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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
おみまいするぞー
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14話 勇者の嫁2

 勇者の家へは歩きですぐに到着した。


「うわ、成功者の家だ」


 思わずそう口に出してしまった。

 家と言うより屋敷と言った方が良さそうなそれは、控えめに言って豪邸だった。

 この世界の価値、というか通貨すらまだ知らんが、日本円でなら首都という立地を考えても10億は下らなそうな立派な建物。独身実家住まいの俺からしたら違う世界の建物に見える。いや実際異世界なんだけど。


「リントは外出中みたいなので、中で待ってて下さい。少ししたら戻ってくると思いますから」


 と、フィオナに居間へ通された。

 ここへ来る途中に、年下だから敬語はいいですよと言われたので呼び捨てにすることにする。

 ちなみにしばらく敬語だったので見た目と違って礼儀正しい方なんですねと言われた。どうやら俺は例のあのオッサンと同類の荒くれ冒険者っぽく思われていたらしい。ちくしょう。


「お茶の用意をしますので掛けてお待ち下さい」


 そう言ってフィオナは家の奥へ行った。


「しかしでけー家だな。絶対持て余してるだろ」


「なー。まあアイツ色んな新技術とかも産み出してやたらと金持ってたから、このくらい屁でもねえんだろうけど」


「アキラくん、やっぱ勇者として名声を手に入れればこんな家も買えるんだよ!だから魔王倒そ?」


「うるせえまぶた千切るぞ」


 と、三人で他愛もない話をしていると、部屋にフィオナとは別の人物が入ってきた。


「あれ、リントのお客さん?」


 間の抜けた声と共に現れた女性は、ウェーブのかかったセミロングの茶髪で、露出の少ない黒いローブを着ていながら、大きな胸がぱっと見でわかるようなこれまた美人だった。

 おっぱい星人の俺からしたら即土下座して一発お願いしたくなるような人物である。

 しかし、この場所であの反応という事は……


「よーマリー。久しぶりだな。あ、アキラ、こいつも勇者の嫁な」


 やっぱりか。どんだけ羨ましい状況なんだ先代め。

 いや、それだけの大仕事をしたのは充分わかってるけども。


「あらフィックスじゃない。珍しい。知らない人もいるけど……今の仲間?」


 マリーと呼ばれた女性の俺を見る目が明らかにチンピラを見るそれである。ちくしょうここでもか……

 ちなみにルシャナの方はそんな目では見られていない。見た目だけは美青年だからな……中身は今のところただのクソ野郎なのに。

 ここは挨拶だけでもちゃんとしなければ。


「初めまして、大室亨と言います。縁あってフィックスと知り合い、是非ともフィックスの友人で勇者であるリントさんにお会いさせて頂きたくて押し掛けてしまいました。御迷惑をお掛けして申し訳ありません」


 言葉と合わせて軽くお辞儀をする。

 見た目と挨拶のギャップにマリーさんが少しぎょっとしたのが良くわかる。


「は、初めまして。…え?フィックス、この人こんな見た目だけど貴族が何かなの?」


「いや?アキラは平民だけど?」


「へー……こ、こんな人もいるのね」


 ん?何かただのギャップにしては驚き方が変だな。

 どういうことだ?

 と思ってると、ルシャナが疑問に答えてくれた。


「ああ、この世界には初対面だろうと年上だろうと、言葉遣いに気をつける文化なんてないからね。敬語使うのは貴族か王族か、あと騎士と聖職者くらいだからね。敬語使ってる平民なんてほとんどいないよ」


 マジかよ。なぜ今まで誰もツッコんでくれなかったんだ。


「ああ、そういや平民にしちゃやけに礼儀正しいヤツだなーとは思ってたわ」


 気になったんなら言ってよフィックス!


「え、じゃあフィオナは?」


「アイツは自分が貴族のお嬢様だから別に違和感なかったんじゃね?」


「そんなもんか?……じゃあ、例の絡んできたオッサンは?貴族だと思ったら喧嘩なんて売らないだろ?」


「馬鹿っぽかったから単純にそこまで頭が回らなかっただけでしょ」


「そんなもんか……」


「大体、君が日本人だから気になってるだけで、敬語の無い言語圏の人はこんなこと気にすらしないからスムーズに馴染めるんだけどね」


 ああ、神様パワーで自分のわかる言語で自然に話せるってダーナ様から説明受けてたけど、日本語だからこうなったのか…なんか損した気分だな……

 しかも、ここでフィックスが余計なキラーパスを出した。


「なあマリー、平民の癖に妙に礼儀正しい奴っていうと、誰か思い出さないか?」


「え?………え、もしかして、リントの知り合い?」


 いや、出身国は同じだろうけど多分知り合いではない。


「いや、フィックス、俺勇者とは会ったことないし……」


「え?でも何かしら関係はあるんだろ?」


 いや、関係というより共通点というか……


「やっぱりリントの出身と関係あるのね?はー、初めて出会ったわ。………でも全然似てないのね」


 マリーが俺の顔をまじまじ見つめる。美人に見られるのは悪い気はしないが、旦那と比べられてるんだと思うと微妙な気分である。

 どうせ先代は例の神様ボーナスで超絶イケメンなのだろう。


「……まあ、実際他人だろうから、似てはないだろうよ。多分出身が同じだから、ちょっと話をしに来ただけだ」


「そうなの。……出身が同じでも随分違うのね。人種からして違うんじゃない?」


 そりゃ先代はこの世界向けのイケメンに作り替えてるんだろうから違うだろうよ。あんまり顔のこと言うな。良くないのは自分が一番わかってるから。


「で、そっちの彼は……なんかどこかで会ったことあるような雰囲気がするわね……」


 台詞だけ聞くとベタなナンパの文句みたいだな。フィックスが気づいたから別に不思議じゃないけど。勇者の仲間ならそれなりに強いんだろうし。


「え?僕のこと口説こうとしてる?残念だけど人間の女の子じゃ僕とは釣り合わないかな!」


「いや、口説かないし…………人間の女の子?」


 アホの頭をひっぱたく。


「悪い、こいつ妄想激しくて自分のこと神様か何かだと思い込んでるから……」


 無理矢理フォローしたがルシャナがさらに反論する。


「痛いよ!そしてひどいよ!思い込んでるじゃなくて本物だよ!」


 やめろっつの。お前が救世神とバレたら俺も勇者だと思われる。


「ほら、こんな感じだから聞き流して……」


 どうにかスルーしてほしいが、苦しいか……?


「………やっぱり、雰囲気が似てるわ……あなた、本当に神様なんじゃない?」


 ………ダメだったか………


「諦めろアキラ。マリーはこういうの鋭いぜ。否定したって隅々まで調べられてどうせバレる」


 フィックスの言葉で諦めがつき、渋々正体をばらすことにした。

 ルシャナに発言の自由を与える。


「名乗っていいの!?よっしゃ!お察しの通り、救世神として降臨したルシャナです!そしてアキラくんは異世界から来て僕と契約した現勇者!!よろしくね!!」





「…………え?………この人が、リントと同じ勇者?」







 ………そりゃ、イケメンの旦那知ってればそういう反応になりますよね……

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