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10 巨大生物ー2

討伐


惑星に到着してしまえば、住民や都市がどうなるか分からない。アローも、追いかける。

いくら巨大生物が高速でも、アローの速さには敵わない。直ぐに追いついた。


まだ、惑星までは5日の距離が有る。

そのアローに気付いたのだろうか。巨大生物が停止して、アローの方向へ向き直った。


「今度も、体内へ突入しよう。あまり気持ちのいいものじゃないけれど、それが一番の方法だろうから。」


新太が言うと、美月はアローを巨大生物の口、それが口ならばだが、へ突入させようとした。


ところが、推力を上げても口の前で停止してしまう。直径70メートルの大口が開いているのに、どうしても進入できない。


「後ろへ回ろう。」

クレマンが提案した。試す価値は有る。


アローが、巨大生物の後部へ回った。そこにはあの触手が見えている。触手の役目が何なのかは分からないが、取り敢えずは接触しない方が賢明だろう。

後部の口の中心では、あの触手も届かない筈だ。


アローが突入を試みた。

アローが巨大生物の口の中心付近で、今まさに体内へ進入しようという時に、その触手が口の中心へ向かって方向を変えた。


何時もは体の後方へ(なび)いていた触手が、口の中心へとまるで4本ともアローに標準を合わせるかのような動きをしたのだ。


「これは危険かも知れない。美月さん、直ぐ離れよう。」

新太の言葉は遅かった。


4本の触手から一斉に、稲妻のような光が放たれた。まさに放電だった。

シールドを(まと)ったアローであったが、その放電によって、アローの様々な機能が停止してしまっている。


人体に影響は無かったが。アラーム音が、再び艦内に響き渡っている。

その間に、巨大生物はまたしても飛び去って行ってしまった。


「これは修理に時間がかかるわね。有難い事に、生命維持装置は無事よ。アラタと皆さんにも手伝って頂かなくてはならなくなったわ。


アローの指示通りにして頂ければ、それほど難しい作業ではありません。急ぎましょ。あれが、惑星へ着く前に何とかしなければ。」


アローから各人へ、それぞれの指示が来た。

ネックレスの通信装置を使っての指示だった。その手順に従って、忙しく作業を進めていく。手作業だった事から修理が終わった時には、2日のロスが出ていた。


後、3日しかない。余裕だと思っていた時間が、少しずつ無くなっていく。

巨大生物に追いついた時には、さらに時間は経過している。


今度は迂闊(うかつ)に近寄れない。前方から、体内へ入ろうとしても入れない。後方からだとまたあの、触手の攻撃に会う。外からの攻撃しか、方法は残っていない。


ある程度の距離を保ち、後方から接近しながらビームを最大出力で放った。

目標は大きい。狙い違わず、その巨大な体に吸い込まれていった。体の一部に、亀裂が入った。


巨大生物は、走行速度を緩め始めた。

「何とかなりそうだ。今度はあの触手を狙ってみよう。クレマンさん、ビーム砲をお願いします。僕は魚雷を操作する。」


美月がアローを操縦して、巨大生物の後方へ迫る。今度は目標が小さい。クレマンと新太は、手分けをしてビームと魚雷を連続して発射する。


二つの武器は触手に届くが、体からは切り離すことが出来ない。ただ、亀裂はこちらにも入っているようだった。


巨大生物がその攻撃を、嫌がっている事は明白だった。さらにスピードを上げて、逃げようとしている。それを逃がさないように、アローも執拗に追いかけた。


時には、巨大生物が体ごと体当たりしてくる。でもそれは、アローが難なく避けていく。最初にボールのように飛ばされた経験から、美月は充分に注意を払っていた。


巨大生物の体の一部へ、重点的に攻撃を加えると、巨大生物は逃げる。それを追いかけてまた攻撃を仕掛ける。そんな追いかけっこが何時間も続いた。

残された時間は、後2日しかない。


「こんな事をしていても、(らち)が明かないな。あいつをやっつけないと大変な事になる。」

すると、ルネが話し出した。


「私が、こんな事を言っていいか分かりませんが・・・。」

と遠慮している。リリアが怒ったように言った。


「何でもいいから、言いたいことが有ったら言ったらいいわよ。今は非常時なんだから。」

その言葉に押されて、ルネが話し出した。


「あの恐竜にはあまり効果がなかったけれど、迷宮の中のあの魔獣には、アラタさんやクレマンさんの刃は効果が有りましたよね。レーザーで切り落とせなくても、レーザーを(まと)った刃ならあの触手は切り落とせませんか?」


