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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
おみまいするぞー
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15話 嫁を煽る(不本意)

 

「お待たせしました。あ、マリーも来たのね。マリーもお茶飲む?」


 ルシャナの発表で変な空気になった部屋に、フィオナがお茶を運んできた。


「……ええ、いただくわ」


 マリーがフィオナに答えたところで、フィオナが変な空気を察したようだ。


「あ、あれ?皆さんどうしました?何かあったんですか?」


 いや、何かあったかと言ったら何もないけど……


「……フィオナ、アキラの事聞いた?アキラが今の勇者らしいわよ」


「えっ!?そうなんですか!?」


 まあ驚くよね。俺は自分を勇者だとは認めてないけど。


「じゃ、じゃあ……もしかして、ルシャナさんは救世神様ですか?」


「そうだよー」


 とんでもないことを軽く答えるなコイツは。

 一般人からしたら確実に頭がおかしいと思われるだろう。


「確かに、言われてみればリーラ様と似たような雰囲気を感じますね」


「でしょ?あながち嘘でも無さそうなのよ」


 リーラって誰だよ、とルシャナに聞いてみる。

 どうやら先代勇者と契約してた女神らしい。

 名前を聞いた瞬間「うわっ」とか言ってたし、話しているルシャナの顔が嫌そうだったので恐らく俺の味方になりうる方のようだ。


「んで、リーラ様は管理神になったわけ?」


「会ったことも無いのに僕より先に様をつけるなんて……」


「お前には絶対言わないから安心しろ」


「可能性は残して!……いや、珍しく民族神としてこの世界に残ったみたい。勇者のお膝元だし、この町に神殿があると思うよ」


 なるほど。会えるかはわからんけど、後で行ってみるか。


「で、現勇者がリントに何の用かしら?今まで勇者がこんな短い間隔で存在した例なんて確認されてないけど……」


「まあ、申し送りというかなんというか……信仰の効率のいい集め方でもないかなと」


 そう答えると、フィオナもマリーも、「世界を救うのをそんな作業みたいに……」と、若干引いていた。

 俺にとっては帰るための作業だからそう思われても仕方ない。


「だから、もしマリーやフィオナが教えてくれるなら別に勇者に会えなくてもいいんだけど」


「その程度の感覚なのね……」


 マリーが少しがっかりしたところで、またフィックスが余計なことを言った。


「えー、せっかく来たんだからリントと会おうぜ。やっぱりどっちが強いか気になるし」


「ちょっ」


 要らんこと言うなと言おうとすると、それより先に嫁二人が今までにない反応をした。ピクッて音が聞こえた気がする。


「どっちが?」

「強いか?」


 あれ、なんか二人とも急に機嫌悪くなってません?


「いくら現勇者とはいえ、来たばかりなんでしょう?リントと比べる時点でおかしいと思うけど」


「そうです。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、リントは間違いなくこの世界で最上級に強いんです」


