがまた話しかけてきた。


「ずいぶん余裕そうですね。言っておきますが、こうなると魔法の時より手加減はできませんよ」


「え、あれって手加減してくれてたの?」


「当たり前じゃないですか!本気で魔法攻撃しようとしたらあんなもんじゃないですよ!マリーの結界の強度を考えてあれが限界ってだけです!」


「へえ。で、格闘だとそれより強いと?」


「ええ、周りへの影響が少ないですからね。本気で殴りますから覚悟した方がいいですよ」


 そう言いながら、リントはじりじりと距離を詰めてくる。


「リントに手を使わせるなんてね」


「確かにそれくらいの強さはあるみたいですが、こうなったら決まりですね」


 嫁二人ももう勝ったみたい空気になっている。なるほど、格闘ならよっぽど自信があるらしい。


「さっきからそうでしたが……動かないんですか?後の先を取らせるほど甘くないですよ?」


「俺はどっしり構えて相手の出方を見るタイプだから。ストⅡでも待ちガイル使いだったし」


 どの口が、とでも言いたそうなニヤケ顔でフィックスがこちらを見ている。そりゃそうだ。リッチ戦はあんなんだったし。

 動かない本当の理由は単純に、先に仕掛けると別段動きが大したことないのがバレるからである。そりゃそうだ。ただの人間だもの。


 なので、リントが攻撃を仕掛けてくるのを待ち、一発受け止めてから殴り返すなり捕まえるなりするしかない。

 刃物とか使われたらその一発でアウトだけど、素手ならいける。たぶん。

 そして、ある2つの点でリントの事を信じている。勇者が俺が信じた通りの男であれば、大丈夫なはず。


「なら……行きます!!」


 リントが叫ぶと同時に、その姿が消えた。いや、正確には消えたかと思うくらい超スピードで距離を詰めてきた。


 俺は咄嗟に両腕で頭部をガードした。


「無駄ですッ!!雷崩拳!!」


 俺のガードと同時に勇者の拳が俺のボディに突き刺さる。



 ポコン。



「……あれ?」


「勇者捕ったどーー!!」


 呆気にとられているリントをガッチリ両腕でホールドした。


「な、なんで!?本気で殴ったのに!体ごと吹っ飛ぶか腕が突き刺さるかの勢いの筈なのに!」


「二番目こえーよ!!殺す気か!!」


 思い切りの良さに若干ビビりつつもチラッと周りを見ると、嫁二人も口を開けてポカンとしている。

 フィックスは拍手しながら大笑いしている。

 ルシャナは……あ、何だあの野郎、預けといた俺の携帯で何か話してやがる。まあ相手はダーナ様だろうから仕方ないか。


「実際効いてないじゃないですか!一体どうやって!」


「簡単な事だ……腹筋に力を入れて固くしておいた!」


「そんだけなわけあるかあぁぁぁ!!っくそ、全然抜けない!!力強すぎでしょ!!」


 いや、俺の力もあるだろうけど、お前の力が弱いんだよ。


 俺が信じていた2つの事のひとつめ、それは、奴が攻撃してくるときは、必ず正面からだろうということ。

 後ろから攻撃するような卑怯な事はしない正々堂々とした男……という良い評価ではない。

 いきなりチート級の力を手に入れて、ボスでもない限り大体どんなやつが相手でも真っ直ぐ正面から攻撃しただけで倒せたのだろう。そのへんに慢心があるはずと予想した。

 流石にどんだけ非力でも、後頭部とか後頚部を思いっきり殴られたら危ないからな。


 そしてもうひとつは……こいつ、絶対筋トレなんかしてねえ。

 いやあくまで予想だったが、確信した。こいつ完全にレベルとステータス依存だ。

 腹筋に力を入れてただけなのは本当だが、それにしたって弱かった。例のあのオッサンの方がまだ強かった。


 こうして、勇者を捕まえて自由を奪った訳だが……


 どうしよう。マジで勝つつもりは無かったんだけど、勝っちゃっていいのかな……

 このまま降参するまで離さなければいいだけの話だし……


「くそっ、くそっ!!やっぱり嘘じゃないか!!こんな怪力、神様から貰いでもしてなきゃおかしい!!あーもう全然動かない!!」


 そう喚きながらリントはじたばたと暴れている。正確には、暴れようとして頭だけ振り回している。体はそりゃもうしっかりとホールドしているので全く動かない。

 さて、どう決着をつけようか……


 迷っていると、さっきまで電話していたルシャナが、通話を終えて呼び掛けてきた。


「アキラくーん、先代と決闘するって伝えたら、さっきダーナ様から電話あったんだけどさー」


「なんだー?」


「先代にもし勝った場合、勇者を越えた勇者として箔がついて、一発で帰れるだけの信仰溜まるらしいよー」


「うっそマジで!!??」



 思わず俺は、捕まえた勇者を頭から地面に叩きつけた。


 ボキィ!!


「あ、やべぇ変な音した」



「「リントーーッ!!!?」」


 一瞬で動かなくなった勇者に嫁二人が大慌てで駆け寄る。

 フィックスは腹を抱えて泣きながら笑っている。


 笑いながらも、フィックスが宣言した。


「ひーっ、ひーっ、ア、アキラの勝ち!!」




 残念だったな、リントよ。

 あの長くて硬そうな杖で殴りかかっていれば、結果は違っただろう。



 ともあれ、俺は先代勇者に勝ったのであった。

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