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13 エピローグ

激闘


「ミツキさん、シャトル2にもこのアローと同じシールドが有るんだろ?それだったら、俺が乗って相手と少しばかり遊んでくるよ。何か掴めるかもしれない。」


その話の途中、また敵艦の主砲が青く光り始めた。その色は、段々と色を変えていく。青から紫、紫から赤、赤から黄金色へと変化した。


先ほどは黄色の光だったが、今度はそれより眩しい。同じように八方へ枝分かれして発射されると、黄金の軌跡を伴ってアローを攻撃してきた。


今度は先ほどよりも、もっと大きな衝撃が長く続いた。

体はガタガタと大きく上下左右に揺れ、何かが落ちる音もしている。だが、火災や電気ショートは起こっていない。シールドの威力は相当に違うし、長時間に耐えられている。


「いくら、なんでももう怒った。出かけて来る。」

まるで喧嘩に出るような勢いで、クレマンが言った。


「クレマンさん、少し待って。試したいことが有る。」

何を考えたのか、新太は攻撃もしないしクレマンの出撃も止めた。何もしないで、何かを待っているような感じだ。


「アラタ、どうしたの?」

美月が言った。

「うん、あの主砲のような2回の攻撃。あの後、魚雷もビーム砲も撃ってこないよね?


それと、最初に感じたんだけど、ジャンプで逃げた時、敵艦が追いついて来るのにアローより10秒ほど遅かったよね。それから考えると、向こうのエネルギーはアローよりは、弱いし制限が有るんじゃないかと思ったの。


それで、今度はどうするのか、少し様子を見たくて。」

美月にも、新太にも今回は少し余裕がありそうだ。


そう言う間にも、まだ敵艦は攻撃してこない。今は両方とも睨み合っている状態だ。

新太は少し焦れて、また魚雷の準備をした。


そして今度も、2発の魚雷を艦橋付近へ放ってみた。魚雷は艦橋へ当たった。が、それでも敵艦に損傷は見られないし、反撃もない。


「エネルギーを、主砲へ溜めているのかな?」

そうだとすると、危険だ。あの攻撃よりも、さらに強い攻撃が有るかもしれない。


今度は敵艦の表面が全体に、黒から黄色に変わってきた。

「くるぞ!逃げよう。」

あれ以上の攻撃を受けたら、アローにダメージがないとは言えない。


美月は新太の言葉に従って、ジャンプの用意をした。前方へ、アームホールが現れた。其処へ急いで逃げ込む、と同時に敵艦から今度は1本の太い光線が発射された。


その光線がアローへ到達する直前に、アローはアームホールへ逃げ込んでいた。瞬時に、また別の宇宙へ飛んだ。

「待ち伏せしよう。」


クレマンが言った。敵艦が現れるには、15秒以上あるはずだ。

新太は魚雷の準備をし、美月はその発射口をアームホールの出口へ向けた。


今度は敵艦が現れるまで、20秒を要した。待っていると長い時間だ。現れると同時に、新太は魚雷を立て続けに、何発も乱射していく。


敵艦の艦橋付近に命中すると、その辺りのシールドが薄くなっているのが確認できた。ところが、相手は(ひる)む様子もない。


ワープが終わったばかりなのに、また艦の表面が黄色に変化している。もう準備は終わっていたのだ。

「向こうもエネルギー量がすごいな。」


今度は、ジャンプで逃げる時間がない。太い帯の光線が発射された。

アローへ迫ってくる。それを、急旋回して避けながら、全速力で前方へ逃げる。太い帯の光線は、アローを追ってくる。


2度3度、アローは回転しながらなんとか避けようとしていく。ルネは、体が捩れそうになって思わず悲鳴を上げた。


光線は、その帯の太さが細くなりながらもアローを追って、ついにはアローへ命中してしまった。

今までに一番の衝撃が来た。


《シールドが15パーセント減少しました。》

アローの機械音だ。


敵艦は、次の攻撃の準備を終えていた。今度は、艦の表面が赤くなっている。

先ほどの攻撃よりも強いのか?


