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副業勇者(仮)  作者: 安居剛
おみまいするぞー
12/44

12話 旅路で色々

 




 先代勇者について話していたら、御者のおっさんが急に叫びだした。



「すいませんフィックスさん!魔物が出ました!!お願いします!!!」



 通常、町を出て旅をする際は、自分たちで護衛を雇うか、高い魔除けのアイテムを買ってから出るのが普通らしい。馬車での旅の際は御者にも危険が及ぶ可能性があるので、それらの用意がないとなかなか雇えないそうだ。

 しかしそこでフィックスは、自分はSランク冒険者だから、何かあったら自分に任せればいい、と言ってすんなり契約を結んだようだ。

 その何かが起こったようである。



「よっしゃ任せろ!おっちゃんは幌の仲に隠れてな!」


 颯爽とフィックスが馬車から飛び降りる。

 よし、頑張れ!!



「行くぜアキラ!ルシャナ!すぐ片付けるぞ!」



 あ、俺も行くの?勝てるかわかんないんだけど。

 とりあえず仕方ないのでルシャナと一緒に馬車から降りる。



「ごめん、救世神は魔王の配下の者以外に手を出せないから……アキラくん、頑張って!」


「先に言えよそういう事は!!」



 見ると、フィックスが熊のような魔物に斬りかかっている。

 熊か……勝てない奴だ。



「ごめんフィックス!!そいつだと俺手出せないわ!!」


「マジか!じゃあ自分の身守っててくれ!」



 疑いもせず何の文句も言わず了解してくれた。すげえいい人。

 軽く返事をしながら、フィックスは5体も出てきた熊の魔物をものの数秒で切り伏せた。スキルも何も使ってなさそう。



「あー、知り合えて良かったわ」


「君がもう少し強い能力にすれば良かったのに……」



 ルシャナが文句を垂れる。

 仕方ないじゃん。最強能力で俺tueeeee!!とか性格的に俺無理だもん。

 その点自ら鍛えた筋肉なら心置きなく使える。


 ていうかお前もさっきみたいなことは前もって教えとけよ。



「終わったぜー」



 フィックスが何事も無かったように戻ってくる。

 御者のおっさんはお礼を言い、また俺達を乗せて進みだした。






 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○






「しかしアキラ、本当にさっきの魔物に勝てないのか?あいつ、お前が勝ったあの冒険者のおっちゃんでも余裕で倒せるヤツだぞ?」



 うえ、そうなのか。

 でも熊は無理だよ……



「ごめん、相性があるからさ……たぶん、弱めの魔物相手だと俺が勝てるやつの方が少ないよ」


「マジかよ、基準が全然わからねー」


「役に立てそうな時はちゃんと働くからさ……申し訳ないけどそれ以外は頼むわ」


「まあ、暇潰しに戦えるから俺は全然いいけどなー」




 とか言ってると、御者のおっさんがまた叫びだした。なんかさっきよりビビってる。



「な、なんでこんな昼間からこんな所に……フィックスさん!リッチです!リッチが出ました!!」


「お、珍しいな……そこそこ手応えあるから大歓迎だけど」



 フィックスが剣を持って降りようとする。

 ん?リッチって……あれ、人骨だよな?



「フィックス、リッチってどうやって倒すの?」


「ん、ああ、撃ってくる魔法をどうにかしながら近づいて、胸の辺りにある核を壊せば倒せるぞ」


「わかった、俺がやるわ」


「ただ、その撃ってくる魔法ってのが強いやつばっかで……え、今なんつった?」


「全部任せるのも忍びないからこのくらいは俺がやるよ」



 とだけ伝えて、馬車から飛び降りてみた。



「いやいや、さっきの熊の100倍くらい強い上級魔物だぞ!あいつらが無理ならリッチなんてもっとやばいだろ!」




 とフィックスが言ってる間にリッチが俺に向かって魔法で電撃を放ってきた。

 ので、パシッと軽く手で払いのける。



「!?」



 おお、骸骨のくせにリッチが驚いてるのがわかる。台詞をつけるなら「えっ!?今何した!?」って感じ。

 本当は払いのけなくても俺の体に触れた時点で無効化されるんだけど、ああやった方が実力で防いだ感するっしょ。



「ほら、これなら大丈夫でしょ」


「お?お、おう」



 珍しくフィックスが戸惑ってるのもわかった。

 フィックスを安心させ、リッチ目掛けて走り出す。



「ーッ!~~ッ!!」



 焦ったリッチが、炎やら氷やら飛ばしてくるが、全部無視して突っ込む。

 いよいよ目の前まで迫ると、リッチは身を守るためだろう、俺との間にバリアのようなものを出した。



「でも残念っ!」



 バリアをスルーし、リッチの頭部に走った勢いのままドロップキックをかます。



「ッ?ッ!?」



 何が起きたかわからないといった感じでリッチが吹っ飛んだ。

 その隙にその辺に落ちてた大きめな石を拾う。



「えーと、核…核…お、これかな?」



 地べたに倒れて混乱しているリッチの骨しかない体を観察し、フィックスに聞いた通り、胸の辺りに紫色に鈍く輝く、拳大のガラス玉のようなものを発見した。


 リッチが倒れたまま俺に炎を浴びせる。浴びてないけど。



「悪いな。……えい」



 ガシャァァン



 リッチの核に、その2倍ほどある大きさの石を叩きつけ、核は粉々に砕け散った。

 すると、リッチを形成していた骨も一緒に消滅していった。



「よし、成功」



 男大室亨、異世界での初魔物退治完了である。

 核が石で割れるか心配だったけど、ガラスっぽいからいけんじゃね?と思ってうまくいって良かった。


 いやー、これで少しは役に立てただろう。


 馬車に戻ると、呆れた顔のフィックスに声をかけられた。



「さっきも言ったけど、ほんと基準がわからねえ力だな……リッチなんて、例のあのおっさんだと10人いたって相手にならないヤツなのに…熊から逃げてた奴だとは思えねえな…」


「いや、たまたま相性がいいだけだから……」



 魔法が効かないから、俺にとってはただの骸骨だ。負ける道理がない。

 しかし、度々強さの比較対象にされるあのおっさんちょっと可哀想だな。もし会うことがあったらちょっと謝っとこう。


 ん?そういえば、今の戦闘を見てまたはしゃぎそうなはずなのに、やたらルシャナが静かだな。



「………………」



 見ると、珍しく、というか会ってから初めて、ルシャナが神妙な顔で何か考え込んでいる。



「おい、どうした?」


「………あ、すごいね!さすが勇者!あんな強い魔物をもう単独で倒しちゃうなんて!この調子で魔王も倒しちゃおう!!」


「だからやらねーっての」



 軽く金髪の頭を叩く。



「あいたっ!」



 全く、すぐに調子乗って勇者として最後までやらせようとしてくる。

 さっき様子が変だったのも気のせいか。相変わらずアホ面で叩かれたとこさすってるし。



「しかし、なんで昼間ッからこんな街道にリッチが出てきたんだろうな。珍しいこともあるもんだ」



 フィックスが不思議そうに呟く。

 やっぱり珍しいのか。ああいうアンデッド系は、夜か薄暗い場所にいるものって大体相場が決まってるもんな。



「ま、あんま気にしてもしょうがねえや。出発しようぜ」


「ほいほーい」



 俺達は馬車に乗り込み、再び王都へ向け進み始めた。





















 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 アキラとフィックスが会話している中、ルシャナがボソッと一言だけ呟いた。



「師匠に一応相談しとこうかな………」




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