12 激闘ー1
来襲
十二 激闘
新太のオリビアとの結婚の儀の日取りが決まり、ルネが言い出して内々のパーティーを開く事に決めた。パーティーと言っても、ただ集まってわいわい騒ぐだけだ。
それにメンバーは、新太の他は美月とクレマンとルネだけだ。
リリアも誘おうという事になったが、やはりわだかまりが有るかもしれない。
今回は、見送った方がいいだろうと誘わなかった。
オリビア王女も候補に挙がったが、やはり無理だろう。未来の王を誘う訳にもいかない。
新太と美月以外の2人は、この惑星が所属している、銀河というものを旅したいと言い出した。美月に聞くと、この惑星が所属しているのは《アンドロメダ大星雲》という銀河らしい。
新太の生まれ故郷である《地球》という惑星は、《天の川銀河》の中に有ると言うのだ。
《アンドロメダ》は《天の川》の直ぐ近くに有る。
その銀河の旅行を美月に提案すると、快く引き受けてくれた。
「でもね、絶対に安全なんてものは無いのよ。ましてや、銀河の中を旅するという事は、私でも知らない現象や事故に遭遇するかもしれない。
アラタや皆さんに何かあると困るし、もう少し近くにしない?隣の惑星とか?ゆっくり行けば、結構楽しいわよ。」
美月が言った。
隣の惑星でも、ここから8000万キロも有る。3人は、それで手を打った。
その日は案外直ぐに来た。
用意するものも、これと言ってない。全てはアローで調達できる。
遠足に行くような気分で、4人はシャトル8に乗り込んだ。このまま隣の惑星まで行ってもいいのだけれど、やはりアローにした。
全速力で行けば、ジャンプを使用しなくとも1時間で行く。ジャンプを使えば、それこそあっという間だ。でも近すぎて、ジャンプは使えない。
念のためにと、それぞれのブレスレットとネックレスを点検する。
アローは万全だ。いよいよ出発する。
何時もの通り、軌道上のアローへはシャトルで行った。アローへ着くと、ルネの希望でアローの操縦を任せ軌道上を離れた。
周回軌道を離脱した後は、自動操縦にする。
隣の惑星までは、12時間に設定した。
そう言えば、この惑星も隣の惑星も、まだ名前がない。惑星という概念がないのだから仕方がない。そう新太が指摘すると、美月が提案した。
「では、皆さんの惑星と、隣の惑星の名前を付けたらいかがですか?それを正式名にして、私の母星のカザムへ報告させて頂きます。」
すると、クレマンが手を上げた。
「とても厚かましいのだけれど・・・。私とルネは、え~っと家族になります。」
美月と新太が驚いている。
たしか、ルネは19歳でクレマンは32歳のはずだ。でもそれは、うすうすは分かっていた。お似合いのカップルだ。新太の結婚と合わせて、お祝いが重なった。
アラタと美月が《お~っ》と言って、拍手をする。
「そ、それで、出来れば私たちの惑星を私の故郷の名前デュポン、今から行く惑星をルネの苗字のリシャール、と名付けさせて頂けませんか?」
これには、新太も美月も異存はない。
「それでは、そう登録するようにカザムへ連絡しますね。」
この先、どのようになるかは分からない。でも、取り敢えずはそう決定した。
そうしている間に、デュポンの月を通過しようとしている。
「月へ少し寄り道しよう。」
アラタが提案した。デュポンから見ると、その月は夜緑色に輝く。アラタも初めて月の傍を通過する事になったが、近くで見るとその緑色は植物の色だった。
「へえー、命が有る。」
月の大地は草原になっていて、その草原の殆どが浅い沼地のようになっている。高い山も谷も有り、大河も流れている。
海は殆どなく、サーチすると魚のような小動物は居たが、大きな生物は見当たらない。哺乳類も、人のような高等生物もまだ生まれていなかった。
何千年もすれば、此処にも人が現れるのだろうか?
その月を低空で何周かして、また離脱した。
こういう景色を、美月は何度も経験しているのだろう。でも新太たち3人は、珍しくて外ばかりを見ていた。
それから8時間。そろそろリシャールへ着く頃だ。
前方にリシャールが見えて来た。
美月が、計器を見ながら怪訝な顔をしている。それに気づいた新太が聞いた。
「ミツキさんどうしたの?」
「何か、おかしい。あの時と、様子が似ている。」
あの時とはどの時なのだろうか?
「アローの警報は鳴っていないのだけれど、私のセンサーは危険を察知している。アラタと、ハルトが襲われた時もこんな感じだった。」
それを聞いて、新太は緊張した。あの時の記憶が甦って来た。吐く息が、苦しくなってくる。
クレマンもルネも、心配そうにしている。
「ゴメン、またみんなを巻き込んでしまったようだわ。みんなの言うように、銀河へ向かえば良かった。あの時の二の舞にならなければいいけど。みんな、覚悟だけはして。戦闘になる可能性が高いから。」
美月が、珍しく動揺している。それほど強敵なのか?
