8 盗賊-2
討伐
商業ギルド以外の、ギルドへ行くのは初めてだ。
受付へ行くと、係の女性が対応してくれる。
「今日はご依頼ですか?」
新太の着ている服を見て、そう判断したらしい。
「ええ、依頼と言うか、人を探しています。クレマンさんとは、直ぐに連絡が取れますか?」
「そうですね、クレマンさんは人気が高いのです。今日も、他のご依頼で出かけていますから、連絡が取れるのは明後日になりそうです。」
「そうですか。それは残念です。それでは先日、クレマンさんが請け負ったという村の護衛の件で、お聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
新太が聞くと、その受付嬢が笑顔で答えた。
「それはどんな事なのでしょう?私で分かる事でしたら。」
「その後、あの村の盗賊の被害と同様な被害は、有るのでしょうか?もしあれば、その護衛の要請は来ているのでしょうか?」
受付嬢は、少し怪訝な顔をした。
仕事の依頼だと判断したのに、仕事を請け負いたいと言っているようだ。
「あの、先ほどお話したクレマンさんが、まさにその仕事を請け負っておられます。先日の活躍を聞いて、他の村からもご依頼が来ています。ですから、改めてあなた様にその仕事の要請は出来ません。」
受付嬢は、丁寧に仕事の請負を断っている。
「あの、いえ、そうではないんです。その仕事を請け負いたいと言っている訳ではありません。ただ、その村が何処にあるか、お聞きしたいだけです。」
新太はその村が分かれば、クレマンに会いに行くつもりでいた。あの盗賊が、其処へ現れれば丁度いい。
受付嬢がクレマンとロングバンテ家との関係を知っていた。その上で、新太がロングバンテ家の関係者だと知ると、クレマンの居場所を教えてくれた。
新太は夜になるのを待って、その村へ出かける決意をしている。盗賊は、昼間には襲ってこないだろうという憶測である。
夜になって村へ出向くと、其処にはクレマン初め5人の護衛が守っていた。
最初、新太は見知らぬ護衛に盗賊の一味と間違えられたが、クレマンが取りなしてくれた。
「アラタさん、どうして此処へ。」
クレマンが不思議がるのも無理はない。
「ええ、私も何かお手伝いが出来なかと、来てしまいました。それにその盗賊の姿も、不思議な力も確認したかったので。」
クレマンには、あくまで魔法の力だと思わせておきたい。
今日は護衛の初日だったらしい。すぐに攻めて来るとは限らない。それはそれで仕方がないと思っていたところ、その襲撃は来た。
前回の襲撃と同様のようだ。各人が馬に乗り、松明を翳して奇声を上げている。
村人は恐れおののき、家の中で鍵を掛けて震えている。
賊の隊列は、村の入口にある門の前で馬を降りた。門の両側へ伸びた、馬倒しの罠に気付いたようだ。
「こんなもんで、俺たちを倒そうなんて笑っちまうぜ。」
その罠のロープを切りながら、賊の一人が言った。すると、頭領らしい男が、厳しい声で諫めている。
「侮るな。前回はギルドからの護衛にやられたんだ。慎重に行け。」
それを聞いて、賊の大半は剣を抜き、槍を持って進んできた。ある者たちは弓矢を手にして近くの木の上や、屋根の上へと登って行く。
前回の反省もあったのだろう、人数も15人に増えている。護衛一人に、三人の相手は荷が重い。
賊たちは、入り口近くの広場に集結している。最初に襲う家屋を吟味しているようだ。
飛び出そうとした護衛達を、新太は制していた。賊は3方へ散らばりながら、その狙った家屋を襲おうとしている。
其処へ新太が一人で飛び出した。
「な、なんだ、てめえは。」
賊の一人が、驚いたように言った。
「あなた達こそなんですか。まあ、泥棒には、違いないようですが。」
落ち着いた声だ。新太一人では太刀打ちできないだろう、と考えた護衛の一人が飛び出そうとした。それをまた、クレマンが制した。
その時になれば、新太が合図をくれるだろうと踏んでの事だ。新太の力は知っている。
「この村の村長という訳ではなさそうだな。若いし、役人か?引っ込んでいた方が、身の為だぞ。」
頭領らしい男が前に進んできて言った。
「このまま、引き返して頂けませんか?余計な殺生はしたくありませんから。」
男が大声で笑った。
「馬鹿か、この小僧は。まあいいや、最初に血祭りにしてやる。」
そういうと、大剣を頭上でぐるぐる回しながら攻撃して来た。新太は、その場で立ち止まったまま、右手を前に出して五本の指を握った状態から開いた。
すると一瞬で、その男を含めて10人の男が後方へと吹っ飛んだ。一番前に居た頭領と思われた男は、勢いで後方の男たちの頭上を越えて行った。
それぞれに、肩や頭、胸や足などから血を流している。
それを見ていたのか、木の上や屋根の上から放たれた矢が、新太めがけて飛んできた。
矢は新太の体に当たったかに見えたが、全て地面へ落下している。
矢を放った者達はそれを見て驚いていたが、それより驚いたのは新太の方だった。
うしろの仲間の頭上を飛び越えて、飛んでいった頭領に何も怪我がない。
新太の攻撃に驚いてはいたが、大剣を振りかざして猛突進して来た。
あの男が、シールドを纏っているのだ、そう確信した新太はもう一度レーザーを、人差し指の先から放ってみた。
またしても、男は後方へ吹き飛ばされたが新太同様に怪我の様子がない。
