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7 紛争-3

拉致


北側には高い山脈が(そび)えた山々が連なり、堅固な城塞の役目を果たしていた。


其処から攻め入るのには、大変な労力が要るが不可能ではない。ただし、一個所しか侵攻できる地形は無かった。

その事は、セルレイの指揮官も充分承知しているだろう。


その場所は、クラウドリーバの北東に有った。ここしか、他の侵攻場所は考えられなかった。

そうはいっても、また何らかの方法で西側から進行してくる心配も捨てきれない。


セルレイ軍は、少ない兵をその二手(ふたて)に振り分ける必要が有る。そういった地勢的な戦略を、新太たちも読んでいた。その上で、どうする事が有効になるのか?


とは言っても、直接戦闘には参加できない。参加してしまえば、戦争は簡単に終結できる。それでも今度は、新太たちが畏怖されるし、そうしたくない。

なるべく陰で、手助けをしたいと思っていた。


新太は、アンバシドの誰が戦争を仕掛けようとしたのか、その決定権は誰が握っているのか、と言う点に着目した。

それは、国王に他ならないのではないか、と思う。


それでは、その国王の気持ちを変えられないか、どうしたら変えられるか、一度国王と話をしたいと思うようになっていた。


一国の王だ。それも敵国の。簡単に会えるはずはない。しかし、シャトルが有り、美月とルネも居る。何とかなりそうな感じがしてきた。


やはり情報は欠かせない。まずはシャトルで、王宮内の間取りを検索する事にした。

特に王の居室と、其処へ至る通路だ。護衛兵の居場所も重要になってくる。


王妃、居れば王子王女の居場所も知りたい。やりたくはないが、最後の手段として人質になるかもしれないからだ。


夜間、シャトルを王城の上へと移動させた。昼でも良かったのだけれど、就寝をしている時の方が部屋の位置が特定しやすい。


塔の一番上を探ってみた。ここには誰も居ない。戦国時代の日本でも、天守で就寝する当主は居なかったであろう。


続けてその下、その下へと王城の回りを周りながら、階を降りて行ってサーチしていく。その図を、シャトルは自動的に作成していった。


すると、此処に間違いないだろうと思われる居室が有った。

人が、就寝している影も見える。その居室には、二人の影が並んで就寝している。


王と王妃のようだ。

広い部屋で、他の人の気配はない。別の部屋にも、一つの影が見えた。

クローゼットと思われる空間を隔てた部屋だ。一人で寝ている。王女か王子に違いない。


それらの部屋の向かい側には、廊下を隔てて別の部屋が有り、数人ずつが待機している。

起きているようだ。寝ずの護衛かも知れない。


そして、その部屋からそう遠くに離れていない場所では、大部屋に大勢の人が屯していた。ここが親衛隊の部屋なのであろう。


その親衛隊の部屋を通らずに、寝ずの番の護衛に見つからずに王の部屋へ入るには、バルコニーから入るしかない。それは、可能だった。


シャトルでバルコニーへ近づき、バルコニーまで飛び降りればいい。あの別荘でジェルマンたちを助けた時より簡単に思える。

早速、新太たちはそれを実行に移す事にした。


実行はやはり夜にした。それでも、ステルスを使って王城まで飛行する。

バルコニーの近くでホバリングをすると、念のために室内をサーチする。

間違いなく、二つの影が並んで横たわっていた。


シャトルの扉を開けるとそのステップに立ち、軽々とバルコニーへと飛び降りた。続けて美月も飛び降りる。シャトルの操縦はルネに任せてある。


室内をそっと覗くと、まだ若い男とその妻らしい女性が大きなベッドで寝ていた。男は40代に見える。

王冠が傍の専用台へ恭しく飾ってあったことから、王に間違いはなさそうだ。


用意してあった、クロロホルムを湿させたハンカチを取り出す。

王と妃の鼻へ押し付けると、一時的に二人は驚いた顔をして目を開けた。


が、直ぐに薬が効いて来て、二人はその場でぐったりとなってしまった。騒がれたら面倒だ。


王を新太が、妃を美月が担ぎ上げてバルコニーへ出る。いまのところ、誰にも気付かれていない。

シャトルへ戻ると、すぐさま、アローへと向かう。


アローの中の一部屋を、王の部屋に似せてカモフラージュしてあった。

アローのその部屋へ着いて、二人に気付け薬を嗅がせると、二人は直ぐに目を開けた。