そう思った時にはもう、赤い太い1本の光線が発射されていた。それでも衝突まで、なるべく長い時間を費やせば、その威力は減っていくようだ。


今度も、美月の操縦は秀逸だった。何度も何度も光線の攻撃をかわして、着弾までの時間を稼いでいる。


それでもその時は来た。アローが震え、4人はシートベルトをしていても、椅子から弾き出された。機器の一部から出火した。


新太は、あの時の事を思い出してしまった。消火器を持って、火災の消火をした時だ。

避難ポッドへ、乗り込んだ悪夢が蘇って来た。


それでも気を取り直して、火災の消火を始める。アローが警告していた。

《シールドの効果は50パーセントに減少しました。》


美月は、急いでシールドの修復に掛かった。エネルギーの残高はまだまだ余裕が有る。


ただ、こちらの武器はレーザー光線と魚雷しかない。いくら相手にダメージを負わせることが出来たとしても、致命傷を負わせることは出来ない。


「ミツキさん、もう一度ダメもとでジャンプしよう。敵艦のジャンプ速度が遅くなっている。それと、焦っているんだと思う。段々攻撃の武器が強力になっている。


今度の武器は、最高出力で来るんじゃないかな。多分、エネルギーが底を尽きそうなんだと思う。武器を使わせる前に、もう一度エネルギーを消費させたい。」


新太がそう伝えると、美月はジャンプの準備にかかった。アローのエネルギーは、まだまだ底を着きそうにない。


3回目のジャンプを決行した。敵艦が現れるには、30秒を要している。

こちらがまた待ち伏せをしていると思ったのか、現れた時に、敵艦は既に攻撃の準備が出来ていた。でもアローはそれを逆手にとって、ワームホールよりずっと離れている。


敵艦の主砲発射の兆候が消えた。

「やはりそうです。エネルギーを節約している。そうでなければ、連続して攻撃して来てもいいのだから。」


ジンベイザメの口は、アローを追って迫って来ている。

「ミツキさん、お聞きしたいことが有るの。あの向こうの武器って、発射する時に高温を出すのかしら?」


ルネの質問だった。

「何をこんな時に言っているんだ。何か理由が有るのか?」

クレマンだ。美月も、何か感じ取ったようだ。


「そうね、発射する時は発射ノズルに影響が出ないために、温度は抑える工夫がされているはずだけど、発射直後は直ぐに高温になると思う。でも直ぐに外気に触れて、冷めると思うけれど。」


「それでは、敵がエネルギー砲を発射した直後で、まだ温度が下がり切れない時を狙って、液体窒素弾をあの口へ打ち込むのはどうでしょうか。エネルギー砲は、急激に冷めて、何かしらの現象が起きませんか?」


ルネ、が思い付いたことを話した。

「あまり期待は出来ないかも知れませんが、何かが起こる可能性はゼロではないでしょうね。でも無理なの。このアローは液体窒素弾を発射できない。」


「それではシャトル2で、あの大きな銃を持って行って、近くで人が打つというのは?」

ルネがとんでもない事を言い出した。


「敵艦がエネルギー砲を撃つまでは、なにか準備が必要ですよね。最大のエネルギーを発射するんでしたら、青から段々緑や紫色に変わって、最後は金色でした。そしてすぐに発射されました。


