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11  休息

親善大使

           十一     休息


 《悪事千里を走る》ではないが、悪いニュースはこの世界でも瞬く間のうちに広がったようだ。アトスと言う国の、デュボンという街が、空から降ってきた大きな魔物によって滅ぼされた、という噂だ。


その噂話を、新太はアンバシド国の王都で聞いた。話し相手は、ルネだった。

「ご主人様、こんな話を聞きました。」

と言って、聞かせてくれたのだ。


ルネは、いまだに新太の事を屋敷内では《ご主人様》と呼んでいる。

まさしくそれは、新たちが退治したあの宇宙生物の巨大生物の事のようだ。


アトスという国は、アンバシドともセルレイとも国境を接していない小さな国だった。

ただ、国交は両国ともあるようだ。


その時点では、まだ噂話としてしか聞こえていなかったから、両国とも正式な発表や支援の申し出はアトスへは出していなかった。


ただ、当事者であった新太は違う。あの惨状を()の当たりにしている。

王城へ出向き、オリビア王女を通して国王ルオンヌへ報告した。

ルオンヌ国王は、新太と対面した。


「陛下、噂でお聞きになっておられると存じますが、アトス国のデュポンという街の惨状は本当の事でございます。巨大生物が、街中で大暴れして大勢の国民や、その家屋財産に多大の被害が出ております。


私の出る幕ではございませんが、噂話として片付けるのではなく、アトスの国難としてお考えいただけませんでしょうか?」


新太は、なぜ自分がその事を知っているかについても、詳しく話した。

豪放(ごうほう)磊落(らいらく)なルオンヌ国王は、それを聞いても驚きもしない。(かえ)って喜んでいた。


「あい分かった。早速、アトスへは使者を送ろう。早い方がいい。向こうから要請が来てからでは遅すぎる。また我が国が一番乗りであれば、アトスに対しても箔が付くし、恩も着せられる。


