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46歳の土方のオッサンが転生したら超美麗な伯爵令嬢に  作者: 山田✴ソラ


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第25話 伯爵令嬢、古い倉庫の雨漏りを調査する


 翌朝。


 俺は王宮の建築技術官に案内され、古い倉庫へ向かっていた。


 もちろん、鉄兜は装備済みだ。


「こちらが問題の倉庫です」


「なるほど……」


 目の前にあるのは、石造りの大きな建物だった。


 王宮で使う備品や、古い家具、修繕用の材料などを保管しているらしい。


 建物自体は頑丈そうだが、壁の一部に黒ずんだ跡がある。


「雨が降ると、こちらの壁に水が染み込んでくるのです」


「中も見せてもらえますか?」


「もちろんです」


 俺は建物の外周を一周した。


 壁の状態、屋根の形、雨樋の位置、地面の傾斜。


 まずは外側から確認する。


「お嬢様、何か分かりましたか?」


 マリアが尋ねてきた。


「まだだ。まずは水がどこから来ているのか調べないとな」


 俺は壁の黒ずんだ部分を指で触った。


「この辺りだけ汚れ方が違うな」


「雨水が染み込んでいるからでは?」


「そうかもしれない。でも、壁の上から流れてきている可能性もある」


 俺は少し離れて屋根を見上げた。


 屋根の端に取り付けられた雨樋が、途中で途切れている。


「……あれか?」


「どうされました?」


「雨樋が途中で終わってる。あそこから水が壁に流れ落ちているんじゃないか?」


 技術官が屋根を見上げた。


「確かに、あの部分は以前から問題になっていました。しかし、壁の内側まで水が染み込む理由は分かっておりません」


「じゃあ、まず屋根から確認しましょう」


 建物の中に入ると、壁の内側にも黒ずんだ跡があった。


 床の隅には、雨が降った後に水が溜まるらしい。


「ここも濡れるんですか?」


「はい。強い雨が降った翌日は、床に水が溜まっていることがあります」


「床の排水は?」


「ありません」


「……そりゃ困るな」


 俺はしゃがみ込み、床と壁の境目を確認した。


 壁の下部にも湿気が残っている。


 屋根からの雨水だけでは説明できないかもしれない。


「外の地面も確認しましょう」


 倉庫の裏手に回ると、建物の周囲には石畳が敷かれていた。


 しかし、建物に向かってわずかに傾斜している。


「これは……」


 俺は地面にしゃがみ、石畳の高さを確認した。


「水が建物に向かって流れるようになってますね」


「え?」


 技術官が驚いた。


「本当ですか?」


「雨が降ったら、ここに水が集まる。壁際に水が溜まって、少しずつ内部に染み込んでいる可能性があります」


 俺は地面に棒で簡単な図を描いた。


「建物の周囲は、基本的に外側へ水が流れるようにしないといけません。壁際に水を集めるのは良くない」


「なるほど……」


「それに、雨樋の水もこの辺りに落ちている。屋根からの水と地面の水、両方が原因かもしれません」


 技術官は腕を組んだ。


「これまで何度も壁を補修してきましたが、原因がそこにあったとは……」


「壁だけ直しても、水が入り続けたら意味がありませんよ」


 俺は立ち上がった。


「まずは雨樋を修理して、雨水の流れを変えましょう。それから建物の周囲に排水溝を設けます。壁の補修は、その後です」


「分かりました。すぐに職人を手配しましょう」


「待ってください。排水溝を作るなら、地面の中も確認したいです」


「地面の中ですか?」


「水がどこへ流れるのか、出口が必要ですからね」


 その日の午後。


 倉庫の裏手を少し掘り返して、地中の状態を調べることになった。


 職人たちが石畳を外し、土を掘り進めていく。


「親方、こちらに何かあります!」


「何だ?」


 俺はすぐに近づいた。


 掘り進めた場所に、平たい石が並んでいる。


 土を取り除くと、石の列が奥へ続いていた。


「これは……古い排水路か?」


 技術官も驚いた顔をしている。


「このようなものがあったとは……」


 俺は石の配置を確認した。


 ただ石を並べただけではない。


 底にはわずかな傾斜があり、水を流すための構造になっている。


「昔の人間も、ちゃんと考えて作ってたんだな」


「かなり古いもののようです」


「壊さないように慎重に掘れ。全部を露出させる必要はない。まずはどこにつながっているか確認するぞ」


 職人たちが慎重に土を取り除いていく。


 すると、排水路の先に小さな空間が見えてきた。


「親方、奥が空洞になっています!」


「ちょっと待て。無理に入るなよ」


 俺はすぐに作業を止めた。


 空洞があるなら、崩落の危険もある。


 内部の状態を確認するまでは、人を入れるわけにはいかない。


「周囲に柵を設置。掘削も一旦中止だ。まずは上から内部を確認する」


「了解しました!」


 技術官が不思議そうに尋ねてきた。


「エレノア嬢、そこまで警戒する必要があるのでしょうか?」


「あります。地中の空洞は、見た目以上に危険な場合があります。安全が確認できるまでは近づかない方がいいです」


 俺は穴の中を覗き込んだ。


 暗くて奥までは見えない。


 しかし、石で組まれた壁らしきものが見える。


「これは、ただの排水路じゃないかもしれないな」


「どういうことでしょう?」


「もっと大きな水路につながっている可能性があります」


 技術官の表情が変わった。


「まさか、王宮の地下にそのような施設が?」


「まだ分かりません。調査してみないと何とも言えませんね」


 夕方。


 俺は倉庫の調査結果をまとめていた。


 雨漏りの原因は、屋根だけではなかった。


 雨樋の不具合。


 建物に向かって傾いた地面。


 そして、地中に埋まっていた古い排水路。


 いくつかの問題が重なっていたようだ。


「お嬢様。結局、セメントの試験はどうなさるのですか?」


 マリアが尋ねてきた。


「もちろん使うつもりだ。ただし、先に排水の問題を解決する」


「壁の補修には使えそうですか?」


「試験結果が良ければ、小さな範囲で試してみる価値はあるな」


 俺は記録帳を閉じた。


「それにしても、あの地下の空洞が気になる」


「また新しい調査ですか?」


「そうだな。あれだけの石組みなら、かなり古い施設かもしれない」


「お嬢様……」


 マリアの声が少し低くなった。


「何だ?」


「明日は、別の予定が入っていたはずですが」


「ああ、王宮の庭園の確認だな」


「その後は?」


「地下水路の調査だ」


「やっぱり!」


 マリアが頭を抱えた。


 俺は笑いながら、鉄兜を手に取った。


 新しいセメントを作ったと思ったら、今度は地下水路か。


 この世界には、まだまだ調べるものがたくさんある。


 現場仕事は、やっぱり面白い。




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