↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46歳の土方のオッサンが転生したら超美麗な伯爵令嬢に  作者: 山田✴ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/25

第02話 伯爵令嬢、社交界で施工不良を見つける


 転生して一週間。


 俺はついに、社交界デビューの日を迎えた。


「お嬢様。本日はくれぐれも言葉遣いにお気をつけください」


「分かってる」


「男性には丁寧に」


「分かってる」


「大声を出さない」


「分かってる」


「腕を組まない」


「分かってる」


「工事現場のような話をしない」


「…………」


「お嬢様?」


「分かってるって」


 マリアは心配そうな顔をしていた。


 当然だ。


 俺は四十六歳の土方のおっさん。


 今日は十七歳の超美麗伯爵令嬢として、王都の社交パーティーに参加する。


 ちなみに今日の服装は、淡い青色のドレス。


 鏡を見る。


「……すげぇ」


 何度見ても美人だ。


 前世では作業着と安全靴が似合う男だった俺が、今ではどう見ても貴族令嬢。


「この顔で『お疲れ様です』って言ったら、どうなるんだろうな」


「お嬢様」


「冗談だ」


     ◇


 会場に到着すると――


「まあ……!」


「グランベル伯爵のご令嬢だわ」


「なんてお美しい……」


「銀色の髪……」


 周囲から視線が集まった。


 俺は少し緊張した。


「……こういうの苦手だな」


「笑顔でございます」


「こうか?」


 ニコッ。


 周囲がざわつく。


「まあ……!」


「なんて素敵な笑顔!」


「お美しい……」


 俺は心の中で呟いた。


(現場だったら『歯を見せて笑え』って言われても困るんだけどな)


 そんなことを考えていると、一人の青年が近づいてきた。


「エレノア嬢」


「はい?」


「よろしければ、私と一曲――」


「すみません」


「え?」


「その前に聞きたいことがある」


「……何でしょう?」


 俺は青年の後ろを指差した。


「この屋敷、いつ建てた?」


「え?」


「外壁のひび割れ」


「……」


「窓枠も歪んでる」


「…………」


「あと、あそこの柱」


 俺は目を細めた。


「沈んでるぞ」


「…………」


 青年が固まった。


「なぜ……分かるのですか?」


「見れば分かる」


「いや、普通は分かりません!」


「そうか?」


「そうです!」


 そこへ別の貴族令嬢がやってきた。


「エレノア様、こちらへどうぞ」


「ああ」


 俺は歩き出した。


 しかし――


 ピタッ。


 止まる。


「……」


「どうされました?」


「床」


「床?」


「ここ、鳴る」


 俺は足で軽く踏む。


 ギィ……。


「ほら」


「…………」


「床板が浮いてる」


「…………」


「このままだと――」


 ギィィィィ……。


「抜けるぞ」


「きゃあああああ!」


 令嬢が飛び退いた。


 床板が少し沈む。


「…………」


「…………」


「…………」


 会場が静まり返った。


 俺は何事もなかったように立ち上がった。


「危なかったな」


「エレノア様……」


 誰かが呟いた。


「なぜ分かったの……?」


「経験だ」


「どんな経験ですか?」


「現場」


「また現場……」


 マリアが遠くで頭を抱えていた。


     ◇


 その後。


 俺は完全にパーティーの主役になってしまった。


「エレノア様、我が家の壁も見ていただけませんか?」


「うちの屋根もお願いします!」


「実は倉庫の床が……」


「お前ら、俺を何だと思ってるんだ」


「建築に詳しい令嬢です!」


「令嬢じゃねぇだろ!」


 思わず叫んだ。


 全員が静かになる。


 しまった。


 俺は咳払いをした。


「……失礼しました」


 優雅にスカートをつまむ。


「少々、声が大きくなってしまいましたわ」


 周囲から拍手が起こった。


「素晴らしい!」


「なんて堂々とした方!」


「さすがグランベル伯爵令嬢!」


「…………」


 俺は引きつった笑顔を浮かべた。


(違う)


(俺は今、ただ怒鳴っただけだ)


 そのとき、会場の奥から声がした。


「エレノア嬢」


 振り返る。


 そこに立っていたのは、王太子だった。


「少し、私の屋敷も見てもらえないだろうか」


「王太子殿下まで!?」


 俺は頭を抱えた。


「……どこが悪いんです?」


「全部見てほしい」


「全部?」


「屋敷全体だ」


「…………」


 俺はため息をついた。


「分かりました」


 そして心の中で呟く。


(貴族社会、面倒くせぇと思ってたけど……)


(仕事があるなら、まあいいか)


 こうして俺の社交界デビューは――


 なぜか建築診断会になった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。