そうだ、アラタ殿、貴殿がオリビアと一緒に出掛けてくれないか?次の国王と宰相が弔問したと有れば、一層の温情を感じるに違いない。」

国王は、ニンマリ笑うと言葉を続けた。


「その帰りにな、我が国のフェルメルムという街に数日寄ってくるといい。そこは良い温泉が出るという街じゃ。


オリビアと二人で、ゆっくりしてくればいい。宿はこちらで手配しておく。勿論貸し切りじゃ。誰に遠慮することなく、ゆっくりしてくればいい。」


王女オリビアとは婚約の仲で、既に全国民に知られているはずだ。

誰に憚る事もないが、新太は赤面してしまった。


王と有った後、直ぐにオリビアに逢いに行った。オリビアは部屋でも寛いでいたところだった。

新太が入室すると、相好を崩して喜んでくれている。


気を利かせたのか、専属のメイドが静かに部屋から出て行った。

「アラタ様、しばらくぶりでございました。御来訪いただき、とても嬉しゅうございます。御機嫌は如何でございましたでしようか?」


そう言って、挨拶をしてくれた。

新太は、少しこういう挨拶に戸惑う。自然と出てくる言葉なのは分かっている。


でも、二人きりの時には、もう少しざっくばらんでもいいのではないかと思ってしまう。

「ええ、とっても元気です。オリビアさんも元気でした?」


オリビアは、少し寂しそうな顔をした。

「いいえ、アラタさんがここのところ、少しも顔をお見せくださいませんでしたから、あまり元気は有りませんでした。」


新太はあの日、裸のオリビアをシーツで包んで抱き上げた時以来、オリビアの体には触れていなかった。


新太はオリビアに歩み寄り、その手を握った。少しびくっとしたが、直ぐに嬉しそうな顔をして、その手を握り返してきた。


「オリビアさん。」

そう呼びかけると、

又悲しそうな顔をする。

「オリビア、と呼んでください。」


「分かった。オリビア、私の事もアラタと呼び捨てにしてくれる。」

わざと、砕けた言い方をした。


「はい、あ・ら・た?」

「うん、それでいい。」


そんな会話の中で、段々と気持ちが高ぶってきた。新太はオリビアの顔に自分の顔を近づけていく。すると、オリビアもそれが何なのか察したようだ。


そっと目を瞑り、顔を上げた。新太がふっくらとしたオリビアの唇を、そっと吸いに行く。オリビアは握っていた手を離すと、新太の体に抱き付いてきた。


「こんな日を、ずっと待っていました。」

唇を離すとそう、そっと呟いた。


新太はその言葉に触発されて、思わずオリビアの胸の膨らみを触っていく。

オリビアも、黙ってそれを許していた。


新太もオリビアも、段々と息をするのが速まってきた。

新太の手は、ドレスの胸元から素肌の膨らみへと移ってしまっている。


オリビアは《あっ》と声を上げたが、抵抗する気配もない。腰が砕け、、ソファーの上へと二人とも倒れ込んだ。


「ご、ごめんなさい。きょうは、これで、か、勘弁してください。あ・ら・た。」

その言葉で、新太は我に返った。


「わたしこそ、ゴメン。あまりにオリビアが可愛くて。」

股間の膨らみを気にしながら、新太はオリビアから離れてソファーから立ち上がった。


二人とも、まだ興奮から覚めていなかった。お互いに見つめ合いながら、また唇を重ね合ったのだった。


そこへタイミングよく、ドアーにノックが聞こえて来た。

二人とも衣服を整え、赤らんだ顔も平然とした顔に戻していった。


「はい。」

とオリビアが答える。ドアーの外で《お茶をお持ちしました》とメイドの声がする。


その声と共にドアーが開き、メイドが茶と茶菓子をトレーに載せて入って来た。メイドが、それらをテーブルの上に置くと、《失礼いたしました》と言って、また部屋から出ていく。


