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9 事件-1

誘拐

           九     事件

 

 あの盗賊の事件から、クレマンが時折新太に会いにやってくる。特に用事が有る訳ではない。雑談をしたり、護衛の仕事ぶりなどを話したりしていく。ルネとは勿論、ロングバンテ家の人々とも顔見知りになっていった。


そんな時、クレマンが1通の手紙を新太に持ってきた。

「この手紙は新太だけに見せるように、とギルドから預かってきた。俺も見ていないし、ギルドの連中も内容は知らない。ただ、直ぐに新太に見て欲しいとだけ(ことづか)った。」


クレマンが、その手紙を手渡した。手紙は厚い筒状の入れ物に入っている。

その筒の中から、新太が手紙を取り出した。新太がその手紙の差出人の名前を見て、驚いた顔をしている。


「なんだ、何が書いてある?」

クレマンも、それが気になるらしい。


「これは、何時(いつ)預かったのですか?」

「今朝だ。異例の事だが、朝早くにギルドの職員が持ってきた。アラタさんに、急いで届けてくれと頼まれた。」


クレマンの顔色も変わった。重要な人からの手紙に違いない、と思ったのだろう。


「この手紙は昨日の朝に、送り主から発送されています。あの距離を1日で送り届けるとは、とんでもない事が起こったようです。」


新太はそう言うと、その手紙を読み始めた。顔色が、見る見るうちに変わってきた。

「何という事だ?」


クレマンも、手紙を覗き込んだ。

其処には、新太宛の次に発送者の名前が記されている。

それは、アンバシド国王ルイーズ・ルオンヌと読めた。



《親愛なる、アラタ殿へ

 急ぐので、要点だけ記す。娘のオリビアが昨夜、姿を消した。公になれば、国家の存亡にも係わる。


近衛兵や国家警察に任せれば、近衛兵の有望な責任者や、その部下にも責任を取らさなければならない。それは避けたい。


 密かに解決し、無事に娘を取り戻すには貴公の力が必要だと判断した。

 大至急、アンバシドへ来られたし。勝手を申しているのは分かっている。


 娘と私を助けて欲しい。王としての依頼ではない。親として頼んでいる。

 あの時のように、私の部屋へ忍んできて欲しい。妃も待っている。

                        ルイーズ・ルオンヌ》


短い文であったが、切迫した気持ちと様子がよく分かった。これはまた、ジェルマンにだけは知らせておかなければならない。何日、家を空けるか分からない。


レイマンも盗み見していたが、読んでしまって後悔したようだ。

「悪い、アラタさん。読んでしまった。これは俺が読んでいい手紙ではなかった。」


新太は、レイマンに視線を戻して言った。

「レイマンさん。お願いがございます。私と一緒に、アンバシドへ行ってください。これはギルドを通してのお願いには出来ませんが、私からの正式な依頼です。


国王には、私の信頼できる友人だと紹介します。報酬は、私が出します。一緒に、解決していただけませんか?命がけの仕事になるかもしれません。」


レイマンは、目を輝かせた。

「報酬なんか、二の次だ。。連れて行ってくれ。アラタさんとまた、仕事が出来るならこんな嬉しいことは無い。俺のほうから頼みたいくらいだ。」


《でも》と新太は、言い淀んだ。

「この仕事の内容は、絶対に極秘です。それだけではなく、私の秘密もクレマンさんに知られることになりますが、それも秘密にして頂けますか?」


クレマンは、新太が何を言いたいのか分からなかった。それでも即答した。

「分かった。絶対に秘密にする。俺を信じてくれたアラタを信じる。」


こうして二人は、バディを組むことになった。

新太はジェルマンに話の概要を伝え、また長い間、家を空ける事を詫びて了承を得た。


新太は美月にブレスレットで連絡を取って、バルコニーの前まで迎えを頼んだ。そのやり取りを横で聞いていたクレマンは、目を白黒させている。


例によって、シャトルはステルスを作動させて、バルコニーに横付けされた。

突然空中に美月の姿だけが現れると、クレマンは腰を抜かすほど驚いた。


「なにっ、あの人は。空に浮かんでる。あの盗賊は高く跳んだだけなのに、この人は浮かんでるよ、アラタっ。」


「説明は後でします。とりあえず、手摺に上って、私と一緒に跳んで。」

新太は、クレマンの手を取ると、腰が引けているクレマンを押し込むようにしてタラップへ乗り移った。


地上へ落ちると思った瞬間に、シャトルの中へ移動したクレマンはさらに驚いている。

それには構わずに、新太は美月にアンバシドの王城へ急ぐように頼んだ。


「アラタ、また厄介ごとですか?」

美月が微笑みながら言う。

「うーん、厄介ごとと言うより、人助けかな?」


そう言いながら、アンバシド国王の一人娘、オリビアが姿を消したことを告げ、王からその捜索を引き受けた事を説明する。クレマンの事も紹介し、クレマンにはシャトルと美月の事も説明した。


