11話 勇者に会いに
出発の朝。
フィックスと共に、町の馬車乗り場へ来た。
大小様々な馬車が何十台と並んでいて、馬に餌を与えたり、ブラッシングなどしている御者や、行き先や値段の交渉をする利用者たちで賑わっていた。
俺は所持金もなくここでもフィックスにおんぶに抱っこ状態なので、馬車のチョイスも任せることにした。
「アキラー!決まったぜー!」
フィックスに呼ばれて声の元へ近づくと、リヤカーに幌を付けただけみたいなサイズの、一頭引きの超ミニ馬車があった。
「え、フィックスってSランクなんだよね……?もっといい馬車あるんじゃ……?」
ルシャナが引いている。金出してもらうのに贅沢を言うなバカ。
「あ?ああ、こんなもん移動するためだけのもんなんだから、乗れりゃいいんだよ!3人乗って俺の荷物乗せりゃピッタリだ!」
「おっしゃる通りです」
「僕、神様なのに……」
文句を言うルシャナだったが、渋々馬車に乗り込んだ。
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馬車で出発して一時間ほど。
何も知らない俺は、フィックスにこの世界について色々聞いておいた。
今俺達がいる国は、この世界で最大の国土を持つ、ラフェリア王国という国らしい。そして、今向かっている王都というのが、首都である王都ラフェリア。さっきまでいた町から馬車で3日ほどだそうだ。
で、そのさっきまでいた町というのが、タストという町。『始まりの町』だとか『序章の町』だとか言われているらしい。というのも、歴代の勇者の物語を紐解くと、みんなタストの町で冒険者に登録したり、出生の地がタストの町だったりするそうだ。…ってことは、召喚の場合みんなあの教会から出てくるって事だよな。
あっさり出てきちゃったけど、あの教会そんなすげえ所だったのか。確かに今思い出すとめっちゃ広くて豪華だったわ。
今から会いに行く先代勇者も、あの町で初めて冒険者となったらしい。
「先代の勇者ってどんな人?」
フィックスに質問する。ちなみに、しばらく一緒に行動するのにいい加減堅苦しいと言われたので、タメ口で話す事になった。
「そうだなー、一言で言えば、クソ強かった。俺も、純粋に剣術のみのルールなら負けやしなかったが、なんでもありだと一回も勝てなかったな」
「まあ、魔王倒すくらいだからそうだろうなぁ」
「だから、俺的には、アキラとアイツが戦ったらどうなるか見てみたいんだけど」
期待を込めた目でフィックスが見てくる。
「いやいや、やんないよ?俺は平和的に話を聞きたいだけだからね?」
「ちぇー、つまんねえの」
残念そうにフィックスが肩を落とす。
相手は知らんが、俺は、出来るだけ戦闘などしたくないのだ。この能力で勝てる相手ばかりとも限らないからな。
「強さはともかく、他の情報は?」
「んー、年は……魔王倒したときで確か15だったかな。だから今年で20か。……あ、あと嫁が3人ぐらい居たな。あくまで結婚したのは3人で、惚れてる女はそれこそ何十人もいたけど」
なるほど。転生前がどんなヤツだったか知らんが、かなり異世界ライフを満喫しているようだ。
「なるほど……そう言えば、まだ若いんだからそいつがもっかい魔王倒せばいいんじゃないの?」
「言われてみれば確かに」
「おいルシャナ、どういうことだ」
「倒しても意味ないからだと思うよ」
倒しても意味ない?何でだ?
「倒しても救世神とその使いとしての力ですぐに封印しないと、魔王はその場で復活しちゃうからね。一度世界を救ったら、その救世神は昇格しちゃうから、その勇者はもう救世神の使いではなくなるってこと。それに、世界に救世神として存在できるのは常に一人だけだから、今魔王を封印できるのは僕だけってこと」
「じゃあお前先代ともっかい契約しろよ」
「それだと僕の手柄がなくなるから嫌だ!」
まぶたを引っ張る。
「いたたたたたたた!!いや!それに魔王を倒してこの世界に残った勇者はもうこの世界の住人として定着してるから!!救世神は異世界の人間としか契約できないから駄目なんだよ!!!」
まぶたを離す。
「んだよ、ちゃんとした理由あるならそっち言えよ」
「もう君とりあえずつねればいいと思ってるよね……」
殴らないだけ感謝してほしいものだ。しかも大してダメージ残らないんだし。
「いや、しかし本当仲いいなお前ら。神と勇者って気は全然しねえな」
フィックスが笑いながら言う。
「先代と一緒に旅してた時は神様はいなかったん?」
「ん~……今にして思うと、アイツが結婚した3人とは別にもう一人、やたら仲のいい美人がいたからそいつかもな。なんか、ルシャナと同じようなオーラのある奴だったし」
こいつと同じオーラというのは全然すごくない気がするが、フィックスがそう感じたのなら可能性は高いのだろう。
契約した神様まで美女とか、なんか腹立つ。
金髪が神のオーラのことを言われてニヤけてるので更に腹立つ。
「ていうかもしかして、勇者の一行って女だらけだった?」
「ああ、俺みたいにたまに一緒に行動する男はいたが、固定メンバーは女ばっかだったな。」
典型的なハーレムじゃねえか。どうせ色んなToLOVEる起こしてたんだろうな。
「よし、よくわかった。もしかしたら戦闘になるかもしれん」
「お、やっぱりやってくれんのか?」
思わず本音が出てしまったが、何となくイラついたのは確かだ。
俺も自分の性根がクズである自覚はあるので、そこは仕方がない。
まったく、色んな意味で会うのが楽しみになってきた。
神の単位は柱だろ、と思った方がいたらすいません。
ややこしいので人にしました。