すると、クレマンが言った。

「ここは、宇宙という所なんですよね。ここで息は出来るのですか?」


すると美月が答えた。

「それは問題ないのですが。シールドの中は、気圧も空気も温度も長時間調整していますから。それより、あの触手は切り落とせるのですか?」


それにはクレマンが答えた。

「あの触手は、太さが2メートル位しかないよな。それだったら、もしあそこへ辿り着けるなら、出来ると思うよ。でもどうやって辿り着くかだ。」


それに答えるように、リリアが言った。

「そんなの簡単じゃない?一人ずつシャトルへ乗って、あの根元へ降りればいいでしょ?わたし達は4人居るし、触手も4本でしょ。」


そして、4人で同時に、触手を切り落とすというのだ。

そうすれば、また体内へ入る事も出来るかもしれない。体内からの攻撃が可能になる。


「うーん。試すしかないか。シャトルで外側から接近すれば、あの触手にやられることもないだろうし、シャトル自身も小さいから、あの巨大生物に見つかる心配も少ないかな?」


新太がいうと、皆でやろう、という事になった。

「でもリリアさん、あなたは駄目よ。アローでやって貰う事が有る。もし、みんながあの巨大生物に振り落とされたら、私達を拾って貰わなくていけないから。それにリリアさんを外に出すような、そんな危ない事をさせるわけにもいかないわ。シャトルには私が乗る。」


アローとシャトルは、ほとんど同じ操縦方法だ。リリアは、シャトルの操縦が出来る。


リリアとクレマンには、急遽シャトルの操縦法を教え込む。そして、ブレスレットにそれぞれのGPSも組み込んだ。


リリアは不承不承(ふしょうぶしょう)だったが、何とか納得してくれた。

そうしている間にも、巨大生物はますます惑星へと近づいている。


「それでは、行きますか?充分気を付けて。」

各人は、武器を携えてシャトルへ乗り込む。この時は、ルネも大剣を背負っていた。


シャトルは1機ずつしかない。それで、新太は前々から乗ってみたいと思っていた、シャトル2へ乗り込んだ。父春斗が乗った、三角翼を持ったあの戦闘機型だ。


一番、目立つからという理由で美月が大きなシャトル16に、ルネは4へ、クレマンが8に乗った。


巨大生物もアローも、猛スピードで飛行している。アローは巨大生物に速度を合わせていたので、相関的な速度はゼロだ。だから、アローから見ると、巨大生物は停止しているように見える。