新太を恐れたのは他の盗賊たちだけで、その男は不敵に笑っている。
「何をしたか知らねえが、俺にはそんなもん効かねえぜ。」
新太が合図をすると、恐れている賊たちへクレマンの仲間が立ち向かっていった。
その喧噪の中、新太と賊の頭領は1対1で対峙した。新太も、背負っていた刀を抜いて構えた。
「なんだ、その剣は、そんな細い剣では俺の剣には太刀打ちできないぞ。」
新太の日本刀の幅は、賊の剣の半分しかない。
その大剣が、新太を襲う。新太は狙いすまして、その剣を払った。すると、その大剣は、柄の少し上でスパッと切られて剣先が無くなってしまった。
すかさず、新太は男に切りつける。レーザーを纏った刀は、男の肩口へヒットした。
男は、どっと地面へ倒れた。驚いた顔をしている。
「な、なんだ。今まで、こんなことは無かったのに。」
そう言って、肩辺りを手で押さえている。血は出ていない。今までは剣や槍、矢に突かれたり切られても、痛みも感じなかったし、衝撃もなかったようだ。
それが新太の刀が当たった時には、体に衝撃が来たし痛みも感じたらしい。
レーザーでの攻撃も初めて受けて、体が飛んだのも初めてだったに違いない。
新太は、強く攻撃すると体そのものを粉々にしてしまう可能性も考えて、少ない力で攻撃をしていた。それでも常人だったら、命は奪われている。
地面へ座り込んでしまった、賊の頭領に新太が言った。
「観念してください。命までは取りません。その代わり、少し聞きたいことが有ります。」
その頃には、他の賊たちも怪我をしたり捉われたりしていて、戦意は失っていた。クレマンたち護衛は、賊の大半を縛り上げ納屋へ監禁している。
新太は村長に依頼して、頭領の男と二人で話す為に、空いていた小屋を借り受けた。
「聞きたいというのは、そのシールドの事です。」
新太が言っても、男はきょとんとしている。
「シールドってなんだ?」
装備の名称は知らないようだ。
「あなたに剣を刺しても、その命を奪えない鎧のようなものです。」
そう言うと、男は納得したようだ。左手の中指に嵌められた指輪をいじっている。
「それは言えねえな。俺の命綱だ。」
頻りに触っている指輪に、その秘密が有りそうだ。新太の、ブレスレットにも匹敵する。
「その指輪は、何処で手に入れたのですか?」
男はびくっとした。
「いや、これは何でもねえ。ただの指輪だ。おめえさんの言う鎧じゃねえ。」
男が落ち着かなくなってきた。シールド装置に違いない。
「そうですか?ならば、指を切り落としてでも確かめてみます。」
新太が言うと
「切り落とせるものなら、やってみな。」
ふてぶてしくそう言う。
新太はクレマンから短剣を借りて来て、男の指へあてがった。
始めは、力を入れても指は切れそうもなかったが、短剣にビームの力が溜まり始めると、男のシールドに亀裂が入ったようだ。
指の根元から血が滲んできた。
男は、慌て始めた。
「わっ、分かった。これだよ。この指輪だよ。」
男が白状した。
「この指輪は、何処で手に入れたのですか?」
「いや、それがよく分からねえんだ。道端に落っこちていたのを見つけて、気に入ったので嵌めてたんだが。その時から、不死身になっちまった。それに、高く跳ぶことも出来てしまうし、俺にとっては天からの授かりもんだ。」
男は、それに気が付き盗賊をはじめたと言う。
それ以上聞いても、男は何も知らないようだった。落ちていたものを拾って、それを悪用していた、それ以上でもそれ以下でもないようだ。
「あなた達は明日の朝、王都の兵に引き渡します。罪の償いはしてもらいますが、その指輪の事は話さないでいて欲しい。まあ、話しても信じて貰えないでしょうが。それにその指輪は私が預かります。」
男は、不服そうな顔をした。
「その代わり、本来ならば打ち首になるのでしょうが、命だけは助けてもらうよう取り計らいます。それで手を打ちませんか?」
男は気持ちが楽になったような顔をした。
「本当か?本当に首は切られずに済むんだな?」
「ええ、請け負います。私は王城の宰相とも親交がありますから。」
そう言うと、男は信用したようだ。指から指輪を外すと新太に手渡した。
もし逆らえば、強制的に奪われるだろうし、新太には、男が持っていない強い攻撃力も有る。それが分かったから、新太に従わざるを得なかったようだ。
その指輪を持って新太は再度、アローへ美月に会いに行った。
美月に渡し、その構造を調べてもらうためだ。構造の詳細は直ぐに分かった。
「これは、新太のブレスレットより簡単な仕組みでしたよ。思った通り、武器としての性能はなかった。」
肝心のだれが造ったか、は分かるのだろうか?
「どこで造られたかは、分からないわね。ただ、仕組みを見ると、5年前の母星の科学よりは進んでいると思う。レーザー装置を除いては。だから今のブレスレットのレーザーではこのシールドを壊せるけれど、前のレーザーでは壊せないわね。」
これと同じ物が、他にもこの星の何処かにあるのだろうか?ある可能性が大きいと思った。新太と同じブレスレットは、全部で4つあるのだから。
その後、その指輪と同じ指輪は発見されていない。誰かが使用していると思われる、不思議な話も聞かない。結局、指輪の製作者は不明のままだった。
続きは明日。 事件