アンバシドの王城まで行くのに、その説明も長すぎたようだ。

王の部屋のバルコニーへ着くと、まず新太だけが部屋へ入る事にした。バルコニーの壁を叩くと王が剣を持って近寄ってきた。


「ルオンヌ陛下、アラタです。剣を収めて頂けますか?」

こんなにも早く、新太が到着するとは思っていなかったのであろう。剣を収めてバルコニーへ慎重に出て来た。新太の顔を見て、安心したようだ。


「アラタ殿、昨日の朝に手紙を出したというのに、もう到着されたとはどういう事だ?」


「その説明は、全部終わった後にして頂けますか?もう二人、ご紹介させて頂きたい者が居ります。此処へ呼び出しても構いませんか?」


王が《此処へか?》と不思議がるが、承諾した。それだけ、王女の事が心配なのであろう。


美月とクレマンが、突然空の途中から現れてバルコニーへ着地した。

二人は、王へ頭を下げて膝を折っている。


「この者達は?」

「はい、信頼のおける、私の仲間です。」


新太が紹介すると、王も納得した。空間から現れた事には触れていない。

4人が部屋へ入ると、妃が目を()らして座っている。


「妃のディアヌは知っているな。ディアヌ、この二人はアラタ殿の仲間だ。アラタ殿が信頼できるというのだから、間違いはないだろう。」


心配そうに二人を見つめる妃にそう言った。

「早速ですが、まず王女様の肖像画はございますか?探すにも、手掛かりが全くありませんので。」


そう言うと、王が部屋の壁に掛かっていたカーテンを開けた。

そこに壁より少し凹んでいて、その下は飾り棚になっている。


その場所に王と王妃、オリビア王女が並んだ肖像画が有った。オリビア王女は、17才になるという。


美月がそれを、写真に撮っている。

王も妃も、美月が何をしているのか分からない。


「もし王女が(さら)われたとして、陛下にその賊の心当たりがございますでしょうか?」


「いや、心当たりはないが・・・。いや、先日のセルレイへの侵攻の際に、その責任を宰相のバンサン・オードリーに取らせた。斬首に処したが、その家族も王城の役職から追放した。


恨みに思っているなら、その二人の息子しか考えられない。その二人の息子は、ユーゴとマクシムと言うが多分、領地に()るのだろう。領地まで取り上げるのには忍びないと、そこまでは行なわなかったからな。」


新太は、さらに聞いて行く。

「王女様が場内で何か、事故に会われたとかどこかに隠れておいでになるとか、そんな事も考えられませんか?」


「それは最初に考えた。ごく身近な者達に、場内をくまなく探したが見つからなかった。」


「そうですか。もう二つ、確認させて頂きます。誰かから、王女の身代金の請求が来た、という事も御座いませんね?」

「ああ、それは無い。」


「最後です。お聞きしにくい事ですが、王女様が城の中の誰かを愛してしまって、その男と自分の意志で逃げた、という可能性はどうでしょう?」


王は新太に対して、怒りを覚えたようだが自制したようだ。妃に聞いている。

妃は、その可能性は無いとは言えないが《二人で城からは出られるはずがない》と言っていた。


取り敢えず、聞きたい情報は聞いた。王としては、元宰相オードリーの息子たちの仕業ではないかと疑ってはいるが、その確たる証拠はない。と言って城の中にオードリー家の者がいない以上、大っぴらにオードリー家の内通者を城の中で、探すという訳にもいかない。事が公になってしまう。


王女が居なくなったのは、一昨日の昼過ぎから夕方にかけてだ。昼食は、家族で摂っている。もし城の外に出ているなら、今頃は馬車の中だろう。


命が有るのならの話だが。

新太は、一番手っ取り早い方法を取る事にした。シャトルによるサーチだ。


王と妃に礼を執り、部屋を後にした。シャトルへ戻ると、城内をサーチしていく。


王女と、同じ姿かたちをした女性は居なかった。居るとしたら、城の外という事になる。


次には、街道をすべてサーチしていった。一番可能性の高いのは、オードリー家へ繋がる街道だ。王城とオードリー家を結ぶ街道は、3本あった。


それでも追手を欺くために、遠回りしているかも知れない。

全ての街道を、根気強く調べて行った。すると案の定、オードリー家への一番の遠回りである街道に、王女を乗せた馬車が走っていた。


凌辱

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