だから、シャトル2であの敵艦の近くまで行っていて、主砲が金色に光ったと同時に液体窒素弾を何発か続けて打ったらどうでしょ?」


するとすかさず、クレマンが言った。

「その役目、俺がする。」


「いいえ、クレマンさん。一人では駄目です。私が操縦していきますから、クレマンさんは後部席から主砲を狙ってください。」

ルネは既に、作戦が決行されるものと決めている。


敵艦には戦闘機がなさそうだ。此方の有利な点は、戦闘機を持っている事と、エネルギーが豊富にある事だ。これを利用しない手は無い。


「どう思う?美月さん。」

新太が聞くと、美月が答えた。

「とても危険よ。でもやる価値はありそうね。」


美月の話では、主砲で攻撃した直後に、0点何秒かシールドが効かなくなる時間が有るようだ。そこを狙わなくてはならないが、人の感覚では無理だ。


それでシャトル2の操縦をクレマンに、射手はルネにすると言う。

ルネの方が、動体視力も機敏さも上だと判断していた。


クレマンもそれに従った。

そうした間にも、敵艦は執拗にアローを追いかけているし、主砲の準備もしている。


主砲の色が緑に変わっている。新太の言うように、その時間はだんだん長くなっている。


クレマンとルネは、シャトル2に飛び乗ると、直ぐに発進した。

発進した時に、主砲は赤に変わっている。急ぐ必要があった。


が、その戦闘機型シャトル2を狙って、ビーム砲が襲ってきた。クレマンは、巧みにそれをかわしていった。


主砲が黄金色に変わってきた。と、同時にシャトル2への攻撃が止んだ。同時に2つの攻撃は出来ないようだ。


クレマンは、敵艦主砲の射程範囲に入らないよう気を付けながら、斜め前からジンベイザメに接近して行く。ルネが後部座席のフードを開け、液体窒素銃を窓越しに構える。


主砲の色が完全に黄金色に変化した。発射される。その瞬間を狙って、ルネが液体窒素弾を乱射した。敵艦の凄まじいエネルギー砲とすれ違いざまに、その光にかき消さされながらも、小さな窒素弾は主砲へと吸い込まれていく。


アローは、エネルギー砲が発射されると同時に、急旋回してシャトルから離れて行った。そのアローをエネルギー砲が追撃していく。そして、ついにはアローを捉えた。


新太が味わった、あの脱出ポッドが発射される前の衝撃より、数倍の衝撃をアローは味わっていた。アローの警報装置が鳴り響いている。


《危険です。シールドの98パーセントが焼失しました。》

この状態なら、あと一回でもレーザー砲か魚雷を受けたらアローは大破してしまう。


回転しているアローの艦内ディスプレイで、敵艦とシャトル2の様子を伺う。

敵艦は、大きな艦体を残して停止していた。シャトル2は何処にも見えない。


だかよく観察すると、敵艦は主砲の辺りが今までと少し違う。歪んでいるように見える。

それに魚雷もレーザー砲も、攻撃をして来ない。


「アラタ!続けて撃って!」

美月の声に促されて、新太は魚雷を数発発射した。全弾、その主砲の発射口へ命中した。


シールドが効いていないようだ。

何回も爆発音がしたと思ったら、敵艦が斜めに傾いた。主砲の辺りから、黒煙が上がっている。


「もう一度!」

美月が大声で叫んだ。こんな事は珍しい。新太も、夢中で魚雷のボタンを押す。


軌跡を残して、魚雷の赤球が全弾敵艦へ向かっていく。

斜めに傾いた、その艦橋付近へ命中した。艦橋は吹っ飛び、敵艦は大きな体をきりもみ状態にして沈んでいった。


と、その影からシャトル2の小さな三角翼が見えた。

「あ、アラタ、シャトルも無事よ。」


興奮気味にそう言った途端、沈んでいった敵艦が大爆発を起こしていた。

二人は、抱き合って喜びを噛みしめていた。アローもシャトルも無事だ。


それに、父春斗と先代の美月の仇も取った。

涙が出ると思っていたが、涙は出てこない。二人が抱き合っていた時に、クレマンとルネが、喜びながらシャトルの格納庫から走ってきた。


ルネの目には涙が有った。アラタと美月が抱き合っている所を見て、感極まったのだろう。二人も抱き合いながら、喜びを表していた。



        十三     エピローグ


 新太とオリビア王女は、アンバシドの王城で盛大な結婚式を執り行った。

セルレイの国王夫妻、アトスの国王夫妻も招待された。


新太は、ジェルマン夫婦、リリアとレオの姉弟、ルネとクレマン夫婦も招待した。

美月はと言うと、泣いてしまうから嫌だ、と言ってアローへ逃げ帰っている。


住居も王城内の、離宮となった。今までのような気ままな生活は無くなる。

様々な冒険の日は、もう来ないだろう。


それでもオリビアとの新しい生活が始まるし、国政という新しい世界が待っている。

もう地球へ、日本へ戻る日もないかも知れない。


それでもいつの日か、オリビアと生まれてくる子供達と一緒に、それと美月と一緒に、地球へ旅する日が来る、と信じて待とうと思っていた。


バルコニーに、オリビアと二人並んで夜空を見る。

そこに青く光る地球の姿を想像していた。




                                 完


完了です。

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