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46歳の土方のオッサンが転生したら超美麗な伯爵令嬢に  作者: 山田✴ソラ


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第26話 伯爵令嬢、王宮の地下水路を発見する


 翌朝。


 俺は王宮の倉庫裏に来ていた。


 もちろん、鉄兜をかぶっている。


「親方、おはようございます!」


「おう。昨日の穴はどうなった?」


「周囲の土が崩れないよう、仮の支保工を設置しました。入口にも柵を設けています」


「よし。勝手に中へ入った奴はいないな?」


「はい。技術官にも確認していただいています」


 俺は掘削場所を確認した。


 昨日見つかった空洞は、思ったより大きいようだった。


 石積みの壁が見え、奥へ向かって通路のような空間が続いている。


「まずは内部の状態を確認する。人が入るのは、その後だ」


「親方、どうやって調べるんですか?」


「明かりを入れて、上から見える範囲を確認する。空気の状態も調べたいな」


 地下の空洞には、危険な空気が溜まっている可能性もある。


 酸素が足りなかったり、人体に良くないガスが溜まっていたりすることもある。


 見た目が安全そうだからといって、簡単に入ってはいけない。


「それから、出入口を塞がないように資材を置け。何かあったときに逃げ道が必要だからな」


「分かりました!」


 調査には、王宮の技術官も立ち会うことになった。


「エレノア嬢。こちらが昨日の調査結果です」


 技術官が古い記録を見せてくれた。


「この倉庫は、現在の王宮が建てられるよりも前からあったようです」


「そんなに古いんですか?」


「ええ。王宮の一部は何度も改築されていますから、地下に古い施設が残っていても不思議ではありません」


「なるほど」


 俺は記録を確認した。


 しかし、地下水路についての記載は見つからなかった。


「図面は残っていないんですか?」


「残念ながら、この周辺の古い図面は見つかっておりません」


「じゃあ、現物を調べるしかないですね」


 俺は地下の入口を覗き込んだ。


 石積みの壁は、かなり丁寧に作られている。


 目地には、古い接着材料のようなものが使われているようだ。


「これを作った職人は、かなり腕が良かったみたいだな」


「そう思われますか?」


「ああ。石の大きさが揃っていないのに、きれいに組み上げてある。水が流れることも考えて、底の高さを調整してるんだろう」


 俺は感心した。


 この世界にも、優秀な職人はいたのだ。


 安全確認の結果、入口付近の限られた範囲なら調査できることになった。


 ただし、奥へ進むことはまだ許可されていない。


 職人たちは照明を使い、入口から内部を照らした。


「見えますか、親方?」


「おう。もう少し奥を照らしてくれ」


 光が地下水路の壁を照らす。


 通路は人が立って歩けるほど高くはないが、奥へ向かって続いているようだ。


 床には土や小石が溜まっている。


 そして、壁の一部に小さな穴が開いていた。


「何だ、あれ?」


「壁に穴が開いているようですね」


 技術官も覗き込む。


「排水のための穴でしょうか?」


「いや、位置が少し高いな」


 俺は考えた。


 水路の底ではなく、壁の上部に穴がある。


 しかも、一定の間隔で続いているように見えた。


「もしかして、別の場所から水を集めていたのか?」


「別の場所から?」


「ああ。庭園や建物の雨水を、この水路に流していたのかもしれない」


 技術官が驚いた。


「つまり、王宮全体の排水設備だった可能性があると?」


「まだ分かりません。でも、その可能性はあります」


 俺は記録用の紙に簡単な図を描いた。


 水路の方向、壁の穴の位置、入口から見える範囲。


 後で調べるために、分かることは全部記録しておく。


 調査を続けていると、職人の一人が声を上げた。


「親方! こちらを見てください!」


「どうした?」


「壁の石に、何か刻まれています」


 俺は近づいて確認した。


 石の表面に、細い線が刻まれている。


 よく見ると、それは単なる傷ではなかった。


 矢印のような形と、数字らしき文字が並んでいる。


「これは……」


 技術官が顔を近づけた。


「古い文字でしょうか?」


「いや、何かの目印かもしれないな」


 俺は刻まれた印を紙に写し取った。


 矢印は水路の奥を指している。


 その下には、数字のような記号が三つ並んでいた。


「水の流れる方向を示しているんじゃないですか?」


「そうかもしれません」


 技術官は興奮した様子だった。


「もしこれが古い排水設備の記録なら、非常に貴重な発見です」


「ただ、今すぐ奥へ進むのは駄目です。まずは構造を調べて、安全に入れる状態か確認しましょう」


「分かっています」


 技術官は少し残念そうだったが、すぐに頷いた。


 その後、俺たちは入口付近の調査を終えた。


 分かったことは三つ。


 一つ目は、この地下水路が倉庫だけの排水設備ではない可能性があること。


 二つ目は、壁に複数の流入口が設けられていること。


 三つ目は、水の流れる方向を示すと思われる刻印が残っていること。


「これは大きな発見ですね」


 技術官が言った。


「王宮の古い排水設備が、まだ地下に残っているかもしれません」


「そうですね。もし使える部分が残っているなら、庭園の排水にも役立つかもしれません」


「しかし、古い設備です。再利用は難しいのでは?」


「状態次第です。壊れているところは補修する必要がありますし、詰まっているなら清掃も必要です」


 俺は地下の入口を見た。


「それに、こういう古い設備を調べるのは、今後の工事にも役立ちます」


「と申しますと?」


「昔の人間が、どうやって水を流していたのか分かれば、新しい排水設備を作るときの参考になります」


 技術官は感心したように頷いた。


「なるほど。過去の技術を学ぶわけですな」


「そういうことです」


 調査を終えて、王宮の庭園へ戻る途中。


 マリアが俺に尋ねてきた。


「お嬢様。地下水路の調査は、まだ続くのでしょうか?」


「ああ。安全確認が済んだら、もう少し詳しく調べたいな」


「やはり……」


「それに、あの水路を補修するなら、セメントの試験にも使えるかもしれない」


「セメントですか?」


「そうだ。水路の一部を補修して、長期間の耐水性を確認できる。もちろん、最初は小さな範囲で試すぞ」


 俺は少し考えた。


 古い水路を直す。


 新しい材料を試す。


 そして、王宮全体の排水設備を見直す。


 これは思った以上に大きな仕事になるかもしれない。


「よし。まずは地下水路の全体像を調べよう」


「お嬢様、また仕事が増えましたね」


「そうだな」


「嬉しそうですね……」


「そりゃそうだろ。こんな面白い現場、なかなかないぞ」


 マリアは深いため息をついた。


 俺は鉄兜の位置を直し、王宮の建物を見上げた。


 この王宮の地下には、まだ知られていない設備が眠っている。


 それを見つけて、調べて、必要なら直す。


 考えただけで、現場魂がうずいてきた。




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