それでも、そのスピードの中で、巨大生物の体に乗り移るのは非常に危険だ。

乗り移る順番も決めた。新太が最初に行き、2番手はルネ、3番目がクレマンで、最後が美月とした。


美月がもし見つかっても、誰かしらが乗り移れるかも知れない。

4機のシャトルがアローから離れると、それぞれ2機ずつで側面から接近していった。


触手の根元に近づいても、巨大生物は気付かないようだ。

新太は、シャトル2の操縦席から離れると、シャトルを自動操縦でアローへ帰す用意をしてから、巨大生物の触手へと飛び降りた。


見ていた美月もハラハラしていたが、何とか飛び移ることが出来ている。

次はルネだ。ルネは、持ち前の身軽さで難なくシャトルから飛び乗った。


クレマンも、美月も心配するほどの事は無かった。それぞれが、触手の根元へ辿り着いている。


作戦通り、まずは短剣を出してその体へ刺し込んでいった。短剣は、危惧することなく根元まで差し込まれた。巨大生物に変化はない。


そうして、片手でその短剣を握りしめて、体を支えている。次に新太は日本刀を、他の3人は長剣を抜くと、その刃にブレスレットから発したエネルギーを纏わせる。


充分にエネルギーが溜まったところで、一斉に触手を切り落としにかかった。

さすがに、一刀のもとに切り落とす、とはいかなかったが、懸念することなく触手は少しずつその切込みが深くなっていく。


切込み口が、その厚さの半分程度になった時だ。

突然、それまで静かだった巨大生物が暴れ出した。嫌がったのか、苦しみだしたのか、4つの触手が、円を描くように回転を始めた。


その勢いの凄まじさに、新太たちは到底体を支えきれない。

あっという間に、宇宙空間へ投げ飛ばされた。しかも、4人とも別々の方向だ。


触手は半分ほど切れていたが、まだ繋がっている。時々、稲光のように光って放電しているように見えた。


リリアはCPSを確認して、一番近くのルネの元へ急いだ。ルネは振り回された勢いで、どんどん巨大生物から離れて行く。それでもすぐ傍まで接近すると、牽引(けんいん)ビームを作動させて、シャトルの格納庫へと導いた。


ルネに怪我は無い。二人で操縦席へ戻ると、美月のGPS信号が消えかかっている。相当遠くへ飛ばされたようだ。見失う前に、助け出さなくてはならない。


一目散に、美月を追った。美月は気を失う事もなく、アローを見つけると手を振っている。


次はクレマンにした。クレマンは、宇宙空間を漂っていた。、漂うというよりは慣性で飛ばされていたと言う方が正しいのだろうが、それでも気丈にアローを待ち続けていたようだ。


格納庫へ着くと、ルネに心配がない事を確認したのだろう、ルネを両手で抱き締めて《よかった、よかった》と言っている。ルネもクレマンへ両手をまわして、その背中を擦っている。

それを見て美月とリリアは、お互いに目配せをしていた。


最後は新太になってしまったが、新太も信号を見失うほど遠くへ飛ばされていた。アローはその空域へ到着すると、再サーチしてようやくその体を見つけて収容した。


そこから危険は有ったが、再度触手を取り除くために挑戦する事にした。

同じようにして触手の根元へ取り付くと、刀や剣をその切り口へねじ込み、さらに切込みを深くしていく。


新太たち4人は、何度も巨大生物に振り回され飛ばされて、その度に4人はリリアに拾い上げられた。それでも(くじ)けていなかった。


これが最後になるだろうという頃に、巨大生物は新太たちと一緒にとうとう惑星へ到達してしまった。


苦痛の為か、エネルギー補給の為か、それともその両方なのか、巨大生物は前方の口を地上へ向けると、その巨大な口であらゆるものを飲み込み始めてしまっている。


地上には、建物が有り人々もいる。空から異様なものが舞い降りて来て、何が起こるのかと恐怖を抱いていた人々も、その建物などと一緒に巨大生物の体内へと吸い込まれていく。


地上は、阿鼻叫喚(あびきょうかん)の様相を呈していた。

「もうこれ以上、犠牲は出せない。直ぐにでも触手を切り落とそう!」

新太が叫んだ。


巨大生物は吸い込むことに熱心で、新太たちの事には無関心になった。

その隙に、4人は一斉に4本の触手を切り落してしまった。


それでも、巨大生物は吸い込みを止めない。地上は強風が渦を巻き、最強のF7クラスの竜巻よりも強く、すべてのものを吸い上げている。


4人はアローへ戻ると、アローを直ぐに発進させ、後部の穴からその体内へと進入を試みた。触手が亡くなった為か、今度は触手による電撃は無い。


アローはその体内へ進入すると、すかさず1点を目指して、レーザー光線と魚雷を何度も打ち込んでいく。


さしもの巨大生物の内壁に穴が開いた。体内のガスはその穴から外へ噴出し、見る見るうちに穴は広がっていく。すると、一気に中の圧力が下がった。


あれだけ勢いよく吸い込んでいた魔物の体が、内側へ凹み始めた。

それを見てアローは、その吹き出し口から外へ脱出した。外側から見た魔獣は吸い込みを止め、(しぼ)んだ風船の様にふらふらと空を漂い始める。


そして、段々と地上へ落ちて行き、最後には町の一角へその巨体を(さら)すことになってしまった。


その街が、何処の国のどこの街かは判然としていない。とてつもない、災難に見舞われてしまったが、新たちとしては最善を尽くしたとしか言いようがなかった。


アローの上からではあったが、被害を受けた人々に対して、黙とうを捧げるしかなかった。


続きは明日。 休息

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