周りには何も見えない。ただリシャールと名付けられた惑星が、漆黒の宇宙空間に浮かんでいるだけだ。
アローがそのリシャールへ近づくと、その影から大型の宇宙船艦が現れた。
新太の心臓が、ドクドクと音を立て始めた。額から汗が流れ落ちる。
《アラタ~、逃げろ!》そう言う父の声が聞こえるような気がしてきた。
ルネは、クレマンの腕に縋り付いている。そのクレマンも、緊張したおもむきでディスプレイに映ったその戦艦を見つめている。
見覚えのある戦艦だ。ジンベイザメに似た形。艦橋の横のマークも同じだ。戦国時代の武将の家紋に似ていながら、何かの顔にも見える。
間違いない、あのアローを沈めたあの宇宙戦艦だ。
アローは、最強のシールドを張った。新太たちも、パーソナルシールドを最強にした。
万全の準備をして、その戦艦と対峙する。美月が通信を開始した。
「こちらはカザム第四宇宙基地所属、探査船アロー。そちらと通信を求める。」
全周波数、全言語で発信した。
しばらく待ったが、返事は来ない。もう一度呼びかける。
「こちらはカザム第四宇宙基地所属、探査船アロー。そちらと通信を求める。」
その通信がまだ終わらないうちに、ジンベイザメの口の辺りが赤く光った。
直ぐに、赤球が放たれアローへ向かってきた。魚雷だ。
次の瞬間、大きな音と共に衝撃が来た。船体が揺れる。でも、ダメージはなさそうだ。
続けて、2発3発と魚雷が襲って来る。美月はそれを巧みにかわしていく。
「こちらはカザム第四宇宙基地所属アロー号。貴艦に敵意は無い。攻撃を中止されたし。」
何度も発信しても、攻撃は止まない。通信も、一切交わす意思もなさそうだ。
仕方がない、逃げる事にした。
「みんなシートベルトはしているよね?ジャンプするわよ。」
あのエネルギーによるジャンプなら、大抵の宇宙船は追いつけないだろう。そう計算してのジャンプだ。
美月が操作すると、アローの前面に大きなワームホールが現れた。そこへアローは突っ込んでいった。
2~3秒後に、ワームホールは抜けた。そこはもう別の宇宙空間だ。
もう追っては来られないだろうと思っていたところ、其処から15秒ほどしてあの敵軍艦が現れた。
現れると同時に、また魚雷が発射される。衝撃が来た。
「なんだ、あいつは。海賊か?しつこいな。」
クレマンが叫んだ。あのマークからすれば、どこかの軍に所属している可能性が高い。ところが、一切の通信を拒否しているようだ。それにあのワープした時の速さ。
アローと同等の、エネルギーを保持していると考えてもよさそうだ。そうすると、魚雷もビーム砲も、従来の宇宙戦艦よりも強い可能性があった。
「仕方がない。応戦しよう。」
アラタは言うと同時に、ビーム砲を敵艦へ向けて掃射した。
ビーム砲は狙い違わず、その側面へ帯状に命中する。敵艦にも損傷は見られない。
「やはり、シールドも強いようね。」
美月が呟いた。敵艦は、ビーム砲を使用していなかった。今度も又魚雷攻撃だ。アローが逃げる方向を予測して、何発も撃ってくる。
今度はアローも避けきれず、2発の魚雷をお見舞いされた。
最初の衝撃から、続けて大きな振動が来た。
「アローのシールドはどう?大丈夫?」
ルネが心細そうに聞いた。
「全然!心配しないで。」
ところが、次の攻撃は今までと違っていた。ジンベイザメの口の辺りが横一面に、長い時間黄色に光った。するとそこから、8本の光が枝分かれしてアローへ迫ってくる。
光は全方向へカーブしながら、2本が側面へ、2本がその裏面へ、そして2本は真上から、そして残りの2本はそれぞれ正面と後方からアローへと到達した。
「何かに掴まれ!」
思わず新太が叫んだほどだ。今まで感じた事のないほどの大きな音と、マグネチュード9クラスの揺れが来た。
それが30秒ほどの間に、続けて8回来たのだ。そのビームは時間差で、アローのあらゆる場所へ命中している。
さしものアローも、今度ばかりはダメージを受けたと思った。
ところが、攻撃システムには何の支障も出ていない。新太は敵艦の艦橋めがけて、3発の魚雷を放った。あのエネルギーを蓄えた魚雷だ。
魚雷は、左側面の艦橋へ続けて命中した。それまで絶えず動いていた敵艦が、一瞬停止したように見えた。
「効いているぞ。」
敵艦の内部の様子は分からない。それでも何らかの損傷を与えたようだ。
そんな時、ルネが何かに気付いたようだ。
「あのー、こんな時に済みませんが・・。」
と聞いている。
「なに?ルネさん。」
美月が優しく聞いている。
「私、こんな戦闘は初めてなんですが、こういう戦闘には、小さな戦闘機は使わないものなのですか?美月さんも新太さんもあのシャトル2を出す様子がないし、敵艦も戦闘機を繰り出してきていませんよね。」
そう言われればそうだ。以前の戦闘でも、敵艦は戦闘機を発進させていなかった。アローには戦闘機は1機しかなかった事と、乗組員も居なかったのだから仕方ないとしても、敵艦には相当数の乗組員が要ると考えてもいい。
戦闘機でかく乱したり、囮に使ったりと使いようは有るだろうに、と思ってしまった。
「今まで出てこなかったという事は、戦闘機は無いんじゃない?」
クレマンの言葉だ。
続きは明日。 エピローグ