二人はソファーへならんで腰かけ、その茶を飲み始めた。

「あの、大事な話が有るのですが。」

新太が口を開いた。オリビアはただ恥ずかしそうに《はい》と言っているだけだ。


「実は国王からアトス国へ使者として二人で行って欲しいとの要請がありました。」

オリビアの目が輝いた。


「えっ、二人で、ですか?」

新太はアトス国の惨状を説明して、その見舞いの為に、また実は恩を売る為にもアトス国へ訪問する事に決まった、と話をした。


その上で、フェルメルムの温泉街でゆっくりと過ごしなさいという、言葉も頂いたと話していった。それを聞くと、オリビアはまた新太に抱き付いてきた。


「嬉しいー。アラタと一緒に旅なんて。どうしましょう。」

そう言っている。


「それも早い方がよさそうなんだ。オリビアの都合に合わせるよ。予定が決まったら知らせて欲しい。私はいつでも構わない。」


その話の後は、もう、オリビアはそわそわしどうしだった。

部屋を新太が出る時も、もう一度と言ってキスをねだっていた。



 その数日後、新太とオリビアは馬車を連ねてアトスへと旅立った。アトスまでは2週間の旅だ。何が有っても困る。


隊列は厳重に警備がされて、その兵の数を合わせると500人にもなった。

行きの道中は、テントでの寝泊りが殆どだ。


アラタとオリビアは、別々のテントで過ごすことになる。馬車の中では一緒になる事も有るが、そんな時も護衛兵の目が有る。

せいぜい手を握るのがやっとだった。


アトスへ到着しその王城へ訪問すると、上を下への大歓迎だった。

それもそのはず、目論見通り、アトスとしては支援の要請をしようとしていた矢先に、大国アンバシド国からの見舞い訪問だ。


支援金も、デュポンの街の復興をするのには、充分すぎるほどに有った。しかも、次の国王と目されている、オリビア王女の訪問だ。


これ程名誉なことは無い。

二日二晩を費やして、お礼の晩餐会を催してくれている。


こんな費用が出せるなら、それを復興へ充てればいいと思うが、これもアンバシドの国益のためだ。文句も言えない。


また、これからの自分にも、作法などの勉強になる。オリビアとの仲を、より深めるためにも楽しむ事にした。


二晩めの夜にやっと解放された。オリビアとの寝室はアトス国の王城であったが、二人はまだ婚約中との事で別々の部屋をあてがわれていた。少し残念な気もする。


アトスへの復興支援のイベントは、こうして無事に終了した。

フェルメルムの温泉街には、それから10日を要した。長旅から取り敢えず解放され、二人は宿でゆっくりする事にした。


新太もオリビアも、着いて早々、もうそわそわしている。

この宿には、世話をする者以外は誰も出入りして来ない。


護衛兵は、宿の周辺で待機したり見張りをしたりしているだけだ。宿の者も、呼ばない限り二人の所にはやって来なかった。宿は大きい。新太の屋敷ほどある。


少し寂しい気持ちもするが、二人にとっては、絶好の環境だった。

「オリビア、私は風呂へ入って来る。オリビアはどうする?」

一緒に風呂へ入らないかと、新太は誘いをかけている。


「わ、私がアラタと一緒にお風呂へ入るの?えっ、えっ、どうしよう?」

演技ではなさそうだ。オリビアは、恥ずかしそうでそれでいて嬉しそうだ。


「行くよ。後からでいいから、入ってきたら?でもあまり待たせると、のぼせてしまうから来てくれるなら、なるべく早くね。」


新太はそう言い残して、大きな風呂部屋へ入って行った。

其処は、いつも温泉が湧き出ている、自然な温泉風呂だった。周囲には何もない。


建物そのものは、簡易に出来ている。

風呂場は洗い場と湯船とに分かれているが、湯船には一方に壁がない。


ずっと先まで見通すことが出来た。そこは峡谷になっていて、雄大な自然を目の当たりにすることが出来ていた。


温泉の温度は四〇度もない。少しぬるめだったが、長く入っているのには丁度いい。体に掛け湯をして湯船に入ると、疲れが一度に取れて来る。新太は自然と、大きなため息を一つ()いていた。


しばらくすると、部屋へ入る引き戸の音がした。オリビアに違いない。

新太は峡谷を眺めていて、出入り口方向は見ていない。


すると、洗い場を歩く足音が聞こえて来た。

「あの、来てしまいました。あの、なるべく見ないでね。」


オリビアが、細い声で言っている。

「ええ、なるべくね。」


そう笑いながら言うと、後で掛け湯の音がしてきた。そしてオリビアは、新太のすぐ左横へ体を沈めてきた。


横目で見ると、オリビアは恥ずかしそうに俯いている。両手は、胸の前で組むように重ねて、胸の膨らみを隠すようにしていた。


ランタンの灯りが、その真っ白な体をピンク色に染めている。

オリビアの、白い肌を見るのは二度目になる。あの時の悲惨さとは違い、今日はとても美しい。ずっと見ていたくなっていた。


「綺麗だ。オリビア。」

オリビアの体は、湯の揺らぎと湯けむりでぼんやりとしか見えていない。それでも、豊かな胸から下は、美しいカーブを描いて尻の膨らみまで続いている。


新太が《綺麗だ》と続けて言うと、恥ずかしそうに新太を見つめてきた。

「ありがとう、アラタ。私はとっても幸せです。」

そう返してくれた。


新太はオリビアの体に手を伸ばし、その細い肩を引き寄せた。

オリビアは、新太に任せるように身をゆだね、その肩に顔を載せていく。


湯の温度と体温があいまって、二人は幸せな気持ちを味わっている。

新太はそんなオリビアの胸の上に手を置きながら、唇を重ねて行った。


外からの風が、ふわっと吹いて来て心地いい。二人の額には、汗が滲んできている。

「少しのぼせてしまった。先に上がるけどごめんね。」


照れ隠しも有ったのだろう、新太はそう言って湯船から立ち上がった。

新太の前の硬くなったものが、一瞬だけだったがオリビアの目に留まった。


「あっ、はいっ。」

目を伏せて、そう言うのがやっとのようだった。


 用意されていた食事が終わると、後は部屋へ戻り休むだけになった。

二人はベッドへ入る前に、今までの事や王城の事、それにこれからの事なども茶を飲みながら楽しく話をしていった。


就寝する時が来た。オリビアの心臓は、音を立てて脈打っている。

そんなオリビアを優しく抱きしめ、また口づけしていく。心臓の音が、新太に聞こえるのではないかと、心配になる。


そんなオリビアを大きなベッドへ寝かせると、新太はその体の上へ覆いかぶさった。寝衣の前を開くと、あの白い豊かな胸が現れる。


オリビアは、新太の首に両手を廻してきた。

オリビアにとっては、自分が一番美しいと思えた瞬間だった。

また、口を吸い合うと新太の準備は出来た。オリビアも潤っているようだ。



新しく輝いた朝が来た。

昨日のオリビアと違って、今日は一段と美しい。体全体から輝きが溢れ出るように、自然と優雅な喜びに満ちている。


続きは明日。 12  激闘

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