第4話
「少し落ち着いた?」
「うん、ありがとう遠藤さん、ごめんねこんな取り乱しちゃって」
「全然謝らないで」
「話聞いてくれる?」
「うん、聞かせて」
「私金曜日バイトの面接受けたんだけど、また不採用で、今11連敗中なの、凄いでしょ?(笑)
私左手が思うように自由に動かせないの、高校1年生の時に病気の手術して、その後遺症みたいな感じで左手に麻痺が残っちゃって、面接の時は正直に全部打ち明けてた、だから左手麻痺してる人なんてみんな採用しないの。それでまた不採用だったのが悲しくて、、慣れたはずだったんだけどな、遠藤さんには隠せなかったみたい(笑)」
私は麗舞ちゃんの話を聞いてしばらく言葉が出なかった。私も病気に悩まされてきた大変な人生だったけど、体が自由に動かないなんて想像も出来なかった。
「親御さんにはちゃんと辛いってこと話してるの?」
「... 」
「ううん、なんにも話してない。両親には入院とか手術とか沢山心配かけたから、もう心配なんてかけれない。だから何不自由ない普通の大学生として家では過ごしてる。」
「麗舞ちゃん、、どれだけ1人で頑張ってきたの、、?私想像もできないよ。そんなの麗舞ちゃん耐えられるわけないよ、そんな左手麻痺してるのに1人で抱え込むなんて、、」
「別に私は頑張ってないよ。ただ毎日親に心配かけないように、生きてきた、それだけ。苦しいことも、辛いことも私が1人で我慢すればみんな何事も無いように平和に暮らせる。それでいいの。」
「そんなのだめだよっ!!だめだよそんなの。ねえ麗舞ちゃん、もっと自分を大切にして?だめだよそんなの、麗舞ちゃん壊れちゃうよ、私嫌だよ、そんな自分を犠牲にするやり方なんて」
「もう壊れてるからいいんだよ別に、もうどうしようもない。私ね、もう左手治すの諦めてるの。実はね手術直後、左半身は完全に動かなかったの。右半身も少し麻痺してた。」
「え、、?何それどういうこと」
「そのままの意味だよ。私の病名ね、海面状血管腫っていう病気なの。しかも脳幹ていう場所にその血管腫が出来ちゃってね。脳幹って人間の神経が全て詰まってるような場所なの。手足を動かしたり、食べ物を食べるための喉を動かしたり、笑うために顔の筋肉を動かしたり、そんな大事な場所に血腫が出来た、それを摘出するには正常な神経を壊す必要があった。だから脳幹の手術をした後私の体は完全に壊れた。」
「え、でも麗舞ちゃんは今歩いて、学校に通ってる、、壊れてなんかないよ、、。」
「そうだね。今は普通に歩けてる。リハビリ頑張ったんだ。何ヶ月も、いや何年もかな。ひたすら歩くための練習。辛かったなーリハビリ笑」
そうやって笑うように軽く言ってくる麗舞ちゃんが少し怖かった。でもそれと同時に凄く悲しくなった。そんな笑った彼女の顔はやっぱり普通の人とは違くて、少し歪んだ笑顔だった。
「リハビリ頑張ったんだよ。諦めないで、また動かせるように、歩けるように。それで頑張って歩けるようになった。でも数年やっても左手だけは元に戻らなかった。何回も治るって期待した。いつか元に戻るって期待した。でも元に戻らなかった。この壊れた腕だけは元に戻らなかった。だからもう諦めたの。」
「でもね、左手のこと諦めたら、左手が治るって信じてた時より、気持ち楽になったんだ。もう頑張らなくていいんだって思ったら、前より楽になったの。」
麗舞ちゃんを思いっきり抱きしめる
「麗舞ちゃん話してくれてありがとう。
麗舞ちゃんもう1人で頑張らなくていいよ。今まで本当によく頑張ったよ。凄いよ麗舞ちゃん。1人で戦って、必死に生きて、それで親にまで心配かけないように気を使って。優しすぎるよ麗舞ちゃん。」
「優しいのは遠藤さんの方だよ。こんな私にここまで寄り添ってくれて。」
「こんな私じゃないよ麗舞ちゃん。麗舞ちゃんはもっと自分に自信を持った方がいいよ。麗舞ちゃん自分が思ってるよりずっとずっと凄いことしてるんだよ?だめだよそんなに自分を卑下しちゃ。」
「だって私、左手元に戻せてないし。他の人みたいに体を上手く操れない。自分に自信なんて持てないよ。」
「なら私がこれから嫌でも麗舞ちゃんに自分に自信が持てるようにするよ。覚悟してね?絶対に認めさせるから。」
「遠藤さん、、自分に自信を持つか、。
全く想像できないや。正直そんな未来来ないと思う。」
「私が絶対麗舞ちゃんの心を変えるから。
期待していいよ!」
「期待ねえ〜、まあ期待しとくよ、ほんの少し。」
「うんそうして。
ねえ、この後一緒に夜ご飯食べに行かない?
もっと麗舞ちゃんと仲良くなりたいな。」
「いいよ。行こっかご飯。
遠藤さん、話聞いてくれてありがとね。」
「ううんこちらこそ、話してくれてありがとう。」
初めて他人に自分のことを話した。いままで
必死に隠してきたのに。多分遠藤さんは私が自分に自信を持てない理由を分かっていない。私は自分に自信が持てない理由、いや、持たない理由は自分で分かってた。それが遠藤さんに理解される日が来るのかは分からない。でも、それでも、人生で初めて誰かと繋がれた気がした




