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7 紛争-2

破壊工作


その時だった。最前列を進行していた集団が、足をすくわれどっと前へ倒れて行つた。落とし穴が掘られていたのだ。


アンバシド軍の前面に、長さが100メートル幅は20メートルにわたり、深さ2メートルの落とし穴が有った。そこへ後ろから来た兵士が、次から次へと落ちて行く。


それを見たセルレイ軍指揮者が、馬上から合図を出した。

全面中央に陣取っていた兵士4000人は我先へと、その落とし穴へ辿り着く。


そして、無抵抗の敵兵の頭の上から長槍を突き刺したり、矢を()ったりしていった。

中の兵たちは、たまらずに断末魔を上げながら血を流していくしかない。


すると後方に控えていた敵兵が、その落とし穴に近づいた兵士目掛けて、矢を放った。

防御の盾がない兵士たちは、次々とその餌食になっていく。


こうして、落とし穴の付近は、地獄絵図のような様相を呈していた。

それでもアンバシド軍の指揮官は、諦めていなかった。


次の隊列に落とし穴を避けて、セルレイ軍へ突っ込ませた。1万の兵士だ。今度は、走っている。

盾と槍を持ちながら勢いよく迫ってくる。


対してセルレイ軍は、全面2隊にその迎撃を命じた。併せて8千の兵士たちだ。

両軍が激突すると、乱戦になった。


組織的な攻撃ではない。殆ど1対1の攻防になっている。双方とも残りの兵を出撃させることは出来ない。どういう展開になるか、分からないからだ。


しばらくすると、乱闘の中からセルレイ軍が押し気味に戦い始めているのが見えて来た。敵軍は後退し始め、敵指揮官の近くでも戦闘が始まった。


それに押されて、じりじりと3列目の隊列も下がり始め、隊列も崩れて来た。

ここぞとばかり、セルレイ軍は残りの全軍を進行させた。


(とき)の声を上げさせ、太鼓を乱打し果敢に敵軍へと攻撃を始める。数の上では勝っていたアンバシド軍も、地の利には敵わなかったようだ。一斉に崩れ始めた。


指揮官は馬で逃走し、兵士たちもちりぢりに逃げていく。セルレイ軍は深追いをせずに、その場で勝鬨を上げたのだった。だが、セルレイ軍にも損害が出ている。


兵士の約半数が死亡したり負傷したりをしている。

クラウドリーバの草原は、兵の遺体の山と血の海に化していた。


それに、戦いは始まったばかりだ。

アンバシドには、まだまだ大勢の兵が控えているし、領土を広げ穀倉地帯を奪うという野望は捨てていない。


その両軍がクラウドリーバで戦いを繰り広げていた頃、新太とルネは軌道上のアローに居た。


美月の研究が実って、あのブラックボックスのエネルギーの源を解明したようだ。

これで母星のカザムに、エネルギーの心配はなくなったと言っている。


アローには勿論、シャトルにもブレスレットにも、そのエネルギーによる改良が加えられていた。


新太ら3人は、それを装着してアンバシドとセルレイの国境へ向かっていった。其処には、あの迎賓館が有る。


今は兵舎と兵器庫として使われているようだが、セルレイへ出兵した後にも、ぞくぞくと兵や武器が集められている。


まず3人は、歩いてその迎賓館へ向かった。新太が迎賓館を受け渡した時と、だいぶ変化していた。建物は改造強化され、まさに要塞と化している。


周りの警備も厳重になっていて、中へ入る事も近くへ寄る事も禁止されていた。そんな時に、出兵した第一陣があろうことか敗北した、という知らせが伝わってきた。


シャトルへ戻り様子を(うかが)っていると、急遽第二陣の招集が行われ始めた。武器も、それに合わせて大量に運びこまれている。


「ここを何とかしないと、またセルレイへ何度も攻め込まれる。それに、王室からは此処を建てたロングバンテ家に、戦争の補償をさせるような事を言っていたんだ。」


新太は、美月とルネに説明するように言った。

この迎賓館だった兵舎を爆破してしまえば、その補償の問題は消えるかもしれない。


それでもそれが、ロングバンテ家の力で行ったことを証明できなければ、また難癖をつけられる心配も有る。そんな事を美月と話し合った。


結論としては、やはりこの兵舎兼武器庫は破壊してしまおう、という事に落ち着いた。


ただ、出来る限り人的被害は少なくしたい。いくら敵兵だとしても、それぞれの兵たちには、親も居れば子供もいる。悲惨な結果に終わらせたくない。


それが新太の願いだった。

それで、決行は兵の数が少ない時にしようと決めた。集められた武器の数は、多い方がいい。そんな都合のいい時が来るのだろうか?