 あ、愛する旦那を軽く見られて怒ってるのね。はいはい、ごめんなさい身の程知らずな事言って。言ったのフィックスだけど。


「えー?リントも勿論強いけど、アキラも規格外だぜ?勝てないとしても互角には戦えると思うけど」


「フィックス!それ以上いけない!!」


 制止もむなしく、フィックスの発言で、二人は更に刺激されたようだった。


「そんな訳ないでしょう?たとえ今の勇者が相手でも、リントが負けるなんてありえない」

「そうです。リントが一番強くて格好いいんです。」


 ああ、こんなに愛されてて幸せなんだろうな……じゃなくて。

 ここまで煽ってしまって、やっぱり勝てないと思うからやめますーでは済まなそうだ。


「フィックス、なんてことを……」


「いいじゃん。フィオナが回復術大得意だから、もしものことがあってもすぐ治るし」


 いや、俺はそれ効かないんだよ。とは言えない。いくらフィックスでもその致命的な弱点は知られたくない。

 何とかして勇者との一戦を無傷もしくは軽傷で終わらせなければならなくなった。


「マジかよ……相手の戦闘スタイルも知らないのに……」


「なんか面白くなってきたね!ね!」


 このクソ神。まぶた引きちぎってやる。

 とにかく、闘うこと自体はもう避けられそうにない。どうにかして怪我を防がなければ……

 密かに嘆いていると、「ただいまー」と、今の俺の精神状態とは裏腹な平和な声が聞こえた。


「あ、お客さん来てるの?……って、フィックスさん!!久し振り!!」


 部屋に入ってきた男は爽やかに挨拶したが、それを遮るようにマリーとフィオナが詰め寄った。


「リント!!あの人に軽くお灸据えてやって!!」

「リントの強さを見せてあげてください!多少やり過ぎても私が治しますから!!」


「えっえっ何!?何の話!?」


 なるほど、戸惑っている彼が先代勇者か。確かにイケメンだ。ていうか完全にこっちの世界の人にしか見えないが。

 艶々した銀髪に大きな蒼い瞳で鼻筋が通ってて……盛りすぎだろ。

 元はどうだったか知らんが、選考基準を考えるにあまり良い男ではないはずだ。固定観念だけど。

 とりあえず地球じゃありえないような甘いマスクだ。

 あれ?なんか謎のやる気出てきた。


「絶対リントの方が強いから!」

「絶対リントの方が強いです!」


「え?えへへ………そりゃそこらの人に負ける気はしないけど……」


 おお、強い強い言われてまんざらでも無さそうだな。謎のやる気が更に出てくる。

 勝てないとしても一発殴りたくなってきた。理不尽なのはわかってます。


「それに闘うって誰と……?フィックスさんじゃないよね?あれ、一緒にいるの誰?」


 しかも俺に今気付いたのかよ。遅いよ。


「ああ、紹介するぜリント。こっちがアキラ。今の勇者。んでそっちがルシャナ。救世神な」


「初めまして」


「よろしくー♪」


「えっ……今の勇者!?」


 まあそりゃ驚くだろう。勇者本人ならシステムもどっから来たかもわかってるだろうし。

 名前からしてこいつも日本人だろうし、俺の見た目はいじってないから、日本人だというのも見てわかるだろう。

 なんでこの人せっかく異世界に来たのにこんな顔のままなんだろうとか思ってんだろうな。


「大室亨、日本人です。ラグビー部です。あっちでもこっちでも25歳です。高卒社会人7年目です。見た目は変えてません。よろしく」


 軽く先制攻撃。この世界の人からしたらわけわからん自己紹介だろう。

 ただ勇者には効いてるようだ。


「へ、へえ……日本から……」


「ニホンって国、やっぱりリントと同じ出身なのね。どこにあるのかわからないけど」


 マリーが反応する。日本出身だということは言ってあるのか。この世界じゃ誰も知らない国扱いなんだろうけど。これもありがちだな。


「え?で……アキラ…さんが、何で僕と闘うという流れに?」


 おう、やはり前の世界で何かあったのだろう。先程の俺の自己紹介でだいぶビビってらっしゃる。

 オタク趣味については仲間意識持たれると殴りづらいのでわざと隠した。


「いやー、こいつリントと違って理由がよくわからねえけどめっちゃ強いんだよ。だからどっちが上かなーと気になってさ。その話出したらマリーもフィオナもリントの方が強いって怒っちゃったんだけど」


 原因作ったのあなたですよフィックスさん……


「へ、へえ……そうなんですか……」


「恨みはないけど、リントの強さを教えてあげてちょうだい!」

「リントが負けるはずないです!」


 二人ともかなりぞっこんのようだな。自分の旦那が一番強くて格好いいというのを信じて疑わないようだ。今もいかにリントが強くて格好いいかを本人に言いまくっている。


「よ、よし!そこまで言うならやってやろう!先輩としての格の違いを見せてやる!!」


 お、褒められ乗せられて復活した。格好いいとこを見せたくなったのだろう。


「やったぜ!じゃあみんな庭に移動なー」


「ふふふ……この僕が契約したアキラくんの力に驚くといい……」


 フィックスとルシャナだけ上機嫌。ていうかルシャナはこの前俺の能力教えたはずなのにその自信はどっから来るんだ。



 こうして、広い庭に移動して、先代勇者vs現行勇者の決闘(?)を行うこととなった。

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