↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46歳の土方のオッサンが転生したら超美麗な伯爵令嬢に  作者: 山田✴ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/23

第01話 伯爵令嬢、現場を見つける


 転生してから三日。


 俺はようやく、この世界の状況を理解し始めていた。


 名前はエレノア・フォン・グランベル。


 グランベル伯爵家の一人娘。


 年齢は十七歳。


 そして――


「お嬢様。本日は午前から礼儀作法のお稽古がございます」


「……はい」


「その後、ダンスのレッスン」


「……はい」


「午後からは歴史と地理のお勉強です」


「……はい」


「夕方には刺繍を」


「…………」


 俺は机に突っ伏した。


「地獄だ……」


「お嬢様?」


「いや、何でもない」


 前世なら朝六時に起きて現場へ行き、重機の音を聞きながら弁当を食っていた。


 それが今では。


「優雅に紅茶を飲みながら刺繍……」


 針を持つ。


 プルプルする。


「無理だろ」


「お嬢様?」


「俺、手先を使うならスコップのほうが得意なんだよ」


「……?」


「何でもない」


 侍女のマリアが首を傾げた。


「では、まず刺繍から」


「嫌だ」


「お嬢様?」


「これ、何に使うんだ?」


「花の刺繍を施すのです」


「花なんか描いてどうする」


「ハンカチに……」


「汗拭くならタオルでいいだろ」


「…………」


 マリアが無言になった。


 まずい。


 どうやら俺は、この世界の令嬢として色々と間違っているらしい。


     ◇


 昼過ぎ。


 俺は屋敷の中を歩いていた。


「……広いな」


 伯爵家だけあって、とにかく広い。


 廊下も長い。


 庭も広い。


 使用人も多い。


「これ、掃除だけで何人いるんだよ……」


 そんなことを考えていると――


 庭の奥から声が聞こえた。


「だから、この位置では駄目だ!」


「申し訳ありません!」


「やり直せ!」


 俺は足を止めた。


「……?」


 声のする方へ向かう。


 そこでは数人の男たちが、屋敷の離れを建てる工事をしていた。


「工事……」


 俺の目が輝いた。


「工事じゃねぇか!」


 気がつけば走っていた。


「お嬢様!?」


 マリアが慌てて追いかけてくる。


「ちょっと待ってください!」


「何だこの基礎!」


 俺は工事現場に入った。


「お嬢様、危険です!」


「この墨出し、ズレてるぞ!」


「…………え?」


 作業員たちが固まる。


 俺は地面を指差した。


「ここ、三センチくらいズレてる」


「え?」


「柱立てたら分かるぞ」


 職人の一人が慌てて測る。


「…………」


「…………」


「ほ、本当だ……」


「だろ?」


 俺は腕を組んだ。


「基礎ってのはな、最初が大事なんだよ」


 作業員たちが俺を見る。


「水平が狂ったまま上に積んだら、最後には全部狂う」


「お嬢様……」


「ん?」


「なぜそんなことをご存じで?」


「…………」


 しまった。


 令嬢らしい答えを考えろ。


「……本で読んだ」


「どんな本ですか?」


「現場監督の心得」


「…………」


「……嘘だ」


 俺は諦めた。


「前世で土方やってたんだよ」


「ぜんせ?」


「いや、何でもない」


 作業員たちは顔を見合わせている。


 そこへ――


「エレノア!」


 父親である伯爵がやってきた。


「こんなところで何をしている!」


「父上」


「令嬢が工事現場に入ってはいけない!」


「でも、この基礎――」


「危険だ!」


「安全帯つければいいだろ」


「…………」


「ヘルメットもあるぞ」


 俺は近くに置かれていた作業用の帽子を手に取った。


 被る。


 銀髪の超絶美人伯爵令嬢。


 作業用ヘルメット。


「…………」


「…………」


「…………」


 全員が黙った。


 俺は満足した。


「よし」


「何がよしなんだ!」


 伯爵が頭を抱える。


「お嬢様!」


 マリアも叫ぶ。


「その格好で街を歩くおつもりですか!?」


「歩かねぇよ」


「では、なぜ被ったのですか!」


「現場だからだ」


「令嬢ですよ!?」


「現場に身分は関係ねぇ!」


 作業員たちが、なぜか感動したような顔をしていた。


「お嬢様……」


「ん?」


「俺たち、今までこんなに現場を分かってくださる貴族様に会ったことがありません」


「そうか?」


「はい!」


 俺は少し照れた。


「まあ……仕事はちゃんとやろうぜ」


「はい!」


 男たちの声が揃った。


 その光景を見ていた伯爵は――


「……エレノア」


「何だ?」


「お前は一体、何を目指しているんだ?」


 俺は即答した。


「現場監督」


「令嬢をやれ!」


 伯爵の悲痛な叫びが、グランベル家の庭に響き渡った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。