第一陣の遠征隊が破れた、という報が入った1週間後だった。(あわただ)しく招集された第二陣が、出発の準備を整え終わったようだ。


建物の中には入り切れない兵士が、街中のあちらこちらで分宿を始めている。

中には、テントの中で過ごす者も出て来ていた。出兵もまもなくだろう。


新太たちは根気よく、出兵の時を待った。

ついにその日が来た。武器庫からは次々と剣や槍、弓矢や盾が運び出された。


隊列の準備が出来た隊から、出発を始めている。

その数は、新太たちには数え切れない。最後の隊列が出発し終わった時には、それから2日は経っていた。


武器庫は、ガラガラに違いないが仕方がない。隊列の先頭は、目的地までの半分は行進しているだろう。それであと1日待つ事にした。


最後の隊が、ここを離れた少し後の方がいい。兵舎が壊されたとの報告を受けて、隊列を戻すか進行するか、と迷わせた方がいいと判断した。


それが幸運した。最後の隊列が出発したと同時に、次の武器が運び込まれてきた。丸1日で、武器庫の半分は埋まったように見える。それでも、兵は集まって来ない。


中に居るのは、少数の上官や事務官の(たぐい)であろうと思われた。

その時が来た。シャトルはステルス機能を使い、透明になって兵舎の上空へと進んだ。


決行は夜間。人通りがなくなった事を確認し、新太が魚雷の発射ボタンを押した。赤い(たま)の魚雷が、兵舎へと打ち込まれる。


魚雷は兵舎の一番下側へ吸い込まれたと思ったら、その付近から大音響とともに大爆発を起こした。


少数とは言え、中に居た人にとってはひとたまりもないだろう。砦にもなり得る兵舎の壁や床は粉々に飛び散り、その破片が周りの建物に当たって砕ける。


瞬間で、付近は瓦礫(がれき)の山となった。砂塵(さじん)が渦を巻いている。

幸いにも爆発が凄まじく、爆風も起こった為に火災は無い。


近くに分散していた兵士だろう、慌てた様子で確認に来ると、驚きを隠す事無く、直ぐに報告に走ったようだ。


この報が、この国の王や軍の司令官に届くのは何時になるのだろうか?

そしてその後では、どんな行動に出るのだろうか?報復なのかもしれない。


新太たちは、その確認もしなければならない。この責任は、取らなくてはならないからだ。


新太は、ネックレスの通話機能を使ってリリアに連絡を入れた。

「リリア、元気か?ごめんな、黙って出かけて。リリアには関わって欲しくなかったからなんだ。」


「うん、分かってる。戦争になってしまったんだものね。」

リリアが気丈に答えた。


「それで、ジェルマンさんに伝えて欲しい事が有る。迎賓館は壊した。今後、砦としても兵舎や武器庫としても使えない。


もしこの先、戦争が続くようなら、アンバシド軍の侵攻は、この国境以外の所で起きる可能性が有る、そう伝えて。


それに、此処から後続隊はもう派遣できないと思うから、もし、第二陣と戦闘になっても援軍は多く無い、と思って貰ってもいい。僕がそう言っていたと伝えて欲しい。」


「うん、分かった。伝える。でも、こう直ぐにそう言う報告が伝えられるって、向こうは思っても居ないのでしょうね。」


リリアはもう、情報は力になるという事を分かっているようだ。

それから新太の耳にも、アンバシド軍第二陣の状況が伝わってきた。


国境の砦が爆破された事実は、戦闘が始まった後で知らされたようだ。それだけ、情報の伝達速度は遅い。


双方とも死力を尽くして戦っていたが、一進一退の状況だったようだ。

そこへ、援軍や物資の補給は困難になったと知らせが入ったのだ。大軍を率いて、長期戦を覚悟していたアンバシド軍は慌てた。


予定にない短期決戦を強いられて、軍が乱れた。

その隙を突いて、セルレイ軍がまたもや大勝したようだった。


シャトルはまだ、国境付近に居る。

大敗してバラバラになって帰還して来た兵たちは、立派な砦になりうると思っていた兵舎が、見るも無残な姿になっている。拠りどころを失った兵たちが、落胆している様子が手に取るように分かった。


その上で、新太たちはセルレイとアンバシドの国境線の地図を正確に作成していった。

国境は、この西側から北の方角へ伸びて東へ向かっている。


そして少し南側へ下がった所で切れている。南側は海洋になっていて、船でなければ侵攻できない。東側は他国だ、アンバシドとの友好国ではない。


と言っても、セルレイとも特に親密だという事もなかった。

すると、この西の端の国境以外から攻めるとすると、今度は北側からという事になる。

続きは明日。 拉致

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