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46歳の土方のオッサンが転生したら超美麗な伯爵令嬢に  作者: 山田✴ソラ


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第27話 伯爵令嬢、王宮の古い図面を探す


 地下水路の調査から数日後。


 俺は王宮の資料保管室に来ていた。


 目的は、古い王宮の図面を探すことだ。


 地下水路がどこまで続いているのか。


 どこから水が流れ込み、どこへ排出されているのか。


 それを調べるには、昔の図面があった方がいい。


「エレノア嬢。こちらが建築関係の古い資料です」


 案内してくれたのは、資料保管室の管理を担当している男性だった。


「かなり古いものもありますので、取り扱いにはご注意ください」


「分かりました。ありがとうございます」


 目の前には、木箱や巻物、古い書類が大量に並んでいた。


 俺は思わず息を吐いた。


「おお……」


「お嬢様、何を感心していらっしゃるのですか?」


 マリアが不思議そうに尋ねる。


「いや、こういう資料は大事なんだよ。現場を調べるとき、昔の図面が残っているかどうかで作業効率が全然違う」


「そうなのですか?」


「ああ。過去にどんな工事をしたのか分かれば、無駄な掘削を避けられることもあるからな」


 俺は袖をまくった。


「よし。探すぞ」


「お嬢様、ここは資料保管室です。現場ではありません」


「資料を探すのも現場の準備だ!」


「そういう問題ではありません!」


 資料を調べ始めて、しばらく時間が経った。


 王宮の建物は何度も増築や改修を繰り返している。


 古い図面の中には、現在とはまったく違う配置になっているものもあった。


「これは昔の厨房か」


「こちらは兵舎の図面ですね」


 マリアが書類を確認している。


「お嬢様、こちらは庭園の図面のようです」


「見せてくれ」


 俺は巻物を広げた。


 そこには、現在の庭園とは異なる配置が描かれていた。


 中央には大きな池。


 その周囲に水路が張り巡らされている。


「へえ……昔は池があったのか」


「現在の庭園にはありませんね」


「埋め立てたのかもしれないな」


 俺は図面をじっくり眺めた。


 すると、庭園の端に細い線が描かれていることに気づいた。


「これは何だ?」


「排水路でしょうか?」


「そうかもしれない」


 線は庭園から建物の下へと伸びていた。


 そして、その先は図面の端で途切れている。


「この図面だけでは分からないな。別の資料を探そう」


 さらに資料を探していると、管理担当の男性が古い木箱を運んできた。


「こちらは、かなり古い時代の建築資料です。整理が終わっていないものもありますが、何か手掛かりがあるかもしれません」


「ありがとうございます」


 木箱の中には、古びた紙が何枚も入っていた。


 俺は一枚ずつ慎重に広げていく。


 そして、その中の一枚を見た瞬間、手が止まった。


「……これだ」


「何か見つかりましたか?」


「ああ。地下の設備に関係する図面かもしれない」


 紙には、王宮の建物を上から見た図が描かれていた。


 その下には、別の線が重ねて描かれている。


 建物の地下を通る水路らしき線だ。


 しかも、複数の建物から一本の大きな水路へ集まっている。


「これは……」


 俺は図面を広げ直した。


 庭園、倉庫、厨房、浴場。


 それぞれの建物から排水路が伸び、王宮の外側へ向かっている。


「やっぱり、王宮全体の排水設備だったんだ」


 技術官も呼んで、図面を確認してもらうことにした。


 しばらくして、技術官が資料保管室にやって来た。


「エレノア嬢、見つかったという図面はどちらですか?」


「こちらです」


 俺は図面を指さした。


 技術官は身を乗り出して、しばらく黙って眺めていた。


「これは……王宮の地下水路の図面ではありませんか」


「そう思います」


「しかし、こんなものが残っていたとは」


 技術官は驚きを隠せない様子だった。


「この線を見てください。倉庫の近くにある水路と、ここに描かれた水路の位置が一致しています」


「ということは、先日発見した水路は、この図面の一部だった可能性が高いですね」


「ええ。さらに、こちらをご覧ください」


 技術官が図面の端を指した。


 そこには、王宮の外へ続く大きな水路が描かれていた。


「この先は、王宮の外にある川へつながっていたようです」


「なるほど。雨水や生活排水を、まとめて外へ流していたんですね」


「そう考えられます」


 俺は図面を見つめた。


 昔の王宮には、かなり大規模な排水設備があったらしい。


 現在の設備とは別に、地下に古い水路が残っている可能性がある。


「ただ、問題があります」


 技術官が表情を曇らせた。


「この図面には、途中から線が消えている部分があります」


「改修で埋められたのでしょうか?」


「その可能性はあります。実際、数十年前に王宮の一部を大規模に改築した記録があります」


「そのときに、古い水路を塞いだのかもしれませんね」


「ええ」


 俺は図面を指でなぞった。


 水路の一部が使えなくなっているなら、現在の排水設備に負担がかかっている可能性もある。


 これは調べる価値がある。


「よし。次は現地調査だな」


 俺は図面をまとめた。


「お嬢様、もう調査に行かれるのですか?」


「当然だ。図面と実際の場所が一致しているか確認しないとな」


「しかし、地下水路の調査は危険なのでは?」


「だから、ちゃんと準備するんだよ」


 俺は技術官に向き直った。


「まずは図面にある水路の位置を、地上から測量したいです。掘削はその後。地下の状態が分からない場所を、いきなり掘るわけにはいきません」


「分かりました。測量に必要な人員を手配しましょう」


「それから、現在の排水設備の図面も確認したいです。新旧の水路がどこでつながっているのか、比較する必要があります」


「承知しました」


 技術官は図面を大切そうに巻き直した。


「エレノア嬢。今回の発見は、王宮にとって非常に重要なものになるかもしれません」


「そうですね。もし古い水路が一部でも使えるなら、庭園の排水改善にも役立つと思います」


「陛下にも報告しておきましょう」


「お願いします」


 資料保管室を出た後、マリアが俺の隣を歩いていた。


「お嬢様。地下水路のことばかり考えていらっしゃいますね」


「そりゃそうだろ。あんな立派な設備が地下に残っているんだ。調べないわけにはいかない」


「でも、セメントの試験も途中ですよね?」


「そっちも続けるぞ。水路の補修に使えるかもしれないからな」


「……結局、両方なさるのですね」


「そういうことだ」


 俺は笑った。


 この世界の建築技術は、まだまだ発展の余地がある。


 昔の職人たちが残した技術を調べ、新しい材料を試し、より良い建物を作る。


 やることは多い。


 だが、それが楽しい。


「よし。明日は測量だ!」


「お嬢様、今日はもうお休みください!」


 王宮の廊下に、マリアの声が響いた。




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