9 事件-2
凌辱
王女は縛られて、幌が張られた荷台へ転がされている。
生きているようだ。
急がないと、何をされるか分からない。それにしても、オードリーの兄弟は、オリビアをどうしようと思っているのだろうか?
オリビアを人質にして、王族と何か交渉をするつもりなのか、それとも恨みを晴らすために、王女の代わりに王に死ねと言いたいのか?どちらにしても、オードリー家に勝ち目は無いと思うが。
オリビアを発見した時には、その馬車がオードリー家へ着く直前だった。
いくらシャトルでも、もう間に合わない。後は、どうやって取り戻すかだ。
新太たちは王女がまだ存命でも、直ぐに行動しよう、という事になった。
その間にも、王女の動向を見張るのに余念は無い。陵辱されるかもしれない。そうなりそうだったら、一も二もなく助け出さなくてはならない。
オードリー家の上空へ、急ぎ到着した。
新太とクレマンは、シャトルを降りると正門へ向かい、美月はシャトルに乗ったまま、上空で待機している。
王女への凌辱は、今のところ取り越し苦労に終わっていたが、急がなくてはならない。
正門の近くには、衛兵が大勢で警護をしている。新太たち二人を見つけると、険しい顔で槍を構えた。
「止まれ!ここは、お前たちの来るような場所じゃない。」
新太はそれには構わず、ニコニコしてお辞儀をしている。衛兵が、呆気に取られている。クレマンは、その横で護衛として振舞っていた。
「何の用だ。商人か?」
新太の本業は商人である。クレマンも護衛だ。体が自然と反応する。
「はい、私はロングバンテの行商ですが、きょうはオードリー家の殿様に、進呈させて頂きたい品物がございまして参上いたしました。お取次ぎをして頂けませんか?」
「そんな事は出来ん。かえれ、帰れ。」
衛兵が叫んだ。
「そんな事をおっしゃらずに、これは皆様への贈り物です。」
新太は、袋の中から真珠の珠を取り出して、その兵達へ一粒ずつ手渡した。
それを見つけた門扉の中の兵達が、扉を開けて出て来た。
「なんだ、それは、俺にも呉れ。」
異口同音に言っている。その時だった。横で控えていたクレマンが、剣を抜いて近くの兵達に切りつけ一瞬にして打ちのめしてしまった。
その5~6人の倒れた兵士を、物陰に隠すとそっと屋敷の中へ入って行く。
その時だった。美月から連絡が来た。
「アラタ、大変!オリビア王女が危ない。」
外の喧騒は、建物の中まではまだ伝わっていない。
その少し前、オリビアが捉われている部屋へ、兄のユーゴ・オードリーがやって来ていた。
卑猥な笑い顔で、舐めるようにオリビアの顔や体を眺めている。
「な、何ですか、あなたは。無礼でしょ。私はアンバシド国王の第一王女、オリビアですよ。下がりなさい。」
強い口調で言っている。
「何が第一王女だ。お前の父親に、私の父バンサン・オードリー宰相は殺された。私は、何時もお前を陰で見つめていたのだ。何時かは、私の嫁にしようと思っていてな。
それが、お前の父親のせいで、何もかもが泡と消えてしまった。私は、お前だけは私のモノにしないと気が済まないのだ。
後は、私や弟の命などどうでもいい。そう決めたんだ。俺の後には、弟のマクシムにも楽しませる。」
そう言いながら、ズボンを脱ぎ始めた。
美月が連絡したのは、そういう時だった。
美月がそのまま、オリビアの部屋へ飛び込んでも良かったのだが、オリビアが閉じ込められていた部屋は、地下室だった。
それに美月は平服のままで、新太たちのようにこの国の服に着替えていない。
咄嗟の判断で、新太たちに任せた方が早く部屋に着き、後々面倒にならないだろうと思ったのだ。
新太たちは、屋敷内へ突入しようとしていた。すると、屋敷に居た兵士に交じって屋敷内の兵士たちも、一斉に新太たちに立ち向かってきた。