でも、今居る場所が何処かは分からない。

新太と美月もルネも、アンバシドの貴族の服を模して着用していた。


怪訝な顔をしながら、王が質問した。

「お前は誰だ、そして此処は何処だ。」


新太がすぐに答えないので、大きな声を上げた。妃はその横で王に縋り付いている。

「おーい、衛兵、何処にいる。直ぐ来い。」


返事をするものは居ない。

新太は(うやうや)しくお辞儀をすると、王に対して礼を示した。美月とルネも、それに同調している。ただ、ルネは腰に短剣を装備していた。


「アンバシド国王。失礼を承知で陛下を我が家へとお連れしました。訳は、おいおいと分かって戴けると存じます。私はユウキ・アラタと申します。セルレイ国の商社の者です。


此処に控えておりますのは、私の仲間です。まずは落ち着かれて、茶でも召しあがって頂きたく存じます。ご心配はいりません。毒などは入っておりませんし、陛下と妃の安全は補償いたします。」


美月は急須からそれぞれに紅茶を注ぐと、最初にそれを飲んで見せた。

王と王妃は、ベッドへ腰かけ出された紅茶とその受け皿を受け取った。

王と呼ばれる男だ。肝は座っている。


「お話と言うのは、今、行われているセルレイ国との戦争の事です。」

新太が話し始めると、王は驚いた顔をした。


「戦争と言うのは、どういうことだ?」

新太が驚く番だった。


「陛下は、いま両国が戦争状態であることをご存じないのですか?」

王は、全く戦争の事は知らないようだった。王妃も同様だ。


新太は、セルレイ国クラウドリーバの戦いの様子を詳細に伝えた。

また遺憾ながら、国境付近の迎賓館だった建物は砦化していたので破壊した、と伝えたのだった。


それらは、アンバシドからの侵略が原因であるとも説明した。

双方の死傷者は1万を超えると説明すると、妃の体は震えだし、王の顔も真剣になった。新太の詳細な説明に、信じるに足ると思ったようだ。


「わ、我はそんな侵攻を命令していないぞ。」

その二人の様子から、王の言葉に嘘は無い、と新太も確信した。


「では誰が命じれば、戦争が始められるのですか?私はこれ以上の犠牲者を出したくありませんし、戦争を止めたいのです。それには陛下のご助力が必要なのです。」


新太は、熱心に王を説得した。王としても、戦争は元々するつもりもなかったようだし、寝耳に水の話であったようだ。


「誰がとは、はっきりとは分からぬ。が、我はセルレイと戦争をするつもりは全く無い。戦争は本当の事であろうが、王の名において真相を突き止める。


ここから直ぐに、城へ帰してくれぬか。ここが何処か知らぬ、貴君が誰かも知らぬ、詮索はしない。貴君は若いが信用は置けるようだ。


貴君も我を信じて待っていてくれないか?もし、戦争が終わらなかったら、またこうして我を(さら)いに来て殺せば良い。」


その言葉にも嘘は無いようだった。新太は、王と妃を王城へ帰すことに決めた。ただ、帰す方法を知られてはまずい。


「それでは間違いなく、あの陛下の部屋へお帰しいたします。ただ此処へおいで頂いた時と同様に、その方法を知られては少々面倒です。申し訳ありませんが、少しの間、又お休み頂く事になります。」


そう言って、また二人にクロロホルムを嗅がせていった。

そのアンバシド国王が城へ帰された頃、2万のアンバシド軍は国境の北側の山脈を、累々と列を連ねて登っていた。


それをまだ察知できないでいたセルレイ軍は、西の国境の守りを固めている。その兵は前回と同様に2万。

新太の進言は、取り入れて貰えなかったようだ。


北の守りについては、その可能性も有るという事で、5千の兵が監視と守りの両方を担っていた。


その監視軍の斥候(せっこう)が、北の山岳を降りて来るアンバシド軍を発見した。襲ってくる可能性は有ったが、まさか本当に来るとは思っていなかったのだろう。


慌てた斥候は、その正確な数を確認することなく指揮官に報告した。

指揮官も、山岳地帯を進行してくる兵であれば、精鋭であっても数は少ないと踏んだ。


直ぐに態勢を整えて、麓へ向かう。

ところが麓へ着いた時には、もう敵の布陣は終わっていた。


指揮官は、その数に驚いた。直ぐに、西の守りを固めていた本隊へ援軍を請うと共に、戦闘態勢に入った。、小雨が、降り始めている。


続きは明日。 王の決断

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