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暁のエーヴァルⅠ〜その手は、狂騒を鎮めるために。〜  作者: かとくら(かず)
第二章 鷹宮編

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第二十九話 刃を抜く覚悟

第二十九話

ただ刀を抜いただけだと思っていた。

 殺傷性が高くなっただけで、俺は大したことないと鷹を括っていた。


 だけど、実際は違った。


 気づいた時にはもう、刃が喉元を迫っていた。


「――ッ?!」


 既の所で横に避けることができた。


 だが――


「……ガッ?!」


 首元に鈍い打撃を受け、一瞬意識を失った。

 刀に注意しすぎていたせいで、蹴りを入れてくるとは予想していなかった。


 そして、隊長は俺が気絶した瞬間を逃すほど甘くはなかった。


 俺の首めがけてその刃が振り下ろされる。

 首に到達するまでわずかコンマ数秒。


 絶体絶命の『死線』の間際、俺のなかの野生が吠えた――


「能力解放――『狂王の(バーサーカー)(・ロジック)』!!」



 ――――――――



 鬼塚の首めがけて刀を振り下ろした直後、俺の刃は寸前で鬼塚に受け止められた。


「!?……やっとお前も本気を出したか。これは、今の俺を認めてくれたってことでいいんだな?」


「あぁもちろん……隊長のおかげで死にかけたからなぁ!!」


 もちろん寸止めをするつもりだった。

 だが、一切の油断なく、首を両断する勢いで斬ったつもりだったが、鬼塚は切傷一つもなく俺の刀を受け止めた。


 なんだ、ただのバケモンか。


「こんなとこで負けたらもう隊長は名乗れないな」


 次の瞬間、俺はフラッと後ろに体重をかける。

 目の前を鬼塚の拳が通り過ぎた。


 攻撃が単調すぎるんだよ。


「能力発動――『抑界』」


 鬼塚の動きを抑え込む。

 だが鬼塚は、それを上回る速度で旋回し、俺の顔面めがけて突きを放った。


 鬼塚……お前の動きが手に取るようにわかるよ。

 その程度の攻撃、予測していないわけがない。


 後ろに倒れる前に、片足に力を込めてバネのように反発し、もう片方の足で回し蹴りを鬼塚の腹に決める。


 一度だけでなく二度も剣士に体術で押し負け、鬼塚は苦悶の顔を浮かべている。


「俺も大概化け物だと思ってるけどさ、隊長もなかなかだぜ?」


「それは、こいつのおかげだからな」


 実際そうだ。相棒がなければ、俺はコイツに身体能力で押し負けている。


 だけど、どうしてだろう。

 今も『天断』に生気を奪われ続けているはずなのに、なぜか体の内側から温かい力が湧き上がってくる。……疲労も痛みも、完全に消え失せていた。


 だが、今はそれが好機だ。


「ちょっと力をつけたからって調子に乗んなよ?お前は昔のままだ」


「……」


 これで決着をつける。

 成功確率は、試したことがない。

 けれど、抑界と組み合わせれば勝機はある。


 まだ誰にも見せたことがないけど……

 この技なら、鬼塚のあの硬さも破ることができる。


 俺は抜刀の構えに入る。


 呼吸を整え、今は相棒だけに集中する。


 今持つすべての技術と力を、この一撃に叩き込む。


「必刀奥義――」


 地を蹴り、鬼塚に詰め寄る。

 刀が、鬼塚に迫る。


「『斬天一――』」


「そこまでです」


 その時だった。

 空間ごと全てを断ち切るはずだった俺の一撃は、いつの間にか割り込んだ鷹宮の、奇妙な小刀によって完全に受け止められていた。


「……は?」


 そんな言葉しか出ない。

 鬼塚も、唖然としている。


「お、おい!鷹宮!それはねぇぞ!せっかく隊長との一騎打ちを邪魔しやがって!」


 一足先に我に返った鬼塚が抗議する。


「そんな状況ではなくなったのですよ」


 鷹宮は、俺の方に振り向き、言葉を告げた。


「いいですか?隊長、落ち着いてください。先ほど、美雨さんが倒れたらしいです」


 ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。美雨の顔が脳裏によぎり、真っ白に染まって完全に途絶えた。

 

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