ここはもう、躊躇していられない。新太は、右腕を前に出すと5本の指を広げて軽くレーザーを放った。
忽ちの内に、兵士たちの半分以上が倒れて行く。そこへクレマンが突撃していった。その俊敏さに、残りの兵も太刀打ちできず、ある者は倒されある者は逃走していった。
残りの兵はクレマンに任せて、新太はオリビアの居る地下室へ急いだ。
部屋の中から、オリビアの悲鳴が聞こえてくる。
「キャーッ。」
オリビアの叫び声が聞こえてくる。
新太は急いでドアーを蹴破り、部屋の中へと入って行った。
部屋の中は、地下にも拘らず明るく照らされている。ユーゴが王女の裸体を眺めるために、ランタンで明るくしていたようだ。
春斗が突入した時、ユーゴの下半身は既に露出していた。ベッドの上で、尻を出してオリビアに覆いかぶさっている。
オリビアと言えば、ユーゴの大きな体の下で見え隠れしていたが、出来る限りの抵抗をしているように見える。
「直ぐに王女から離れろ、この下司野郎!」
新太が叫ぶと、ユーゴは振り向き様に目を向いて怒っていた。
「この下郎が、誰に断ってこの部屋へ入って来た!手打ちにしてくれる。」
自分の楽しみを見知らぬ男によって、勝手に遮られたことに怒り心頭のようだ。
何故そこに新太が居るのかは、心中にない。
そう言って、近くに備えていた剣を抜き放った。鞘も柄も金銀で飾られている。
「鞘や剣に比べて、お前の持ち物はお粗末だな。」
新太は、振り返ったユーゴを見て、そう皮肉った。
その意味が分かったのだろう。ますますユーゴは怒り狂い、剣を振り上げた。
新太は刀を背に、柄を下へ向けて背負っていた。
その柄を逆手で握ると、抜き打ち様に横へ払う。するとユーゴの勃起した一物は、根元から切り落とされてしまった。
「ウギァー。」
ユーゴは断末魔の叫びを上げた。新太は、返す刀で首を狙った。刀は正確にユーゴの首に切りつけられて、その首は真後ろへ切り離された。今度は、声も出せない。
ユーゴの体からは、噴水のように真っ赤な血が吹き上がっている。頭が離れた胴体は、前面へスローモーションのように倒れて行った。
新太が刀を収めてオリビアを見ると、オリビアの顔は蒼白で涙を流している。
それよりも、ユーゴに引き剝かれたのだろう、ドレスの前は引き裂かれ摺り下ろされ、白い豊かな胸が露になっている。
かろうじて、腰の辺りにドレスの名残が有った。
それに気づいたのだろう。オリビアはベッドへ、胸を隠すように俯いた。
そこには白い背中に、真っすぐに伸びた背骨が尻の膨らみまで続いている。
咄嗟に新太は、隣のベッドのシーツをオリビアへ投げていた。
オリビアは慌ててそれを手にすると、泣きながら自分の体に巻き付けて行ったのだった。
新太の顔は、少し赤くなっていた。それに気付き恥ずかしかったのと、オリビアの体を見ないようにするために後ろへ振り返った。
「私は父上ルオンヌ陛下に依頼されて、オリビア王女様を取り戻しに来たユウキ・アラタと申します。御無事で何よりでした。直ぐに此処から帰りましょう。陛下とお妃さまが、首を長くしてお待ちしています。」
オリビアは泣き声こそ収まったが、まだベッドの上でもじもじしている。
「ご心配はいりません。門の所へ馬車が待っております。それにお召し物も、ご用意させて頂いています。」
新太は、相変わらず後ろ向きになってそう言った。
すると、オリビアはか細い声で恥ずかしそうに言った。
「いいえ、そうではないのです。私、私はまだ汚れていません。体こそ、あの獣に見られてしまいましたが、操は守っています。有難うございました。アラタ様のお陰でございます。有難うございます、ありがとう・・・・・」
また涙を流し始めた。
表へ出ると、全ての兵士たちはクレマンによって打ち取られたか、逃走をしていた。
弟のマクシムは捉えられ、近くの木に縄でぐるぐる巻きに縛られていた。
続きは明日。 求婚




